国民所得と機械化のハードル、輸送車両の性能

 機械化しようにも農家が買えなければ無意味なのだが、満州事変前、1930年時点で就業者のほぼ半分(49.7%)を占める一次産業従事者の所得を調べると絶望しかない。


 娘の身売りや515事件の起きた32年時の農家の平均年収は723円。


 大卒初任給が銀行70円、省庁80円の時なのでほぼ8割と見てよい。


 23年現在の初任給は228,500円なので約3千倍。


 当時の大学進学率は5%もなかったので全体の所得は下がる。


 問題なのは同年の農家の借金が840円と上記事変、事件が起こるのも当然な経済状況である。


 前年に登場したツバサ型オート三輪は870円、ダットサンは1150円だった。


 ダットサンは兎も角オート三輪は横転しやすい欠点はあったが、戦後林業他に活躍した。


 しかし登場する時期が悪い。


 土地を借り農産物の収益から借地代を払う小作人には重量ベースで人の十倍の水と秣を消費する馬を買う(誤字に非ず)事すら不可能なので農機の自弁購入は不可能。


 30年は豊作貧乏で、キャベツを20個売ってもゴールデンバット1箱(7銭=210円、カートンではない!)すら買えなかったのだ。


 戦前のトラクターの価格はわからないが、現代でも稲作用トラクターはヘッドガード、エアコン、ラジオ付きで4千万円する。


 エアコンは当時の技術では車載出来ないので扇風機に変更。


 ラジオ(30年当時100円)をオミットしても家※1より高いので戦前は推して知るべしである。


 尚国産第一号の耕運機及びトラクターはヤンマーがそれぞれ31、37年に完成させている。


 大量生産が進んだ現在、ヤンマーが販売している乗用型耕耘機は本体価格平均100万強。


 アタッチメント(25万強)やトレーラー(10万弱)込みでも140万円台とトラクターより安いのでヤンマー耕耘機で機械化を目指すのが時期的にギリギリだろう。


 上記耕運機の価格は乗用車の4割、30年頃なら460円程度か。


 農機は稼働日数が少ないので、全国を桜前線や紅葉前線のように北上南下しながらリース形式で現地の農家に貸し出すのがベターと書きたかったが舗装に30年は必要でフォッサマグナ辺りで地質が異なるので個々で買うしかない。


 金本位から管理通貨制度に移行して予算を確保。


 農機具供与はアカと名指しされ弾圧されかねないので石原莞爾と岸信介、甘粕正彦等と協力して鉄と石油の採れる満洲に農機工場を建設。


 掘削、精製技術は親日のシェル石油が持っているので大慶油田が見つかっていれば良かったのだが。


 山東省沿岸の勝利油田は中国に返還している為扱いが難しい。


 海軍の水、石油事件は39年だが予算を引っ張って来れるだろう。


 耕運機トレーラーその他の要目は、

         自重  積載量 速度

 三九式輜重車  157.5㎏ 212.5  4.5㎞/h

 駄載(自重は固定具)37 最大96   同上

 リヤカー(二輪牽引)40   120  25

 リヤカー(自動車牽引)   310  40

 耕運機トレーラー150   500  不明

 オート三輪   不明   500  40

 九四式被牽引車 不明   750  30

 〃6輪自動貨車  3500  1500  40

 (仏)木製車輪           7

 (仏)ゴムタイヤ換装のみ     15

 九六式十五糎榴弾砲       24

(木製ホイールゴムタイヤ)   


 原付は1馬力前後で同じ出力の耕運機は軽量化が進んだ現代でも数十坪の家庭菜園が限界。


 農機より10㎞/h速いが農作業に使えず積載量も減るしそもそも市場が異なる。


 1947年に登場したホンダA型(自転車補助エンジン)は小学校教員の給与が2000円の時代16,000円もした。


 半年間で1430万円、約900台売り上げたとあるが生産性は後続シリーズより1桁低く、スーパーカブの1/200にも満たなかった。


 33年の新卒教員の給与は46円30銭なので約370円。


 日中戦争前の馬の卸値は80円と維持費を考えなければ馬の方が安いが自転車(30年時45〜70円)より高かった。


 日中戦争後、軍馬需要で高騰した卸値が350円からなので軍事的に漸く駄馬を代替出来るかと言った所(自転車は40年時90円の為総計460円)


 これでも35年に登場したダットサン(1650円)や36年に登場した乗用車、トヨダAA型(3350円)より遥かに安い。


 尚58年に登場し、月産3万台のスーパーカブが販売後8年経っても通勤に使えるのは小金持ちで、60年の大卒初任給が1万3千円の時小売価格5万5千円(58年から65年まで据え置き)


 自転車が通勤の足として一般的だったのはこの頃までである。


 ※1……23年現在の注文住宅の平均価格は3523万円。


『魚雷一本一万円、家一軒の値段』と言われた給与と住宅価格の比率は今も昔も変わらないようだ。


 参考サイト


 ホンダA型


 https://www.autoby.jp/_ct/17461895


 トヨダAA型


 https://gazoo.com/column/daily/21/02/26/


 馬

 https://towakomyu.com/2019/01/23/%E5%8D%81%E5%92%8C%E7%94%B0%E5%B8%82%E3%81%A8%E9%A6%AC%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E2%91%A4/


 昭和の年表


 https://showakan.jp/about/showa-chronology/


 自転車の価格帯


 https://d-arch.ide.go.jp/je_archive/society/another_win/unu_jpn40_p026_z01.html

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