第80話 どうやら本番らしい
本日で何回目かの食事を終えた。
回数も覚えていない。
膠着状態を敢えてしている気がしてならない。
『その通りかと。
向こうでは大きな準備をしているのかと。』
ほう。例えば?
『大儀式魔法や戦略型兵器の投入とかですかね。後は見ない事には何ともです。』
ま、妥当ですな。
そろそろお披露目してくるのかね。
こっちの龍人たちは見るからに疲弊してやがる。
酒場周辺の兵士も俺が初日に酒場デビューした時より空気が重い。
『疲弊で余裕が無いのでしょう。
『ファミリア』の皆様と考え方が違います。
むしろ、今までよく保たせています。』
自国を守るためとはいえ、援軍も無き篭城戦だ。
ただ消耗するだけの戦はかなり辛いものなのだろうと思った。
「敵本陣の情報は掴んだが、問題はどうやって向かうかだな。」
ミアと本格的に無茶な相談でもするか。
俺はここ数日本当に何もせずグータラしていた。
戦争の影響か、珍しくミアと2人きりになる時間も多かった。
護衛と称してアレコレしていました。
お陰で元気でました。
『鼻の下伸ばしてないで早く終わらせる方法を模索して下さい。』
分かっとるわ。
気も十分回復した。
前より最大値が上がりまくっているせいか、少し回復に手間取ってしまった。
『気量自体は向上しているかと。
ハイネ様の魔力を無理矢理変換したためか、身体の限界を超え、最大値が上がっています。』
やっぱ無理はするもんだな。底力が付くな。
ただ、回復には手間取った。
スッカラカンにするケースが多いせいか。
ともあれ、王城に戻り本格的に終わらせる作戦を仕立て上げるか。
「旦那様!急報です!
敵に動きがありました!」
酒場のドアを蹴り破り入って来たミアさん。
普通に開けちゃりよ。
まあ、それぐらいやばい事が起きたのか。
王城
「この度、発見した情報がある。」
ブラスの偵察から情報が開示される事に。
「敵には大型ゴーレムがいる事がわかった。
数は10体ほどだ。」
「ただの大型ゴーレムなら私たちで何とかなるのでは?」
シアの疑問はもっともだ。
俺はともかく。他のメンツなら大した事なさそうだ。
「いや。あれは強化個体で全長が80mは少なくともあったな。」
「は?」
つい声に出てしまった。
何その大怪獣決戦は?
奴らこれを待っていたのか。確かに動きは遅そうだ。
移動時間を稼いでやがったのか。
「それと最悪な情報をセットにすると、魔王級のメンバーが更に補充されていた。」
「何と面倒な話よの。」
「お母様でも厳しいですか?」
「当たり前じゃ。
1人でも厄介な相手だというのにの。」
「星クズの言う通り。
個々の戦力が強くとも、集団戦にあのゴーレムと魔王級は圧倒的に不利です。
しかし、手が無いことはありません。
そこのダークエルフは気付いていますが。」
クロエの言葉に反応したのがミアだ。
「そうだ。
これから奇襲作戦を実行する予定だ。」
「おい呪物。なぜ今までやらなかった?」
「簡単だ。本陣を割り出したからと言って、すぐに襲われる事ぐらい向こうが知らんとでも?
向こうが、こちらが抑えた2匹の悪魔を把握してないとでも?」
ま、何にせよだ。
「下手に本陣を変えすぎると軍の指揮系統や士気に関わるし、いいんじゃね。」
「その通りです。旦那様。」
「お館様。そこで回復されたあなた様のお力もお借りした上、作戦を実行に移したいのですが、よろしいでしょうか?」
「なっ!貴様!主様を!」
「シア。いいんだ。
むしろ、よくここまで頑張ってくれたよ。
身体も全快だ。本当にありがとう。
だから、今度は俺が行動で示す番だ。」
「主様・・・立派になられました。」
泣かないで〜。
なんか恥ずかしくなってくるからね。
「フフフ。流石はご主人様です。」
ハイネに笑われるとは何てことだ。
「な、何が何てことだ!」
ぷんぷん丸さんを他所にしてと。
ゲッ!他の面々も泣いてやがるし。
俺そんなにダメな子だったのか・・こっちが泣きたくなる。
『別にそうでは無いかと。』
「お館様。改めて感謝を申し上げます。
非力な我々をどうか導いてくださればかと。」
クロエさんが跪いている。
逆に非力なの俺なんだがし。
「それよりも肝心の作戦はどうするよ。」
「旦那様。それはクロエと共に練った作戦が1つあります。」
「おい。それはキャスト様へ無茶がかからない作戦なんだろうな。」
ヘルガーが突っかかる。
「当たり前だ。
逆にお前らを死んでもいいぐらいの配置にしてやった。」
「それならそれでいい。」
んーとね、良くないよ?何終わらせてんの?
