第198話 緑の旋風

「うぉーーーー!」


 只今、台風から逃げております。


「まさか!超位魔法をこの狭い場所でっ!」


 シェリオも台風に巻き込まれないよう、踏ん張っている。


「っ!やはり、ドラゴンという存在は迷惑な奴らだよ。」


 ファウストも憎々しげに毒づいている。


「あ!グラディエたちが漫画のような感じに!」


 あーーーー。と叫びながら台風に巻き込まれている。

 あれは吐くぞ。体幹あっても無理だ。


「結構本気何だけど、硬すぎない?あの皮膚さぁ。」


「龍の中でも特質な存在です。」


「書類に埋もれていたとは想像もつかないな。」


『今の攻撃では誰も通らないどころか、全滅する可能性が高いです。』


 でしょうね。客観的に見れば解る。


「もう1段階上げる。」


「!!なりません!

 お聞きになりましたが、その技は今の御身には危険過ぎます!」


 シェリオはちゃんと情報を集めている。

 優秀過ぎて困るな。


『ですが、それが生き残る可能性が高いかと。』


 確率は?


『20%上がります。』


 0から20なら良いじゃないか。


「これしかないからな。

 ・・・悪いがじっとしてろ。」


 シェリオは少し驚き、そのまま立ち退いた。


 無理もない。普段の俺とは別の雰囲気を感じ取らせたからな。


「やるのかい?」


「仕方がないという言い方はダメだな。

 そうだな。仲間が苦しんでんだ。

 なら、俺にしかできない事をやるまでよ。」


 俺は迷う事なく、『気天極』を発動した。


『保って、10分程度です。』


 あれー?短くね?


『当たり前です。

 前回の戦いから完全に回復しておりません。』


 あちゃまー。こりゃ女子に怒られるな。


「けど、言ってらんないし!」


 目の前の台風へ突っ込んでいく。

 そして渦に入り、身体を逆回転させた。


「ドバババババババババッ!!」


 変な掛け声と共に、台風を見事打ち消した。


「ぬぅぅぅぅああああ〜〜」


 やる気の無い声と共にグラディエとカイトが落下した。


「無事か?」


「五体満っオロロロロ!」


 クッサ!こっち見るな!


「うっ。も、申し訳、あ、ありません。」


「分かったから。喋るなもう。」


 別の意味でやられてるし。

 怪我自体は然程目立たない。

 少し休ませるか。


「休んでろっ!」


 そう言い残し、俺はエラルドへと向かった。


「こいやっ!」


 早速、龍の羽からカマイタチが飛んでくる。


 俺は両腕を花頸で回転させ、腕をしなやかに鞭のようにして迎え撃つ。


「オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!」


 キンキンと鈍い音を鳴らし、横に全て受け流す。


『全て受け流しましたね。』


 打ち消しこそできないが、ノーダメージで流す事なら造作もない。


 今度は近接戦が始まる。


 エラルドの鋭い引っ掻き攻撃を避ける。

 尻尾が後ろからやってくるが、『守空圏』で視えている。


 空中でアクロバティックに避ける。


「い!」


 途端に上から龍の顔が見え、ブレス攻撃が放たれる。


「『波動砲』!」


 片手で咄嗟に溜めずに放った。


 両方のビームがぶつかるが、溜められない俺が圧倒的に押される。


「ぐっ!うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 そのままブレス攻撃を喰らい、下に落ちた。


 すぐさま、そこから移動した。

 気付けば、倒れていた位置に踏み付け攻撃が入っていた。


「容赦ねえ。」


『ですね。』


 近接攻撃も貫通系は下手に打てない。


『致死性を含む攻撃は尚更ですね。』


 それだ。

 しかし、殴打や砲撃は全くと言っていいほど効いてない。

 ビーム系は完全に負けている。


『溜技ですから。』


 速射系に課題ありだな。


「いっ!」


 今度は竜巻が複数襲ってきた。


 いちいち、逆回転しながら解除する暇もないため避ける方針にした。


「クソっ!一個一個に吸引される!」


 こちらをバラバラにしようと引き込んでくる。

 あの2人ほど頑丈ではないので、引きこまれたら最後だ。


「だが、竜巻を相殺するなら聖剣(被せ物)の出番だぜ!」


『不快な。』


 うるせ!言ってられるか!


