第二百五十五夜『裏が無いけど伏線はある話-fortune teller-』

2023/02/15「卒業式」「猫」「真の流れ」ジャンルは「邪道ファンタジー」


 ある所に占いのたぐいが酷く好きな男が居た。

 事の起こりは彼が中学生の時、初めは猫も杓子しゃくしもする様な流行りの占いの本にのめり込んだ事だった。

 言うまでも無く、流行とは一過性の物である。しかし彼にとっては占いは一生を通して没頭ぼっとうし続ける趣味であり、ドンドン占いやおみくじや手相にカードと言った様な物に興味を示した。

 彼のそんな性分は成人した今でも失われておらず、今は新年早々おみくじの為に神社に来ている所だ。

 いざおみくじを引こうとした時、彼は一瞬いっしゅん思いよどんだ。彼は占って欲しい事が希薄きはくなのだ、何せ占ったり占ってもらったりする事が目的なのだから仕方が無い。

「今年は占いのよくあたる一年になりますように」

 思い悩んだ末に、そう口にした。こう言うのは自然体が一番なのだ、変にかしこまる事など何も無い。

 しかし、彼が引いたおみくじは大凶。おまけに、待ち人来たらず、命と同じ位大切な物を失う。と、文面に書いてあるオマケ付きであった。

「大凶だと! こんな神社、!」

 そう吐き捨てて、早急にきびすを返して大股で神社を後にしようとし始めた。実はこの男、口には出さなかったが他の神社におみくじを引きに行く腹積もりである。中学生の時以来、占いの類から卒業できる気配が全く無い。

 ところで今は新年、彼もまた少なからず酒が入っている。酒が入っていると言う事はつまり、足取りが怪しいと言う事でもある。大凶のおみくじのせいもあり、男は神社の石段を勇み足で降りている所で足を滑らせ、石段に後頭部をしたたかにぶつけてしまい、そのまま動かなくなった。

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