「キャスト様が無事ならこの身は如何なる犠牲も厭わない。
例え同胞が相手でも容赦なく消し炭にしよう。」
「ロキリアの言う通りだ。
主様のためなら構わん。」
俺は何も言えん。戦争だ。
今までのクエストや探索とか、小競り合いのレベルを超えている。
既に沢山の犠牲を出している。
綺麗事を吐いてこの場を治めようもんなら、俺は俺を嫌いになる。
『それが正解です。
苦し紛れでしょうが本当に犠牲を少なくしたいなら、この奇襲作戦を必ず成功させるのが吉かと。』
内容はまだ明かされてはいないが、その通りだな。
「して、その作戦内容は?」
ブラスの疑問からクロエによる説明が始まる。
「作戦は本陣への奇襲だ。
まず、ここの守りを完全に無くす。」
「な、何じゃと!キサマ!
我が国を滅ぼすと言うか!」
「お母様!落ち着いて下さい!」
アルマ様が怒りを露わにする。
「アホか。説明をしっかり聞け。
この何百年間の間に耳まで悪くなったのか。」
「・・・・」
「続きをお願い致します。」
「兵士と姫様・アルマ様は、後方の国まで避難をしてもらいます。
要するに国という建物を使った囮作戦を仕掛けます。」
ミアが代わり説明を続ける。
大規模作戦だな。反感を買わないか?
『0ではありません。
ですが、龍国兵は士気の低下と気力すら残っていません。』
そういう事ね。説得する必要も無いか。
「かしこまりました。そこは理解しました。
しかし、その囮は上手くいくでしょうか?」
「そこで、今回囮の部分の鍵になるのが、ウチのハイネとグレースです。
グレースは元々幻影魔法を使えます。
ハイネも同じくです。
共通しているのは魔力が多く、濃いこと。
つまり、より現実を帯びた幻覚を見せれるという事です。
しかし、この作戦は引き寄せる所だけではなく、メイ様による結界の構築で閉じ込める事です。」
メイがフンスと胸張っている。
もう一度言おう。胸を張っている。
え?何?もう一度・・
『黙った方が良いかと。
それと、同じ事を繰り返さないで下さい。』
今度はクロエに説明が代わった。
「そして、お館様率いるメンバーをアリシア、ミレルミア、ヘルガー、ブラス、ロキリア、アリデーテ、ルシファルと私ことクロエで参ります。」
多くはないな。
ただ、他の黒龍たち含めてどうすんだろう?
余談だが、アリデーテさん久々に登場した気がする。
姫様の護衛だが、いつも前線に突っ込んでいたらしいからな。
生きていて良かったよ。
「こちらは力押しの一点突破となっております。
下手に増やすより、元々強いメンバーの方が作戦成功率は格段に上がるので。
かと言って後方を手薄にはしません。
私の黒龍隊をアマギへ指揮権を渡し、護衛と囮で閉じ込めた敵に攻撃を仕掛けてもらいます。」
「おい。私たち勇者組はどうすんだ?
魔族相手ならまだ戦えるぞ。」
「はっ。笑わせるな。未熟者共めが。
たかだか1、2年ポッキリの若造が役に立つとでも?」
マナミが一瞬イラつく姿勢を見せる。
しかし、横にいたマイに止められる。
「クロエさんの言う通りよ。
平和な世界から来たばかりの私たちが、戦いに特化した人たちほど強くはない。
このスキルがあっても使いこなせなくては宝の持ち腐れよ。」
「た、確かに。それなら後方の安全が・・すいませんでした。」
バーナードのバカが素直に発言したから、マナミさんがメンチ切ってますがな。
「しかし、マナミ。私たちはあなたを失う訳にはいかないの。
分かってほしい。」
スィーナ姫の援護により、マナミは落ち着いたようだ。
そして俺を見てきた。
「あなたは行くの?」
「もちろん。」
「・・・・・そうか。無理は・・」
「ありがとう。」
マナミの顔が照れてるのが分かる。
顔が真っ赤だからだ。
「んん!続きを言うぞ。
勇者たちは後方で避難を支持しろ。ここの民衆もそれで落ち着くだろう。
そして、お館様チームは各個人は強いが、目的以外の余計な接触や戦闘は避けていきます。」
「理解した。」
「了解。」
「分かった。」
さまざまな返事が返ってくる。
各々の覚悟を決めているようだ。
「勝ったら家に帰って焼肉パーティーまでが作戦の内かな。」
「旦那様・・・・そうですね。」
「ハハハハ。主人様にそう言われると、余計に張り切ってしまいますな。」
「このヘルガー。必ずやあなた様と共に生還して見せましょう。」
「僕も肉は好きだよ。味には五月蝿いけどね。」
「キャスト様とお食事は楽しみです。」
「ご、ご主人様!た、食べ放題ですよね!?」
「ダーリンたちと初めてのパーティーなのね。
なら、そのためにも頑張らないとね。」
「私も気合が入りますね。
この作戦を成功させ、お館様に黒龍隊の価値を上げましょう。」
「主様。皆、やる気に満ち溢れております。
そして、待たせている仲間たちにも会うために必ず生きて帰りましょう。」
皆の気合が入ったようだ。
俺も気を引き締めるか。
内戦や戦争を含め、俺も大分強くなっている。
全員無事に帰せるように全力で行くぞ。
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