第三百二十夜『サブリミナル広告-imprinting-』

2023/04/28「音楽」「PSP」「業務用のツンデレ」ジャンルは「童話」


 全く、最近の広告はけしからん! 私が若かった頃の広告はもっと大人しく、それでいて効果的だった。

 携帯端末けいたいたんまつを使っていると、何やら二枚の絵が交互に動く広告が視界の真ん中に割り込んでくる。これは鬱陶うっとうしいが、テレビのコマーシャルとさほど変わらないし、そこまで腹は立たない。全く興味の無い女のツンデレ動作を見せられても、こちとらその様な女には無関心なのだ、腹が立つ以前に鬱陶しいと言う感想が優先する。

 問題は、携帯端末で動画形式の広告が出た場合だ。私の旧式の携帯端末はすぐに発熱し、あっと言う間に電力が無くなってしまう。しかも広告動画は私の意思と無関係に出現するし、そもそも私が文章を読んでいる際にも広告を流し始めやがるのだ。

 そんな事よりも広告主はもっと気にならない、気にさわらない広告を開発するべきではなかろうか。何でも人間は三千分の一秒の一瞬いっしゅんの広告ですら、のどかわきや嗜好品しこうひんへの欲求を覚えると言う実験結果が存在する。ならばそれこそ、一瞬しか映らない広告を使えばいいではないか!

 しかし実際の所、この様な潜在意識せんざいいしきに働きかける様な広告は法律で禁止されている。つまり、法的には広告は鬱陶しくないと認可されないと言う事だ。そんな法律、犬に食わせてクソにでもしてしまえ!

 そもそもこのサブリミナルと言う手法、実験の結果複雑な広告を刷り込ませる事は不可能だと結果が出ているのである。

 例えば三千分の一秒間、何かしらの画面に「パンをケツにはさんで右手の指で鼻の穴をほじりながら、左手でエアボクシングをしつつ『いのちをだいじに』と叫べ」と表示したとして、誰がその通りに実行が出来ようか? 誰も実行出来ないし、実行する人は出ないだろう。

 そんな事普通の広告で出されても誰も影響を受けないだろうが、要点は人間が無意識下で、集中していない状況で、関心が無い状態での広告の効果だ。携帯端末を走らせれば広告が動き、コンピューターをければ広告の音楽が流れ、ビデオゲームをしようにも広告を見てくれれば特典を授けると言い、街を出ればビルのディスプレイにコマーシャルの映像が走り、あるいはビルの側面に立体映像がかび上がる。ではあなたは、今日見たそれらの内容を他人に事細かに説明が出来るだろうか?

 私は出来る。最近朝の報道の合間によく見るキャラクター、名前は知らないがみんな知ってるあのキャラクター、あのキャラクターが何らかの料理を食べていた。何を食べているかは覚えていないが、恐らくタイアップ食品の広告だろう、どこの会社のなんて商品かは覚えてないが、多分絶対そうだろう。

 意識を向けていない人間の記憶力に、印象操作の精度など、精々この様な物なのである。

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