第??話 夏編宣伝 恋愛戦略しませんか?

「きっと何者にもなれない浩史郎先輩に告げる…!

ピン○ドラムを手に入れるのだ…!!」


夕食後、デザートの牛乳アイスバーを俺にビシッと差し出しながら、そんな事を宣ってきたのは、俺の許婚かつ同居中である森野林檎。


「何を言ってるんだ?君は?」


相変わらずコイツの言う事はワケが分からない。

許婚で既に俺のパートナーである筈の

りんごが、何故恋愛戦略の話など持ち出して来たのかは、後に語られる事になるので今は置いて置こう。


ちなみに、このよく分からないセリフは、

最近りんごがハマっていたアニメに出て来る決め台詞らしい。


「私と同じ名前のキャラが出て来るの♡浩史郎先輩も見てみて!」


と俺もりんごに何回かアニメを見させられ、その後熱く語られたのを聞いていた程度の知識なので、詳しくは分からないが…。


「ふふっ。いや、期末試験も無事終わった事ですし、浩史郎先輩が幸せな愛を手に入れられるよう、不肖りんごちゃんが、恋愛戦略など、練って差し上げようかと思いまして…。

まぁ。取り敢えず、今は愛の代わりに、アイスでも受け取って下さいよ。」


「また、ロクでもない事考えてるんじゃないだろうな。取り敢えず、アイスはもらっとくよ。はむっ。」


俺はりんごから牛乳アイスバーを受け取ると、透明の外袋をとって、それにかじりついた。


ミルクの甘みが口いっぱいに広がる。

高級感はないが、どこか懐かしさを感じるような安定の美味しさがあった。


「はむっ。あまっ。ホント牛乳アイスバーって、予想を裏切らない美味しさですよね〜。いつもあっと言う間になくなっちゃうんですよね。」


りんごもアイスの箱から最後の一本を取り出し、口に入れるとその美味しさに頬を緩めた。


「あ、浩史郎先輩。食べ終わった後のアイスの棒にもし、牛のマークがついていたら、私に下さい。集めて、今やってるキャンペーンに応募したいんで。」


「んん?キャンペーン?」


りんごの言葉に、俺はテーブルの上に置いてあったアイスの箱を手に取り、その裏側を見てみると、『モーモーおはようグッズが当たる☆キャンペーン☆』という抽選会の応募要項が書いてあった。


どうやら、牛のマーク(1個から3個)のついたアイスの棒を何点か集めて送ると、牛のグッズが当たるというものらしい。


「君が手に入れたいものは、ピング○ラムじゃなくて、牛のグッズというわけか。

ホラ。牛のマークの棒、やるよ。」


俺は食べ終わったアイスの棒を手渡すと、

りんごは顔を頬を紅潮させて喜んだ。


「ふわぁぁ!牛のマーク3個もついてるぅ!!ありがとうございます!!

さすが浩史郎先輩、持ってる人は違いますね!!私のなんか1個も牛のマークついてなかったのに…。」


と、自分の食べ終わったアイスの棒を残念そうに見せてきた。


「いや、それで運が良くっても、別に俺が嬉しいワケじゃないんだけど…。」


俺は苦笑いしながら、りんごがお菓子の缶に、当たりのアイスバーを大事そうにしまう

のを見守った。


「それで、どういう作戦なんだ?」


「へ?」


俺が質問すると、りんごは、パチパチと大きく瞬きをした。


「いや、さっき言ってた恋愛戦略の話なんだけど…?」


「あ、ああ!恋愛戦略の話ですね!!

はいはい。今、その説明をしようと思っていたところだったんですよ。ホントに!!」


りんごは焦ったように言うと、ウンウンと何回も頷いた。


コイツ…。アイスのキャンペーンの事で、ルンルンしてさっき言ったことすっかり忘れてやがったな?


「考えたのですが、最近見ましたあのアニメにヒントを得まして、作戦名は名付けて、

“晴れときどき女の子!

日記に書いた事を実現させよう🍑ディスティニー大作戦”!!」

「はぁ…。」


なんか、追求した事を後悔するレベルのひどい作戦名だった。ろくな内容じゃないのは、容易に想像がつく。

しかも、なんか違うの混じってるような気がする…。


りんごはげんなりしている俺の様子には気付かず、喜々として作戦の説明を始めた。


「えっとですね?まず、白紙の日記帳を買ってですね?実現させたい目標を書くんですよ。例えば“○月○日女の子をデートに誘う。”っていうように未来の日付を書いて、

その日までに目標をクリアするように努力するんです。」


「ほう、ほう。」


自信満々で説明を始めるりんごに俺は努めて感心した風に相槌を打つ。


俺、なんでこんな思考がヤバイ奴を好きなんだろう?

恋というのは本当に恐ろしいな…。


「それでね。その目標を実現したら、その都度次の目標を一つずつ、書いていくんです。

“水族館でデートをする”とか、“彼女にプレゼントをする”とかいうように…、それで、最終ページにはふふっ。結婚式の日付を…。」


結婚式の日付まで日記頼り?!

怖っ!!何かの宗教のお告げじゃねーんだから…!


「ふ、ふ〜ん。悪くないな、その案。」


かけらも思っていない事をいいながら、俺はりんごに、にこやかに笑いかけた。


「目標を書き出す事で、自然と意識して目標に向かって努力できるようになるっていう事はあるかもな…。で、りんごはどうするんだ?」


「へ?」


俺に聞かれてりんごは目を丸くした。


「俺の恋愛戦略に、りんごも協力してくれるんだろ?日記任せじゃ、ちょっと無責任だよな…?」


「え、ええ…?や、でも、日記の…アイディアを…出し…。」


自信なさげにゴニョゴニョ言ってるりんごに、俺は何かを思いついた風に、大げさに手をポンと叩いた。


「ああ、そうだ!りんごも日記を買って、

目標を書いていけばいいんじゃないか?」 


「えっ。私もですか?」


りんごは人差し指で自分を指して驚いている。


「ああ、それで、○月○日 “浩史郎先輩が女の子をデートに誘えるように全身全霊をかけて協力する”とか、一緒に目標を書いていけばいい。そしたら、一蓮托生で、目標に向かって頑張っていけるだろ?」


「そ、そう…です…ね?でも…。」


りんごは急に勢いをなくして戸惑ったような声を出した。


「期日までに、浩史郎先輩が目標を達成出来なかったら、どうしましょう?日にちをずらしましょうか?」


「そんなに簡単に、日にちをずらせるようにしたら、目標の意味ないだろ?その時は、何が何でも、りんごがその目標を実現させるんだよ。」


「ええ…!責任重大…!!」


りんごは、プレッシャーを感じているのか、

心配そうに胸の前で、手を組み合わせた。


俺は、ニヤニヤ笑いを浮かべながら近づき、りんごの耳元に悪魔のように囁いた。


「そんなに心配しなくても大丈夫だ、りんご。一応君も生物学的には君も女の子なんだから、うまくいかなかったその時は君が仮の相手として、目標を達成すればいい。デートが目標なら、一緒にデートすればいいし、結婚式も…。」


「え?!デート…?け、けっこ…?!!」


りんごは、みるみるうちに真っ赤になった。


その様子をニヤニヤしながら見守っている俺を見て、りんごは、してやられたとばかりに今度は怒り出した。


「そ、そんな事しても、何の意味もないじゃないっ!!浩史郎先輩、私をからかってるでしょうっ!!」


「うん。まあな。あまりにひどい作戦だったもので、ついからかってやりたくなって。」


「もうっ。一生懸命考えたのにひどいっ!!」


りんごはプンプン怒っている。


や、まぁ…、本気にするなら本気にするで

りんごを否応なく追い込める作戦になり得るから、俺としてはどっちでもよかったんだけどな。


「あれぇ?恋愛戦略とやらは、それで終わりか?もう諦めるなんて、りんご、根性ないな…。」 


煽るように言ってやると、りんごは、ムキになって首を振った。


「い、いいえっ!い、今のは試しに突飛な作戦を言ってみただけで、本当はもっとちゃんとした作戦が別にあるんです。他力本願ではなくって、私もちゃんと協力しますから!もう少しちゃんと、計画を練ってから言いますから、首を洗って待ってて下さいね!」


拳を握り締めて、俺をキッと軽く睨んでそう言うりんごに、俺はニッと余裕の笑顔を向けた。


「おう。楽しみにしてるぜ。」


焦る必要はない。

同居している俺達には、一緒に過ごす時間が山程あるのだから。


りんごの恋愛戦略とやらを逆手にとって、

機会があればアプローチをかけていく。

それが俺の恋愛戦略…!


「次は、浩史郎先輩が感心して、ぜひやらせて下さい!って言うぐらいすごい恋愛戦略を立ててみますよ。陽○ちゃんの、あのコスチューム着て、その前でへへ〜って跪かせてみせます。」


「あのアニメのコスチューム着てくれたら、戦略の出来に関わらず、へへ〜って

跪くかもな…。」


不敵な笑みを浮かべるりんごに、ついエロ心で言ってしまった。


結構あれ、際どい衣装だったんだよな…。


「ああ。浩史郎先輩コスチュームフェチですものね。」


りんごは、気分を害した様子もなく、にっこりと俺に笑いかけたのだった。





*あとがき*

夏編の宣伝だか、アニメの宣伝なんだか分からないことになってしまいましたが

…😅

(輪るピングド○ムは、名作です😢)


夏編、7月ぐらいから始められたら、いいなぁと思いながら、まだ何の準備もできておらず…💦💦


「8回目の嘘コク」が思った以上に長くなりそうで、その進行具合によって、どうなるか分からず、6月位までにはお伝え出来ればと思います。


気長に待って頂けると有り難いです。


今後もどうかよろしくお願いしますm(_ _)m

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