第16話 魔厄の森 3 誓い おまけ技名(厨二)

 ミレルミアと無事に合流し、今回の成果をお互いに発表し合っていた。


「今回の成果発表〜どんどんぱふぱふ〜。」


「・・・・・」


「わ、わーーい?」


「パチパチパチパチ」


 エラルドはスルーだし、ミレルミアは無理してるし、アリシアは慈愛の目で拍手してくれてるし。


「んん!では、今回の訓練結果だが。

 まずは、複数戦闘の経験だな。

 これは個人的には、割とこなせた方だと思う。

 多分相手が弱いのもある。

 それと、気による領域みたいな技ができた。」


「それはどのような技なのでしょうか?」


「はい!いい質問だね。ミレルミアくん。

 この技の特徴はね。


 発動者である僕が未熟がゆえに、半径1メートルも無いフィールドだが。

 自分が作り上げた気の範囲に入った際、反応・カウンターを同時に行うことができる技なのだよ。


 つまり、自分のフィールドか円かな。

 その中に少しでも入ると、反射的に反応することができる。

 知覚して動くのとは異なっていて、反射的に動くことになる。」


「なるほど。聞く話によると、すごい技ですね。


 実際に使いこなせれば、自分の警戒範囲?察知範囲と言いますか。

 それが、常時行えると言うことですね。

 どんな攻撃が来ても、見なくても反射的に動けるということ。暗殺にも対処できますね。


 ただ、攻撃を捌くための力量は必須ですね。

 力押しの場合だと、どうしても力がある方に軍配が上がるので。」


 長々と代わりにご説明をしてくれた。

 ミレルミアさん。ありがとう。


「主様はあの瞬間に、そんなすごい技を使われていたのですね。」


「確かに、大量の黒狼をただ迎え撃った感じはしなかったですね。

 よく思い返すと、反射的にかつ見なくても相手の位置を知っていた動きをしていましね。」


 エラルドは年長者な分、観察力がえぐいです。

 アリシアさんは、うん。

 恐らくは気づいてるけど。うん。


「なるほど。素晴らしい成長を遂げられましたね。キャスト様。

 では、私の方ですが。

 まず最初に話しておきますが。実は冒険者を昔やっていました。」


 衝撃の発言が出た。


「えーと、つまりは?」


「はい。ランクはB止まりで、放浪の旅の資金目的でなりました。

 経緯は省きますが、結果的にドルガル様の騎士団にお誘いいただいたので、ほぼ引退したようなものです。」


「なるほどなるほど。

 で、冒険者組合に何しに行ったのそれ?」


「主に情報収集です。

 一応、1件だけ依頼をこなしました。

 ランクBはそこいらの下っ端より高い報酬で、1日かからずとも、いい稼ぎのクエストがあります。」


 アリシアがピクッと反応した。


 突っ込まんぞ。絶対に突っ込まんぞ。

 なんか物凄い睨んでるよアリシア。


 そんな視線を他所に語っていく。


「今回の情報収集は王国の情勢とエンバイス家の状況です。」


 おっと、王国はともかく。我が家のことは気になりますな。

 捜索隊とか出てたり?

 でも、森は広い。結構奥深い場所までアリシアに連れてきてもらったからな。

 早々には見つからんよ。


「エンバイス家の状況ですが。

 失踪というよりは、アリシアの暴走ではないか?と処理されかけてます。」


「いやいや。と言いたいが。実のところ客観的に否定要素はないな。

 だから、なんかごめん。アリシアだけ悪者扱いとは。


 正直なとこ、僕はかなり怒ってる。

 結局、僕を見ていなかったのかな?と思ってくるよ。

 あんなに尽くしてくれるアリシアを悪く言われるのは本当ムカつくね。」


「主様・・・・一生ついて行きます!」


 チョロインかな?

