追放
「お前との婚約は無効だ!」
はぁ?
その時、何かが頭に入ってきました。
それによると、どうやら私に何か云っている目の前の男、王子と婚約していたようで、自分は侯爵令嬢らしい、養女(元カペー王国ルルー子爵家長女)ですが……
昨日、求めてきた王子をやんわり断ったらしい……
「散々愚弄しおって、婚約者だから我慢していたが、これ以上は我慢出来ぬ!顔も見たくない」
これ、良くある異世界物の婚約破棄イベント?なの……
いくらイケメンでも、こんな理不尽は腹が立つわ!男は好きでも馬鹿は我慢できないのよ!
「何がお気に障ったか分りませんが、殿下に嫌われました以上、仕方ありません、謹んでお受けいたします」
「なら、早々に王国から出ていけ!」
「それはお養父様の承諾が必要なのですが?」
すると養父である侯爵が、
「お前は勘当だ、殿下に献上する為に養ってやっていたが、恩を仇で返しおって!そのドレスも靴も、身につけた宝石も、全て置いて、出て行け!」
私はこの侯爵家を寄親とする、元子爵家の長女、どうも何かの事故で当主一族が死んだようなのです……
身寄りのいない私は、子爵家を相続した、本当に遠い親戚に、侯爵に売られた……このあたりのようです。
本当の両親、顔も思い出せませんが……
「分ったか!衛兵!この女をこのまま国外へ放り出せ!」
で、そのまま身ぐるみはがされ、囚人護送車に放り込まれ、隣国との国境付近にまたがる『還らずの森』へ追放されたのです。
帰国すれば死罪らしく、このまま森を抜けて、隣のゴトーネース帝国へいかなければならないようです。
『還らずの森』って、うっかりと足を踏み入れたら、迷ってしまい、抜けられなくなると云われている場所です。
王国とゴトーネース帝国の境にある『還らずの森』、でも、私は危険という気がしません。
むしろ、このままホールにいる方が危険と思われるのです。
『還らずの森』への追放こそが、生き残る唯一の手段のようなのです。
2日ほどで国境に、目の前にうっそうとした森が広がっています。
「おい、ここが『還らずの森』の入口だ、振り向かずにいけ、振り向いたりしたら、射殺せと命じられてる」
『還らずの森』は王国領においては、城壁で囲まれていて、入口が1つあるだけなのです。
この城壁はゴトーネース帝国との国境にある物なのですが、『還らずの森』の中に築くのはあまりに危険なので、『還らずの森』の外周にそって築かれたのです。
事実上、王国は『還らずの森』を放棄しているわけです。
ゴトーネース帝国はどうなのかは詳しくは分りません。
ドレスをはぎ取られ、代わりに投げ与えられた、ボロボロの下女の服を着て、穴が開いてそうなサンダルを履いて、トボトボと森の中へ入っていきます。
背後で入口が閉じられて、城壁の上から石など投げられました。
「早く行け!2度と戻るな!」
とにかく走って森の奥へ……
「惨めなこと……寒いし、お腹も減ったし、のども乾いたわ……」
この2日の間、1日パンを1切れ、水も朝にコップ1杯、トイレなんて囚人護送車の隅にある穴にさせられました。
囚人護送車って、荷馬車に鉄格子の部屋みたいな物がのっている様な物で、吹きさらしで寒い事……
見世物の様にして、引き回されたのですよ!排泄もね!恥ずかしいから日中我慢して、深夜に……泣きそうでしたね。
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