外伝 11話 ぶっ飛び騎士物語 6

「では、母上。参りましょう。」


 アリシア、フェリシアはユウキたち一向、アルビナ、アイリスを連れて王城へと向かう事に。


「所々で火煙が発生しているけど、貴女たちまさかね。」


「不必要に襲撃はしておりません。」


「どっちがテロリストだか・・・。」


「アイリス様。『光明の旅立ち』は既に内部まで侵食し、その仲間たちが駐屯しております。

 少し手荒かもしれませんが、これが手っ取り早く、被害が少ない方法です。」


 フェリシアは不満のあるアイリスを説得する。


「そこまで腐っていたのか。」


「ええ。母上。予想以上にカナエや他のクズ共が動いておりましたよ。」


「そ、そんな・・・・」


 エリザベールは王族であるため、裏でそのような事態になっていた事への涙を流した。


「エリー・・・・」


 ユウキも自身が知らない内容に、何とも言えない表情をしていた。


「嘆いている暇は無い。

 お前たちの選択次第では、この国は変われる。」


 アリシアからそのような言葉が出てきた。

 誰も思いもしなかった。


「僕たちの・・・選択で。」


「それを選定しに行く。

 私たちを売り渡すもよしだ。

 勿論、抵抗がてらにこの国を壊すが、恨むなよ。」


 しれっと恐ろしい事を言った。


「王城は意外と近かったな。」


 聖王国国内の奥に位置する巨大な王城は皇后しい輝きを放っている。

 1番上には神である、女神アラヌスが置かれている。


「神は人を見下ろし、王もまた見下ろすか。」


「人が人を見下すなど、何とも下らないですね。」


「それが人というものだ。

 何とも脆く、儚く、矛盾し、しょうもない生き物だ。

 皆、主様に忠誠を誓えば良いものを。」


 アリシアは王城へと踏み入る。


「そ、そこで止まりなさい!」


「ここは王の」


「おやめなさい!

 この方たちをお通ししなさい。」


 エリザベールが前に出ていた。


「姫様!」


「一体いつのまに・・・あ!

 勇者の方々まで!じゃあ、この人たちも。」


「それは違います。」


「いや、でも。」


「違います。」


「あ、」


「違います。」


 アリシアと門番の謎のやり取りに一同は沈黙した。


「はい。どうぞ・・・・」


 何か色々と諦めた門番はエリザベールの命の元で通した。





 王の広間


 大きなドアが勢いよく開かれた。


「何事かね。」


「おやおや?」


 アリシアたちはズカズカと入ってきた。

 周りは会議をしていたのか、様々な人がそこにいた。


「お前は・・・・」


「生きている!」


「な、何故!」


「静かにせよ!・・・・アリシアよ。

 何をしに来たのだ?」


 王の威圧をもって接した。


「お久しぶりです。王よ。

 地獄から舞い戻ってきた次第です。

 と言っても、事情なんて何も知らないでしょうが。」


「貴様!王に何て口の聞き方を!」


「お黙りなさい!」


 王女が今度は黙らせた。


「エリー。貴方まで一体・・・勇者様まで。」


「これから、いえ、既にこの国で起きている事について、報告をしに参りました。」


 フェリシアはアリシアに近寄り、1つの文書を渡した。

 それ持ち、アリシアは王の側へ近付く。


 しかし、衛兵により通せんぼされたが、王の無言の制止によって通された。


「これを。」


「うむ。」


 王はその文書をまじまじと凝視した。


「!!・・・・・」


 驚きの表情をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、再びアリシアへ向き直る。


「これは世迷言・・・ではないな。

 既に証拠どころか、動いている者までいた。

 なるほど。お主も被害者か。」


「そんな事はどうでもいいです。

 この後、どうするかが重要です。

 文にもある通り、我が部隊が裏切り者を捉え、こちらへ連れて参る事でしょう。」


「して、今度は何を?」


「フェリシア。」


 指を鳴らし、フェリシアを近くへと誘う。

 フェリシアはまたしても1つの紙を差し出した。


「これを締結すれば、今後の保証と保護が約束される。

 勇者はこれから使い物にならなくなる。

 ならば、力の均衡が崩れるのも時間の問題だ。

 それに、その金流れから相当な損益を既に算出している筈だ。」


「だが、貴様たち一介のギルドには負担が・・・

 まさか!それを補えるというのか!?」


 アリシアは後ろを振り向いた。

 綺麗な装飾品やピアスが揺れる。

 そんな魅惑よりも王は焦りが勝る。


「だがっ!こ、これは!」


「当たり前だ。どのみちお前たちではもう無理だ。

 置物と化したお前たちが、今後できる術など無い。それに、この国の内情は知り尽くしている。

 元々、重鎮の立場にいた私だ。

 何も知らない訳でもあるまい。」


「お主は・・・・悪魔か。

 それとも征服者か。」


「違う。私は信徒であり、使徒だ。

 あの方の相応しい居場所を作るのに、必要なものをこれから整えていくだけだ。

 生贄ではないが、良かったな。

 これから更にこの国は発展をするぞ。」


 フェリシアとアルビナ以外ははてなマークが飛び交っていた。


「ゆ、ユウキ様。これは一体・・・・」


「わ、解らない。けど、あの表情から良くは無い会話だと思う。」


 王はユウキを見ると、すぐに視線をアリシアへと移した。


「アイツは宛にはならんぞ。

 今まで、カナエやユウキの言いなりになっていたお前に、何ができるというのだ?」


 カナエの謀略、ユウキのスキルの前に何もせず、ただ流れを見守る事しかできなかった王にはその資格が無かった。


「それでも、これからここの統治を任せると言うのだ。

 しかも、お得セット付きだ。

 傀儡とは言えど、今までより100倍もマシだ。

 自身の判断ができるのだから。」


「あ、貴方はどうするの?」


「わ、私、は・・・・解った。全て飲もう。

 だが、約束は守ってもらう。

 それと、この国の民の生命もな。」


 王は苦渋の決断の末、条約の締結を決断した。


 条約はほぼ隷属国家とする内容であった。

 しかし、国を守る意味ではこれ以上にないほど最適でもある。

 勇者が機能しない今、魔族や他国に狙われやすい。


 そして、金銭面では裏取りや不誠実なお金の流れの影響により、商売への信頼も失っている。

 だが、『ファミリア』が提携し、店を聖王国内で構える事により集客と信頼性を上げる。

 そして、『ファミリア』製の物資共有もできる。


 そして、軍の再編成はアリシアの思惑があるが、確実に強者を置ける事と、実績経験のある軍備強化を着手するため。

 損ばかりの内容では無い。


 しかし、王族の存在は認めるが、後の役職を全て解体する事になってしまった。

 理由は『ファミリア』で管理していくためだ。


 不平等というより、確実な隷属国家へと成り果てる。

 しかし、そうする以外に道がない。


 苦渋の決断でもあり、本来は会議を設ける予定であったが。


「(こんな話を一朝一夕にまとまる訳などない!)」


 王は更に萎れていく。


「貴方・・・・」


 王妃は支える。

 そして、アリシアへと向き直り。


「貴女に託して、本当によろしいので?」


「託すも何も、そうするしか道がない。

 たまたま、国を持たぬ我々だからこそ、内々で処理できたのだぞ?

 この話を他国に売った方が良かったか?

 そして、他国に弄ばれる国家にでもなるのか?」


 最早、どちらが悪役か解ったものではない。

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