404.魅了の上書き〜教皇side
「貴女達聖獣は何故……」
そう言いかけて、止める。
この奥方は先代の聖獣ドラゴレナではない。
残された種から生まれた別の魔獣だ。
そんな旧友の奥方に契約者から下に見られがながらも、何故この国を護ってきたのかと尋ねたところで、私が返る答えに納得できるとは思えない。
「元ロブール夫人は誰に討伐されたのです?」
「さあ?」
代わりに気になっていた事を尋ねるも、奥方は首を傾げる。
「そうですか」
その様子からは本当に知らないのか、知っていて黙っているのかを判断できず、苦笑してしまう。
元夫人はあの槍を体に刺したまま、あの場から消えた。
だから私が旧友の魔法で地下から食堂に1人転移し、神官達の衝撃的な痴態を目撃した後も、どこにいるのかを把握できていた。
その槍が数日して、突如消えた感覚がした。
そして先週、元夫人をチェリア家の墓地に埋葬する届けを確認した。
恐らく槍が消えた日に、討伐されていたのだろう。
討伐したのが誰であっても、聖獣の契約者である姫様でなければ、元夫人の魂は悪魔に食われて消滅したはず。
先々代の王妃、スリアーダのように。
余談だが、私は悪魔の力を取りこんで強化した魅了の魔力を、神官達に少なからず蓄積させていた。
いつでも思い通りに手早く操る為だ。
更に神官達が一種の麻薬のように、私の姿を無意識に欲し、私から離れ難くさせる目論見もあった。
しかし私の魔力を介し、悪魔の力を神官達にまで蓄積させていたとは。
つい最近、その話を他の奥方から聞かされて愕然とした。
下手をすれば神官達の魂が悪魔に食われていたかもしれない。
奥方の話では、姫様が聖獣達から魔力を借り、姫様が魔力に魅了の力を含ませ、神官達に浴びせて上書きし、悪魔の力ごと私の魅了を滅してくれていたらしい。
公女として生まれ変わった姫様は、噂されていたような魔力の少ない、魔法もまともに使えない、無才無能公女ではなかった。
だから仕方ない。
教会の大食堂に転移した私は、まずベロベロに酔って何かを崇めるように膝を床について拝んだり、ひれ伏す神官達を目撃した。
彼らの視線の先には、今の姫様の兄と一国の王子。
何故か上半身が裸だ。
2人の美男子達は机の上で絵画のモデルのように、種々のポージングを決めていく。
陶酔したような、色気を含む表情だった。
2人がどこかを見つめている事に気づき、視線を追うと、ニコニコと年頃の少女らしい微笑みを浮かべる姫様がいた。
姫様もどこかうっとりと見つめ返していたが、どことなく変態臭……いや、何でもない。
普通に愛らしかった。
片手に5色の光沢を放つ白藍色の球、もう片手には赤子を包むおくるみに、赤い鷲の子供を入れていた。
その布には、東方の国の平服……確かキモノとかいう服だったが、それが散乱する中、体の線が出てしまうくらいに薄着となった、ずぶ濡れの黒髪の女性が倒れていた。
先程まで旧友によって目に焼きつけてしまった、亀甲縛りなる状態の絵が……。
姫様ご乱心……いや、何でもない。
※※後書き※※
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
フォロー、レビュー、応援、コメントにいつも励まされています。
№311でヘインズに描かせていたイラストがリアちゃんが喜びそうな【大奥乱デ舞+亀甲縛り】おくるみ限定イラストでした(*゚∀゚)
おくるみの事をすっかり忘れてしまうところで危なかった。
そしてミハイルが神殿の食堂で途中から失くした記憶が、今話のモデルです。
彼的には思い出さない方が平和です(´∀`*)ウフフ
明日、閑話的なお話を投稿して本章は終わりとなります。
起承転結の起と結しか思い浮かばず、見切り発車で今章を書き始めましたが、何とか終わって良かったとほっとしております。
次章までまた少しお時間いただくと思いますが、お待ちいただけると幸いですm(_ _)m
恐らく今章の時ほどは間が開く事はないと思いますが、まずは中途半端にしている別作品をきりの良い所まで更新させつつ、次章はベルジャンヌだった頃の話を具体的に入れていきたいので、少しプロット練ってからかなと考えております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます