2. すべては知識のままに。

2. すべては知識のままに。




「お腹が空きました……。」


 私にとっては、生まれて初めての遠出なのですけど……それらしい感想が全く無かったのです。ただ食欲に負けての言葉なのかは、謎であったりするのですけど……それはどうでもよいとして、私の中で昼食を摂ることに決定したのです。でも重要なことに気づいたのです。


 そうだ私は「資金」がないのです。ずっと教会暮らしの私には必要な時以外はお金というものは見たことも持ったこともなかったのです。


 さすがの聖女様でもお願いだけでは食事代まで出してもらえない。そもそも今持っているのは青い宝石をあしらった聖なるロッドだけなのです。


 えぇーっとぉー・・・。


 これはもうアレですね!仕方ありません!!ここは多少強引だけども、誰かを助けて、ご馳走していただくしか無いみたいなのです!!そのためにはルベルタの街までなんとかたどり着かないとなのです。


 でもさっきからこの森は同じような景色ばかりで困るのです。私がしばらく歩くと別れ道に遭遇する。


「また別れ道なのです。それなら……えいっ!」


 私は地面に落ちている木の棒を空に投げ、落ちた木の棒の方向に進むことにする。これは昔読んだ物語でやっていたことなのです!


「こっちなのです!お腹すきましたぁ早く街にたどり着くといいな。」


 そう本の知識は優秀なのです!


 迷う心配は無いのです♪あ、もちろんその物語のヒロインのように方向音痴とかではありませんよ?ただ本の主人公は確か街の人に拾われたはずですからね~うまく会えたらいいなって思うところはあるけれど、きっと大丈夫でしょう!




 しばらく歩いていくと本当に人に会うことになる。しかしその人物は何故か倒れているのですが……。


「あの大丈夫なのです?ここで寝ると風邪を引くのです!」


 その人物は格好は男物を着ているけど女性だとすぐにわかった。鍛冶屋さんですかね?


 鍛冶屋さんがこんなところにいるなんて……ん〜おかしいのです。とりあえずこの女性は明らかに具合悪そうな感じですし、見過ごすことは出来ないのです。


「どうしたのです!?」


「ポイズンビートルに……。うっ」


 毒なのです。いつもなら聖魔法で解毒くらいちょちょいのちょいなのですが……。まぁ聖魔法なんてなくても大丈夫なのです。


 私は周りを見渡す。そこに紫色をした小さな花を見つける。ハミハの花なのです。


「あったのです。あのお水持ってますか?」


「え。鞄の中に少しだけ……」


 そして落ちている少し太めの木をナイフで削りコップを作る。そしてハミハの花をすり潰し、更に持っていたロッドも少し削り鉄もとる。それを水で薄めて飲ませる。


 これで治ってくれればいいんだけどと思いつつ様子を見守ると苦しさが消えて行ったように顔色がよくなったのです。良かったのです。


「もう大丈夫なのです。良かったのです。」


「ありがとう。あたしはミルディ。この先のルベルタで魔法鍛冶屋をやってるの。あなたは?」


「私はアリーゼなのです。ただの聖女なのです。」


「えっ聖女?」


 明らかにこのミルディは驚いている様子なのですが、私はよくわかりませんって表情をしながらキョトンとした雰囲気を出してみる。


 それよりも今はそれよりも聞きたいことがあるのです。それは「ご飯」の話についてなんです。まず最初に言っておく事があるのです。


「あの私はお腹がすいているのです。何か持ってませんか?もう動きたくないのです。」


「ああ……ごめん。あたし食糧は持ってないんだ。」


 ガーン……なのです。はぁ……なんて無慈悲な神様。そんな時上空にモンスターが現れる。


「ありゃスカイバードじゃん。でもかなり上の方に飛んでいるから安全だけど。」


「……スカイバード。あの鳥食べれるのです?」


「え?うん。普通に狩ったスカイバードは食用として市場でも出回ってるけど……」


 それなら我慢の限界なのです。あの鳥をお昼御飯にするのです!ここはミルディにも手伝ってもらうのです!先ほど助けたのでせめてものお礼も兼ねてもらうべきなのです。


「ミルディ手伝ってくださいなのです」


「いいけど、あたしはこの金槌しか持ってないよ?しかもあんな高いところにいるし。」


「えっと……ありました。このくらいの石を集めてください。」


「はい?もしかして投石で落とすつもり!?」


「止めはその金槌でお願いなのです」


 ミルディは怪訝そうな顔をしていましたが私がお願いした石を探してくれる。


 多分これだろうという大きさを見つけてきてくれるとそれを手に持ち昔読んだ本だとこの角度でこの向きで……力一杯投げるのです!!!


 ザクッ──私の投げた石は見事にスカイバードの翼に当たり落ちて来る。そのまま落下して羽ばたくこともできなくなり地面へと衝突するのだがそのまま息絶えてしまったようだった。


「どんなもんなのです!金槌の出番はありませんでしたね!」


「ははっ。」


「さていただくのです!ナイフで捌かないと。あっミルディ手伝ってください。スカイバードの羽根を綺麗に傷つけないようにむしっておいてください。それと嘴は金槌で叩いて綺麗に削り粉末状にしておいてなのです。」


「あっうん。わかった。」


 私はナイフで綺麗にスカイバードを捌く。ミルディは私に頼まれたように事を進めている。


 そしてその下準備が整ったところで火を起こすことにする。薪を集めてきて枝葉を積み、それに私が拾ってきた木材を組み立てる。あとは火起こしなのです。この紐と木をこうしてあの本通りに。


「うりゃああああぁぁぁぁなのです!」


 豪快に火がつく。やはり本の知識は優秀なのです!


 そして串に刺した肉を焼いていく。ジュージューといい音と香ばしい匂いが漂ってくる。そして焼けたことを確認してから食べる。美味しいのです。調味料がないのが少し残念なのですが。笑顔でお肉を頬張っているとミルディが私に質問をしてくる。


「あのさ。アリーゼって何者?」


「えっ?私はただの聖女なのです。」


「いやいやおかしいでしょ!どう見ても熟練冒険者じゃん。あたしを助けてくれたあの方法や、投石技術、この獲物を軽く捌く技術や火起こしもだけど。それにこの羽根や嘴は何に使うのよ!?」


 なぜこんな勢いで確認されているのかは意味がわからないのですが、教えてほしいと言うことなら教えてあげるのです!


「あれは以前本で読んだことを今日初めて実践したのです。成功して良かったのです!あとお願いしたものは換金所に持っていくのです。スカイバードの羽根は染め物に使えるのです、嘴は神経毒に効果があるのですよ?」


「だからそれが熟練冒険者だと言ってんのよ……。しかも本の知識って。」


 ミルディは額に手を押さえて何故か困っていますが、とりあえずミルディを助けることができて良かったです!やっぱり本の知識は優秀なのです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る