第二百二十一夜『当サイトの調査によれば、利用者の大半は本当に長い名前に対して好意的と言う結果が得られた為、その事実に則して書かれた間違いなく歴代最長の名前となった短編小説-god father-』

2023/01/09「南」「墓場」「激しい幼女」ジャンルは「王道ファンタジー」


 この作品は一種の文字数稼ぎである。

 ショートショートならば文字数は少ない方が良いと賢明な読者諸君はそう考えるだろうが、しかし時には文字数稼ぎも必要なのである。

 故に本作品を読んでいて、露骨な文字数稼ぎが見られたならば、笑って流して欲しい。


 寝台の上で年端としはもいかぬ幼児が事切れていた。かたわらには彼の両親がさめざめと泣いていた。

寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけ! どうしてお前が死ぬ必要があった?」

「ああ寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけごめんなさい、お母さんを許して」

 寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけである。俗に言うキラキラネームと言う奴である、なるほど両親が子に死に至る命名をする為killer killerネームとはよく言った物である。

 この寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけ急患きゅうかんとして病院に運び込まれる筈だった。しかし寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけは諸々の手続きをしてから医者にて貰ったため、間に合わず事切れてしまったと……言う訳では厳密には違う。何せ病院だって体面があってプライドがある、万に一つも急患を受け入れて死んでしまったと言うのは病院としてはけたい事態なのだ。仮に寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけなんて名前を一々丁寧ていねいに読んだり呼んだりする訳も無く、その場合は患者Aと呼んだりするだろう。読めない名前であったもそうだ、繰り返すが決して寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけと、一々長い名前を呼びあげるために施術が遅れ、手遅れになったと言う訳では無い。

 とにかく、急患の受け入れとはシビアなのである。電話で寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけなんて名前を聞いたら、リスクを感じ取って受け入れ拒否をする者も居るだろう。今回は不幸にも、そう言った現象が連続したのである。

 確かに長い名前は注目を集めるだろう、しかし長い名前は得てして後世の残らないのである。『寿限無寿限無じゅげむじゅげむ五劫ごごう回砂利水魚かいじゃりすいぎょ水行末すいぎょうまつ雲来松うんらいまつ風来松ふうらいまつところところやぶ柑子こうじのぶら小路こうじパイポパイポシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命ちょうきゅうめい長介ちょうすけ』はまだ良い『パブロ・ディエーゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ』しかり『自分以外の全員が犠牲ぎせいになった難破なんぱで岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという体がの河口近くの無人島で二十八年もたった一人で暮らし、最期には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯しょうがいと不思議でおどろきに冒険についての記述』然り、例え後世に名を残せたとしても、フルネームを覚えていない者が大半の名前、略称しか知らない者が大半の名前になると言えよう。

 何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人のかならずある事なりとぞ。とは徒然草つれづれぐさの言葉だが、古今東西長い名前に魅力を感じるのは人間の一種の性質なのかも知れない。


 寝台の上で年端としはもいかぬ幼児が事切れていた。かたわらには彼の両親がさめざめと泣いていた。

 彼女の名前は富野とみの地球マーキュリー、彼女は急患きゅうかんとして病院に運び込まれる筈だった。しかし富野地球マーキュリーは諸々の手続きをしてから医者に診て貰ったため、間に合わず事切れてしまったと……言う訳では厳密には違う。何せ病院だって体面があってプライドがある、万に一つも急患を受け入れて死んでしまったと言うのは病院としては避けたい事態なのだ。仮に富野地球マーキュリーなんて名前を一々丁寧ていねいに間違えずに読んだり呼んだりする訳も無く、その場合は患者Aと呼んだりするだろう。繰り返すが決して、富野地球マーキュリーなんて難解で難読な名前が原因で、手違いやとどこおりがあって施術が遅れて手遅れになったと言う訳では無い。

 とにかく、急患の受け入れとはシビアなのである。電話で富野地球マーキュリーなんて名前を聞いたら、リスクを感じ取って受け入れ拒否をする者も居るだろう。今回は不幸にも、そう言った現象が連続したのである。

 人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。徒然草にもそう書いてある。

 時に、フランスやドイツには、聖典にある名前しか命名してはいけないと言う法律がある。なるほど、聖典に載っている名前ならば、誰もが知っているし読めるだろう。ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスと言った名前を命名する事もあるかも知れないが、これは元々親族の名前を拝借はいしゃくしたのであって一つの名前で無い為、問題は無い。

 仮に日本にこの法律が施行されたら、どの様になるだろうか? 聖典の定義にもよるが、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ誉津別命ほむつわけのみことと言った名前が流行するだろうか? そう言った名前が自然と読める様な風潮ふうちょうになるのだろうか?

 こればっかりは、神のみぞ知ると言う物である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る