<計画> 2

毎週日曜日の午前中、

俺は時間をかけて部屋の掃除をしていた。

日頃から綺麗にしておくことにより、

母が掃除を理由に

部屋へ入ることを防ぐのが目的だ。


机の引き出しの中の現金は

鍵をかけているので見つかる心配はなかったが、

例の物はいまだにベッドの下にあった。

早く処分をしなければと思いながらも、

それは地縛霊のようにこの部屋に留まっていた。


この日は両親が朝から外出していたので、

俺は昼食に炒飯を作って食べた。

一人暮らしは長かったので、

料理の腕には自信があった。

食後にコーヒーを淹れて俺は部屋に戻った。

そして紅葉から聞き出した情報について

もう一度考えた。


白髪のオールバックの男は

伊達孝允(だて たかよし)

年齢は紅葉の見立てでは五十代。

若い頃に怪我をして左目が義眼だった。

その義眼を隠すために

サングラスをかけているようだ。

受け持ちのクラスは三年二組。


黒いサングラスの男は

織田隆盛(おだ たかもり)

特徴的なのはそのパンチパーマだ。

そして黒いサングラスに口髭という

堅気の人間に見えないその風貌は、

俺も何度か学校で目撃したことがあり

印象に残っている。

歳は三十代半ばくらいか。

受け持ちのクラスは一年一組。


前田利通(まえだ としみち)は口髭の男。

彼は用務員としてこの学校で働いていた。

紅葉曰く六十代前半。

坊主頭のその男を俺はまだ見たことがなかった。


三人ともそれぞれに目立つ特徴がある。

今年になって転校してきた俺は兎も角、

茜は三人を知っているはずだ。

にもかかわらず茜は男を見たことがないと言った。

そこが引っかかった。


俺は頭を振って

机の上の六年三組の連絡簿に目を落とした。

連絡簿にはクラス全員の住所と電話番号が

載っていた。

それと当然に

担任であるナカマイ先生の住所と電話番号、

ご丁寧に校長の住所と電話番号までもが

書かれていた。

この時代、

個人情報などという言葉は存在こそすれど、

それを気にする人はいなかった。

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