 もう少しなんかしらのリアクションしてよ。


「いや、汚物は一生来なくてはいいからな。

 むしろ、私が長くキャスト様のお側に控えているから、でしゃばる必要もないぞ。」


「調子に乗るなよ。呪物風情が。

 主様のお側にいるだけで穢れてしまう。

 主様の安全のためにも、長々仕えてきたお前は退場した方がいい。」


 なぜ火に油を注ぐのか分からん。

 芸人のコント見ている気分だ。

 エラルドが何か笑ってる。あれ?俺そんなにおもろいの?バカにされてます?


「すいません。バカにしたわけではありません。

 こんなに愉快な人たちがまだ世の中にいようとは。

 それに愛されていますね。キャストくん。」


「まぁ、そうですね。愛されてはいますね。」


「キャスト様」


「主様」


 視線が嬉しいけど、背中痒い。

 慣れてないからね。こういうの。


「さてと!続きだ。続き!」


 照れますので次お願いします。恥ずかしい。


「コホン。エンバイス家の続きですが。

 捜索隊は組まれますが、あまり奥地まで踏み込めないものとなってます。

 理由は簡単です。

 キャスト様を侮る連中がいること、皇国がなぜか止めに入ってるそうですね。

 どうも魔族の動きと隣国の勇者たちの動きに警戒をしているそうです。」


「勇者か。であれば聖王国も動くな。

 勿論、ほかの勇者を交えた勇者会議もあるな。」


 アリシアは思うことはあるだろう。

 特に大きな気持ちの変化はないから、大丈夫かな?

 それにしても、そんなに勇者召喚されてんのね。神様も多忙だね。僕に何もくれないけど。


「勇者や隣国の件は置いておきましょう。

 今はエンバイス家のことです。

 ドルガル様は抗議を繰り返していましたが。

 やはり皇国も腐ってます。


 勇者を前面にだして、抑え込まれています。

 名目上の捜索隊がありますが、期待しない方がいいと言われてます。

 これは都合がいいので、無視しても良さそうです。

 それよりか感謝すべきですね。

 これで、キャスト様のお力を世に知らしめる準備を整えられるのですから。」


「確かに、ミレルミアの意見に一理あるね。

 都合が良さそだからいいか。」


「キャスト様。」


「主様。」


「キャストくん。やはり心配なのだよ。2人は。

 君が無理をしてないかってね?」


 でしょうね。母上や父上、姉上たちは何やかんやで良くしてくれた。

 感謝してるからこそ、絶対に恩を返したい。

 でも今は。


「ありがとう。2人とも。エラルドもありがとう。

 だから、僕は強くなるよ。

 ただの力だけではなくね。」


 らしくない決断だ。

 生きて、異世界無双したいとか頭で考えてたけど、今は自分のに生きてんな。

 ある意味自由なのかな?


「そのためにも3人にの力を貸してくれ!

 僕はここで立ち止まる訳にもいかないから!

 強くなるんだ!

 スキルや魔力なんていらない。

 ただ、自分が納得したいだけなんだ!

 それを承知で力を貸してくれ!」


 思いのままに話した。


「かしこまりました。主様。

 私でよろしければ、一生お側においてください。

 私も置いていかれないよう、強くならせていただきます。

 あなた様のお側で1番であり続けます。」


 アリシアが跪いて宣言した。

 その目には英雄として、1人の女性としての決断が浮かんでいた。


「キャスト様。前からではなく、これからもお仕えするために、私は私が思う行動を取ってきました。

 私もあなた様のお側に、生涯を賭けて仕えさせていただきます。

 私こそ、あなた様の1番であり続けます。」


 ミレルミアも跪いて宣言した。

 彼女は英雄ではないが、それと同じくらい強い。

 心からの誓いが見てとれる。


「私はキャストくんが何かは興味本位だったけど、気が変わったよ。

 私も君を近くで見守るとしよう。

 いつまでも、隠居生活を決め込む訳にはいかないからね。

 君の人生がどのような道になるのか。

 そして、周りを巻き込む大きな風となって、私たちをどのように導いてくれるのか、楽しみにさせてもらうよ。」


 エラルドまで。ありがとう。


「よし。誓いあったところで、早速考えて欲しいことがある!」


「それは何でしょうか?」


「私にお任せいただければ、主様の願いを全て叶えて見せましょう。」


「私でよければ力にはなるよ。」


 みんな。グス。涙が出るぜ!


