89.静止画は動画に、ツンはデレに
「あつつつ」
なんて言いながら、まずは炙っていたお肉は串についた土を洗浄してから葉っぱ皿にまとめて入れるわ。
「うーん、良い香り!」
程よく脂が下に落ちていい感じだし、何よりこの蟹本来の香りがたまらない!
本来の蟹とはかけ離れた生き物だったけど、そこは気にしないわ。
振りかけたハーブの香りが残った土の香りを無事消してくれたみたいね。
ハーブ独自の爽やかな清涼感のある香りとマッチして……香りだけでご飯を美味しくいただけちゃう。
はっ、ダメダメ。
次を焼かなくちゃ。
殻のお盆の上にでも置いて、ついでで作った葉っぱ蓋を被せておきましょう。
そして鞄からトングを取り出しつつ片手で網を持ち上げて、出したトングでパチパチしている炭を石の中に移動させる。
網を戻して1度うちわで風を送って様子を確かめるわ。
バッチリね!
さあ!
今から炭火焼き祭りよ!
焼いて、焼いて、焼きまく……。
「おい、俺達の物を用意しているんだろうな?」
「まあまあ?」
……今度は何かしら?
そろそろ邪魔になってきたわ。
可愛いお孫ちゃんや頼りになる若者達に振る舞う調理を邪魔するなら、流石にお婆ちゃん、怒っちゃうわよ。
言わずもがな、突然投げかけられた声はバックに金髪組を従えた、とっても上から目線な家格君達ね。
静止画は動画になったみたい。
でも……あらあら?
見れば1人1つずつ、格子状に切れたお肉と葉っぱの乗った殻をお盆のようにして運んできているわ。
ローレン君がこちらをチラ見しながらテントの方に向かっているから、サブリーダーの彼がお願いしたのね。
働かるざる者食うべからずだもの。
これくらいはしないと、優しいお婆ちゃんも1日一切れしか食べさせてあげないわよ。
「同じ物で良ければ?」
「ふん、不味かったら他の物を作れ」
「あらあら、ふふふふ、楽しみにしていてちょうだいな」
いくらか雰囲気の
私もお手伝いする子供には優しくするし、ちゃんと美味しいと言わせてみせるわ。
反抗期な子のツンデレも可愛らしいのよ。
ついついデフォルトの微笑みが崩れてしまったわ。
「それじゃあ、それはそこに置いてちょうだい」
「「「・・・・」」」
まあまあ、どうしたのかしら?
何故だが再びの静止画?
でも今度は皆頬を赤らめてぼうっとしているわ。
これはこれで怖いわね。
静止画の呪いなんて物がこの世界にあったかしら?
ひとまず声かけをして、反応が無ければ念の為、聖属性と言われる特殊属性の浄化魔法でもかけてみる?
「……ふん、魔力が低いと手際が悪いな。
火魔法で炙ればすぐに終わるだろう」
あらあら、呪いは解呪されたのね。
良かった。
口では文句を言いつつもちゃんと指示に従って動き始めたわ。
お顔は相変わらず赤らんでいるけれど、これは反抗期特有のツンデレのツンがデレになったのかしら。
前世の息子達もこんな風に可愛らしいツンからのデレを期間限定で披露したのを思い出すわ。
「炭で焼いていらっしゃるの、ですか?」
なんて思いつつも、前世主婦だった私の手元は既に動いているのよ。
「ええ。
あなた達、お料理はした事ありまして?」
これまでの口調を改めるのに些か失敗したのかしらね?
金髪ちゃんが言葉を不自然に切りながら話しかけてきたから、答えるついでに腕前を聞いてみたのだけれど……。
「ふん、俺がする必要はない」
「全く……」
男性2人は予想通りね。
「その、討伐訓練中に。
ですが……保存食をいくらか温める程度で……」
「そうなのね。
きん、コホン、マイティカーナ嬢はよろしければこちらを手伝っていただけて?」
うっかり金髪ちゃんて言いそうだったわね。
危ない、危ない。
それより金髪ちゃんは何だか急にモジモジし始めたわ。
どうしたのかしら?
公女で侯爵令嬢よりも立場が上だから怖がられているの?
でもお顔が真っ赤になってきているのはどうして?
「その、私でよろしければ」
「そう、助かるわ」
ひとまず安心させるように微笑んでみれば、まあまあ?
何故そんなに残念そうな、どこか物欲しそうな目で見つめ返されるのかしら?
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お知らせ
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いつもご覧いただきありがとうございます。
応援やレビューには日々感謝しています。
明日からしばらく午前中投稿から昼頃投稿に変わります。
お休み中だった下の作品を明日から投稿再開します。
明後日までは午前と午後の1日2話投稿する予定です。
ご覧いただいている方がいるようなのでこちらの作品からもお知らせします。
【秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ】
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