80.ムカデの捌き方

<前書き>


タイトル通り、ムカデを捌きます。

グロい表現は作者的には無し、蟹の捌き方風に書いていますが、そもそもムカデ気持ち悪!!と思われる方は読まずに飛ばして下さい。

ほぼ捌いてるだけの内容です。








ーーーーーーーーー


「ローレン君、公子、運んでもらえるかしら?」

「はい!」

「ふん」


 素直なお返事のローレン君は爽やかね。

このまま真っ直ぐに成長して欲しいわ。


 家格君は相変わらずの反抗期ね。

もちろん本人が悪いわけじゃないわ。

ホルモンの為せる技よ。


 この2人はあちらで転がったムカデを少し離れたこちらの草に置いていく作業担当なの。


 まあまあ、あちらの穴の中からは足のついた四角い物体が飛んできて、草にバウンドしながら転がり始めたわ。

説明を急ぎましょうか。


 ムカデの節は全部で20くらいだったと思うわ。

半分ほどこちらに運び終えたら、2人が手分けして脚と脇腹部分の殻を切り落とす作業をするの。

先に試しでやってもらいましょうね。


 ムカデは節毎に切断しても縦1メートル、横2メートル弱、厚みが腕の長さくらいあるわ。

断面から見ても殻はとっても分厚いし、焦げるまで熱してやっと殻と身が剥がれやすくなるの。

真っ黒焦げでも原形はしっかり保てているくらい硬度が硬いのよね。

脚は太さも長さもガタイの良いラルフ君の腕の2倍はあるかしら。


 つまりとっても重いの。


 もちろん1人で狩りをする時は魔法でパパッと処理するのだけれど、今は人目があるわ。

何より、大人数キャンプの醍醐味は皆で共同作業でしょう。


 ふふふ、男手に頼らないとね。


 2人共身体強化魔法は使えるから腰は痛めないはずよ。

前世で86才まで生きるとわかるわ。


 腰って、生きる上でとっても大切。


「脚のつけ根から切り落として、落とした脚はつけ根から1つ目の関節でまた切り落として。

脇は殻と身の境部分を切断ね。

脚先と脇は捨てるから、後で他の殻と一緒にあの穴に埋めちゃいましょう。

物がたくさんあるから、魔法を使った方が早いわ」


 そう言うとローレン君が早速風の魔法で1対の脚と脇を切り落としてくれたわ。


 うちのサブリーダーは火属性の魔法が得意だけれど、風属性の魔法も使えるのよ。

殻はしっかり焼いているから、魔力の消費は小さいはず。


「脚は帰ってから処理しましょう。

ローレン君の収納魔鞄マジックバックに入れてくれる?」

「もちろんです」


 早速ローレン君は1週間分くらいの荷物が入りそうなボストンバッグに切った脚を詰めてくれたわ。

殻つきのムカデならもう1匹分くらいは入る大容量タイプよ。

それに状態保存の効果もあるの。


 流石商家の息子さんね。

値が張るのよ、あの鞄。


 亜空間収納と比べると劣るけれど、マジックバックも本当に便利。


 亜空間収納は高位魔法に当たるらしくて人目があると使えないの。

ほら、私って魔力の低い無才無能な公女でしょ。


 魔力が無くてもたくさん収納できるのは鞄の方だから、人目のあるこういう場面ではいいのよね。


 自分でも作れるし、隠し財産はあるからもちろん買えるわ。

けれど物が高額商品だから今の私が持つと目立っちゃうの。


 だってローレン君のあの鞄だけで高位貴族の一生に1度の宝石付きのお高いウエディングドレスが何着か買える代物よ。


 早く魔法具科の授業で作るようになりたいわ。

そうしたら堂々と持ち歩いても言い訳できるじゃない?


「それじゃあ、お願いね」

「はい!」

「ふん」


 2人は身体強化しながらあちらへ向かったわ。


「さあさ、私達もやりましょうか」

「はい!」


 まあまあ、素直な女子はなんて可愛いらしいの!

これが前世で聞いた事があるキラキラ女子というやつかしら?


 鞄から取り出して腰に装着していた短刀をローレン君が脚を切断した胴体の身と殻の間に突き刺す。

殻は成人男性の手首から先くらいあって分厚いし、腹側には食べられない部分もあるわ。

中身は半分くらいになるのよ。


 そのまま殻に沿って刃を滑らせ、まずは四方を剥がすわ。


「腹側は黒くなった部分と身の間を、私がしたのと同じように切り込んで。

多少身がそちらに残っても構わないわ」

「は、はい」


 声をかけると同じように短刀を手にした、少し緊張気味な眼鏡女子も反対側を真似る。


「捌くのが上手になったわね」

「あ、ありがとうございます」


 ……照れる女子、たまらん。


 はっ、いけない!

前世のおばちゃん時代の感覚に支配されていたわ。


 涎、出ていないわよね?!


 四隅を剥がしたら、立たせて私は背中側、カルティカちゃんは腹側の殻を手に持つよう指示する。


 ふふふ、ムカデ捌きの醍醐味の瞬間よ。

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