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キャンプから帰る時にバスに乗る。

弓弦とクラスが違うから、違うバスになってしまうのは仕方ない。


「大丈夫?」


私の姿を見つけた真奈は心配そうに話しかけてきた。


「脱水だって……。」


「あぁ、そう言えば、水分とってないもんね。

私も危ないかも?」


真奈もそういえば、あまり飲み物は飲んでいない。


「バス乗る時に好きな飲み物持って行って。」


担任が飲み物の差し入れをしてくれた。


「気が利くね。」


真奈がボソッと言いながら、緑茶を一本もらっている。

私は紅茶を一本もらった。


「スポーツドリンクじゃなくていいんだ?」


「うん、さっき飲んだから。」


「同じのばかり飲むのも良くないか。」


「そうだね。」


さっき飲んだスポーツドリンクでお腹いっぱいだけど、また後で飲めばいいよね?


「あっ、沙希ちゃん。

調子どう?」


堺君が話しかけてきた。


「うん、平気。

水分足りてなかったよ。」


「まぁ、家みたいに飲み放題じゃないもんな。」


「だよね……。」


「弓弦は平気?」


「え?」


「怪我してるのに、沙希ちゃんを抱っこして連れてったから。」


「そうなんだ?」


そういえば、私は知らない内にベッドの上に居たんだっけ。

弓弦、大丈夫かな?


「あっ、普通に歩いているな。」


堺君が弓弦を見つけた。


「何か凄い眠いな。」


佐々木君が呟く。


「確かに眠い。」


私も眠かった。

うちの班の人は全員寝不足かもしれない。

バスが走り出すと、皆が眠ってしまった。


「沙希、起きて!」


「ん?」


「昼食だって!」


「あぁ……。」


どこだか分からないけど、眺めの良いドライブインに到着していた。


「昼食バイキングだって。

ワクワクするね!」


真奈が目を輝かせている。

その隣に居た堺君が、どうしようか悩んでいるような気がしたところで、


「僕が取るから欲しいの言って?」


園田君がサポートしようとしてくれた。


「おぉ、悪いな。

じゃあ、俺、カレーでいいや。」


堺君は申し訳なさそうにしているけど、園田君が楽しそうだ。


「私は唐揚げがいいや。」


私はそう言って、唐揚げを取っていると、


「沙希、ダイエットしないで、そんなスリムなの?」


真奈がそう言った。

私はダイエットをした事がない。

痩せているって言われるけど、自覚していない。


「いいな、唐揚げ食べたら、私は太りそう……。」


真奈がつまらなそうに言うと、


「少しくらい食べてもいいんじゃない?」


桜井君が言った。


「でも、私、油断すると太るよ?」


「学校行事くらいは自由でいいんじゃない?」


「うーん。」


「太ってても痩せてても、俺の気持ち変わらないけどね?」


「こんな所で、何を言い出すのよ!」


桜井君と真奈が話しているのを見てると、何か初々しくていいな。





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