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 その後、デビルバッドたちは僕を先導するように飛び始めた。僕の行き先が最奥部であることを分かっているかのようだ。おかげで楽に最奥部への正しい道を進めている。もちろん、迷ったら困るから、分岐点ではきちんと地図を見てメモを記しているけどね。


 さらにありがたいのは、彼らが一緒にいることによってほかのモンスターに遭遇しなくなったということ。どうやらこの洞窟には単体ではデビルバットよりも強いモンスターは生息していないらしく、ゆえに襲いかかってこないのだと思う。


 おかげで体力も温存できて、すでにヘトヘトの僕にとっては本当に助かる。





 そしてついに僕たちはタックさんの待つ最奥部へ到着! つまりこれでミューリエとの約束を果たしたことになる。嬉しくて涙が出そうだ。


 僕は振り返ると、目を指で擦りながらミューリエに駆け寄った。


 今の彼女は探索をしていた時とは打って変わって穏やかな瞳を僕に向けている。もちろん、以前の優しい雰囲気も漂っていて温かい。がんばって良かったと心の奥底から思える。


「ミューリエ、僕はタックさんのところへ自力で辿り着いたよ! だからこれからも一緒に旅を続けてくれるよね?」


「もちろんだ! そういう約束だったからな。だが、まさか本当に成し遂げるとは思わなかったぞ? 人間は大した力がない反面、思いも寄らぬ奇跡を起こしたりする。面白いものだな」


「必死になればなんとかなるんだよ!」


「どうかな? きっとアレスだからこそ達成できたのだ。もっと自分を誇れ」


「ふふっ、僕はそんな自惚れじゃないよ」


 正直、体力は限界に近付いている。この勢いのままにタックさんの試練をクリアして勇者の証をもらいたいところだけど、それは少し難しそうだ。


 でも焦る必要はない。準備を整え直して、何度でもチャレンジすれば良いんだ。ミューリエと一緒に旅を続けられることが確定したのだから。


 一応、ここまで来たことをタックさんに報告するため、僕たちは大広間を進んでいく。


「タックさん!」


「……ん!?」


 タックさんは初めて出会った時と同じ場所で寝転んでいた。こちらの存在に気付くと、大あくびをしながらヒョイッと起き上がる。


 そしてやや不機嫌そうな顔をしながら僕を睨む。


「なんだ、お前か……。まだいたのか? オイラに何の用だ?」


「また試練を受けさせてください。ただし、今は体力が限界なので、後日という形にさせてもらいますけど」


「はぁっ? オイラは言ったはずだぞ? 自分の力だけでここまで来いって。それが出来ない限りはお断りだ!」


「僕は自分の力だけでここへ来ました。本当です」


「その通りだ。私は何も手出しをしていない。アレスは自力でここへ辿り着いた」


 そのミューリエの淡々とした様子にタックさんは真実味を感じたのか、目を丸くして狼狽える。


「う、嘘だろッ!? だってあれからそんなに時間は経ってないじゃないか! それなのに急に強くなるなんてあり得ないっ!」


「違うな。アレスには元々それだけの力があったということだ。それならきっかけさえあれば、短期間で化けることは充分あり得る。男子三日会わざれば刮目して見よ――ということだ。貴様自身が確かめてみるがいい」


「……ふーん、なるほど。彼が自分の力だけでここまで辿り着いたというのは本当みたいだな。分かった。再挑戦を認めてやるよ」


 タックさんはニタリと頬を緩めた。どことなく満足げな感じでもある。


 ようやく僕は『勇者候補』として第一歩を踏み出したというところだろうか。次は『勇者』としての第一歩を踏みしめるため、なんとしてでもタックさんの試練を乗り越えてみせる。



 ――この時、僕は心の中で決意した。

 


 NORMAL END 6-1

 

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