 ジーニア特製の聖剣被せ物モードを使う事にした。


「行くぜ!大っ!旋風っ!」


 光の波動を聖剣から放った。

 竜巻に当てて相殺した。


「よしっ!」


『ちっ。良かったですね。』


 どんだけ嫌なんだよ。


「うおわっ!」


 聖剣で上から来る踏み付け攻撃を防いだ。

 被せ物のお陰か、少し一回り大きく何とか防げた。


『不快な上にピンチじゃないですか。』


 それなっ!


「全く、世話が焼ける。」


 エラルドの足付近でダークマターの攻撃が起こった。

 その隙に脱出した。


「助かった。ファウスト。」


「いいよ。これくらいは。

 むしろ、興味深かったよ。

 聖剣で龍に対しての立ち回りと。」


 ファウストが前線へとやってきた。


「他は?」


「現在、後ろで治療中だよ。

 見物するには時間も無いし、こちらもアレを何とかせねば未来がないからね。」


 エラルドは自我を失っている。

 その上で龍化、そしてこの強さだ。


 正に今、緑の始祖と言われる存在を目の当たりにしている。


「それに厄介なのが、あの緑の旋風だね。」


「そうだな。竜巻は無限に湧くし、吸引性高いしで厄介極まりない。」


 どうするか・・・・


『時間です。』


 んな唐突なっ!あ、ち、力が・・・・


「どうし、っ!まさかっ!」


「す、すまん。力が抜けてい・・く。」


 その瞬間、ファウストの視界が揺れた。


 尻尾攻撃に反応できず、後ろへ吹き飛ばされていた。


「ぐふっ!

 しまった・・・・な、私ときたら。」


「や、やべえな。」


 隣のシルクハットが落ちていく最中、自身の死を肌で感じている。


「キャスト様ぁぁぁぁぁ!」


 シェリオたちがこちらへ向かってくるが、竜巻が彼らを襲い、その道を阻む。


 万事休すか。


『どうやらそうでもないみたいです。』


 ん?


 俺の右腕に謎の蒼い籠手が嵌め込まれていた。


「うぉっ!って!」


 爪攻撃が上から振り下ろされるが、籠手が光だし、その攻撃を防いだ。


「こ、これは!水の盾?」


 果て、何故?

 んな事よりも退散っ!


 少し距離を離したところで、シールドは消えた。


「この籠手は一体・・・・」


『よう。いい闘いすんじゃねえか。』


 今度は聖剣とは別にオラついた声が聞こえた。


 いい闘いなのはありがとうだけど、何だお前?


『お前とは随分な物言いだな。』


 この武器自体が何なのか知らんし。


『この武器は聖剣と並ぶ武具、龍星です。』


 何で星やねん。


『龍が星のように煌めきを放ち、力を明け渡すらからです。』


 聖剣さんが語ってくれました。


『『滅びの聖剣』の言う通りだぜ。

 俺は蒼き龍の始祖であり、武具にその魂を宿した。』


『滅びかけていた所を最後の力を振り絞って武器に変えただけです。』


『へっ。言うな滅びの。

 ヘマして、神との戦いで死にかけてな。

 このまま死ぬのも癪だったから、それなら武器になって、野郎をぶっ殺したらいいんじゃねえかって考えた訳だ。』


 おいおい語るのは後にしてくれ!


「っと!ジュワッチ!」


 ウルト◯マン飛行でエラルドの攻撃を避けた。


「どう使えばいい!

 できるだけ仲間を傷つけたくねえ!」


『聖剣も扱えねえーんだ。無理すんな。

 代わりに、そこの奴から力を借りて発動する。

 お前はただ戦え。』


 シンプルで俺好みだ!分かりやすいぜ!


『では、気が少ししかないので、残りの魔力と気を全て譲渡します。』


「やってやんよ!」


 俺は右腕の蒼籠手を構えた。

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