「ありがとう。

 では早速だが、技名を決めたい!!」


 すると、空気は一瞬で固まった。


「「「・・・・・・・・・・・。」」」


「「「はい??」」」


 3人が同じリアクションをしていた。

 あれ?僕はなんか変なことを言ったかな?




 それから暫く、試行錯誤した候補を発表した。


「まずは、私の浸透系の技名からだ。

 その名も『爆裂寸頸』!

 これはシンプルに考えてみたんだ。」


「はい。素晴らしいです。」


「私も問題ありません。」


「問題しかないだろ。」


 まぁ、あの2人は正直に言わないので。

 エラルドさんは言ってくれるので助かる。


「そもそも、爆裂というほど派手な技ではない。

 寸頸と言ってるが、掌底でも通るし、普通のチョップでもできるなら、寸頸を固定概念とするのは難しいのでは?

 というか、使い勝手に困りませんか?」


 そこまで言いますか。

 なんか、2人も目を逸らしてるし。

 絶対そう思ってましたよね?


「ならば『奥義!古流掌底波!』とか?」


「いえ・・あの。はい。」


「とても素晴らしいです。」


「あれだな。名前はつけない方がいいのでは。

 魔法的な感じで付けたいのは分かったから。」


 3人にの反応は微妙だった。


 個人的には渾身だったが。

 あれか!〜波!は色々使われてるからベターだったか。

 エラルドの最後の意見に至っては、名前無しでよくね?みたいな案なんですが。


「そこまで言われるとは。

 他に意見はあるの?」


「シンプルに『衝撃波』とか?」


 『ショックウェーブ』とかよくね?

 英語はダメか?


「そうですね。シンプルがいいと思います。

 より念じ易く、使い勝手も良くなると思います。」


 確かに、いちいちなんとかなんとか!て言うよりは『衝撃波』なら唱え易い。

 それに忘れないな。


「私は主様のご意志にお任せします。」


 アリシアに関しては思考放棄してるし。


「そうするか。では『衝撃波』だ!」


 パチパチパチパチと拍手された。


 なんか技名1つでこれは恥ずかしいな。

 個人的には『フレア』とか『ライトニング』、『ウィンドカッター』みたいなやつが良かった。


「今日編み出した円みたいなやつだが。

 これは『周波フィールド』か『オラクルフィールド』、『アンチバリア』ど、どうだ?」


「却下だ。

 魔法でもなかなか聞かない名前です。」


「あのー申し訳ありません。キャスト様。」


「私は主様のご意志に従います。」


 またしてもだ。グフッ。

 どの戦いよりもダメージを受けた。

 アリシアに関しては、そこまで来ると嫌味です。ハイ。


「そこもシンプルがいいな。」


「では、『守護円』でどうですか?

 こちらも覚え易いと思います。」


「(ニコニコ)」


 あ、ハイ。ソウデスネ。

 分かりやすくてイイトオモウヨ。


「そうしようか。」


 悲しみに耐えています。


「きゃ、キャスト様・・申し訳ありません。」


「謝らないでくれ。惨めになる。」


「主様!お、落ち込まれないで下さい!

