第八章 おばさんと道連れ

おばさんは、どこにいてもおばさんなのです


「この後、エマさんはどうされるの?」

「ジョスリーヌ様には隠しても仕方ないようなので……いちおう、バンベルク大主教様から、こちらの王国宰相様宛に紹介状をいただいておりますので、移動パン屋でもしながら、ロンバルへ行こうと考えております」


「えっ、王国宰相宛の紹介状?」


「やはり、エマさんとはご縁があるようですね、ベネット王国宰相って、私の兄ですのよ♪」

「私、実家はピネー侯爵家なの、兄はクレマン・ピネー、私の母はベネット王家の出なのよ♪」


 偉い方と知り合いになってしまいました……


「じゃあ、ロンバルまでご一緒しましょうよ♪アンドレがいうには、美味しいご飯を振舞っていただけたとか、私も食べたいわ♪」

「お母様、不躾ですよ」


「いいじゃないの、エマさんが15歳、クロエさんは17歳、フレイヤさんでも18歳、三人とも、私の娘と言ってもいい年ごろよ♪」

「ところでエマさん、お二人とはそれなりの仲なの?」


 クロエさんが、

「式はまだですが、バンベルク大主教様から祝福はいただいております♪」


 えっ、そんな話聞いてないけど?


「それなりの仲になったら、届けるようにと、契約証書に署名していただいております♪」

「私もいただいておりますよ♪」


「あら、なら安心ね、エマさん、『聖女』様ですから、万に一つもお逃げにはならないわね♪」


 この後、ジョスリーヌ様の独壇場と化したストーブ周り、あれあれという間に、同行することになってしまいました。


「エマさん、女はね、子を産み、薹が立つ(とうがたつ)と、お淑やかなんてどこかに忘れる物なのよ♪覚えておいた方がいいわよ♪」


 このあたりで、確信しました。

 ジョスリーヌ様は『大阪のおばちゃん』なのだと……絶対かなわない相手……

 なんせ、クロエさんもフレイヤさんも丸め込まれて、掌で躍らせられているよう…… 


「このパン、美味しいわ♪手づかみで食べるなんて生まれて初めてね♪」


 エマさん、いつのまにかホットドッグなんて作らされていたのです。

 あっという間に、隠し事は露見、お取り寄せなんてのも知られてしまい、この体たらく……


「キャベツを炒めて、ベーコンを挟むのね♪でも、作れそうもないわね、この香辛料、手に入らないものね♪」


 100円●ーソンからキャベツ千切りを取り寄せ、スキレットでネットスーパーから取り寄せていた『カレーパウダー』で炒めて、さらにベーコンを炒めています。

 同じスーパーの『ドッグパン4本入り』を用意、切れ目を入れて、バターを塗り、炒めたものを挟み、マスタードとケチャップをかけて出来上がり♪


「それにこのお酒、いいわ♪」


 コンビニのレモンサワーを提供したのですが、お気に召したようです。

 もちろん、グラスに入れて渡したのですよ!


 『お取り寄せ』を理解していたとしても、アルミ缶はね……


「これからロンバルまでの私のご飯、時々お願いね♪もちろんお代は支払うわよ♪」

「私どもは、パンを売りながらロンバルに向かうわけですから、ライネーリ様のご一行と移動速度が違うかと存じますが?」


「別に構わないわ、マリアンヌの呪いは解除されているので、目的は達しているし、後は気楽にゆっくりと旅を満喫するわ♪」

「宿屋に泊まる場合、エマさんたちも一緒よ♪費用は全額持ってあげるわ♪営業する場合の場所代もこちら持ちでいいわ♪」


「ほかに、なにか問題でもある?」


「いえ……ただ私の事はご内密にしていただければ……それ以上は……」

「それは、先にもいったけれど確約するわ、マリアンヌもね♪」

「勿論です、エマ様♪ロンバルまで、楽しい旅になりそうですわね♪」

 

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