【詩】事件

テレビ画面に魂が吸い込まれ

人の石像が床に倒れる

カーテンの隙間から

三日月の光が注ぐ

ノイズで乱れた音声を

テープに録音する

社長室の秘書は

自分の手帳を

シュレッダーにかけ

証拠を隠ぺいする

紙くずに火をつけると

鍵を閉めて去っていく


保険金が入ったのを確認したが

カラスが通帳をくわえて

飛び立ってしまった

舌打ちをして

酒瓶に口をつける


火災現場に落ちていたジャンパーのイニシャルは

秘書のものではなかった

赤いそれは

テレビの司会者のものだった


午前零時ちょうど

怪しい瞳がテレビ画面に映し出される

翌朝

また

不可解なニュースが流れていた

金持ちが石像になるという


誰かの通帳を拾った僕は

それを交番に届けると

赤いジャンパーを着た人が

隣で笑っていた



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