 このアリシア!全て良い名前ばかりでした!」


「余計な一言は、大きく他者を傷つける場合があるよ。」


 正しくその通りです。

 妙な優しさは僕の心に傷を負わせます。

 というか、アリシアに至っては思考放棄してただけだろうが!チクショウ。


「茶番はここまでにして。

 王国の情報がまだ終わってないのでは?」


 な・・・・なんだと。

 エラルドに茶番扱いされた。

 いや、茶番だわ。


「王国の情報は聞かなくてはな。

 これから向かうかもしれない国先だ。

 何かしらのトラブル等は、主様のために未然に防ぎたいからな。」


「分かった。なら続きを話そう。

 キャスト様もよろしいでしょうか?」


「ウン。ダイジョウブ。キリカエダイジ。」


 ミレルミアさんが優しく頭を撫でてくれた。

 サッと後ろからも撫でてくれたアリシアさん。

 あまり、そこで撫で合いしないでください。

 頭擦り剥けて禿げるので。


「チッ。王国の件ですが。勇者召喚は既に終えてます。

 名前やスキルは伏せられてますが、かなりの良識人とか。

 近隣の村や町の援助や魔物の討伐に自ら赴いているそうです。

 実際に会ったことはないですが、歳は15〜16歳ぐらいと。」


「勇者か。我々龍にとっては良き味方でもあれば、憎き敵でもあるからな。」


「勇者は基本ダメなので。あまり信用しません。」


 言わんとしてることは分かるよ。

 でも、聞く限りでは真面目そうだが。実態はどうなんだがね。

 こればかりは直接見ないと。


「王国は多種族国家を容認している国ですので、文化圏はさまざまな物があります。

 近くにダンジョンもあり、国としては栄えています。

 上層部も割と機能しているそうです。

 一応、全員が全員動いているわけではありませんが。」


 多種族国家は普通に国としては珍しいのか?

 前世なら珍しくはないが、日本でもそんなに外国人が住んでいたイメージが湧かなかったな。

 これは近くで外人を見ることが少なかったからだと思う。


「そうか。なら、他の国よりはお尋ね者にさえならなければ行き易そうだね。」


「その通りかと。

 しかし、些か冒険者や一部の貴族により、気性の荒さや不当な要求はあるそうです。

 多種族国家と言われてますが、全員が容認しているほど、一枚岩ではありません。」


「それに関しては、私からもそう思います。

 龍である身ですが、そんな綺麗な国は基本的にありません。

 いくらかマシなだけです。

 文化や文明、知識、情報に負けないよう、取り組んでいるのでしょう。恐らくは。」


 エラルドさん本当に人間好きでは無いんですね。

 あれ?僕人間だよ?そうだよね。ん?


「知らない他国よりは、情報もあるから悪くないんじゃないかな。」


 その後も結構色々と話したな。

 王国に行くためにも身体の成長と力の成長が必要だな。それと情報もか。


「とりあえず、今日は寝ますか。」


「かしこまりました。

 であれば、私の膝をお使いください。

 遠慮しなくて大丈夫です。」


 アリシアが綺麗な足をスッと出してくれる。


 なんかエロいです。

 横から綺麗な黒肌も見えた。


「キャスト様。そんな筋肉質より、私の方が柔らかくて寝心地がとても良いですよ。」


「おい!私が最初だぞ!

 貴様は向こうで見張でもしていろ。」


「今日は私がキャスト様の側を離れていたんだ。だから、この時間は私のものだ。」


「貴様。昨日主様に、その忌々しい呪物を擦り付けていただろうが!」


「おや、これは申し訳ありません。

 なぜか『クリーン』をかけていたのに、誰かの汚物が見えたので私が浄化してあげたのです。」


 キンッ!って僕の目の前で剣音がした。


「死にたいのか?ならいいだろ。斬ってやろう。

 ちょうど最近、感覚を取り戻してきたんだ。

 呪物だからな。お祓いも兼ねて。」


「何を言ってますやら。また、魔物にでも襲われればいいもの。

 あなたの身体なら、きっと色んな者を惹きつけますよ。慣れてますよね?」


「殺す!」


「お前が死ね!」


「あの人たちは本当愉快ですね。」


 エラルドくん。呑気に言ってる場合なの?寝たいんだけど。

 本当は僕も見張やらなければとかあるけど。

 だから寝かせてくれない?


 こうして、2人の殺し合いについて考えるのをやめ、寝ることにした。

 愛されるのは嬉しいけど、ああいう女の子ってどう対処したらいいか分かんない。




 あとがき


 技名って日本語縛りにすると、難しいですね。英語だったら、ぽっぽぽっぽでますが。


 フォロー・応援・レビューありがとうございます。チェックできる時にチェックしてます。

 とてもやる気がでます。

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