39.コントだわ、お庭に集合
『も、もう1度仰っ、ふっ、いただける?
あはは、この中庭、人気が、くふふ、ない程、あは、声が響きます、の。
ほらまだ残っている、が、学生がお顔をの、覗かせてましてよ』
一気に顔色を悪くするお子ちゃま達。
そう、やはりわかっていたのだと確信してしまったわ。
大方、次期生徒会長としての初仕事に張り切って作っただろう予算編成を大きく手直しされてプライドが傷つけられたんでしょう。
例年と違う箇所なんてうちのクラスしかないもの。
シエナをわざわざ連れているのは自分の婚約者に相応しいのはシエナだと言いたいから、かしら?
『はー、コントはここまでですわ』
『何だと!
お前は王族たる私を愚弄するのか!』
『あらあら。
婚約者である私とのちょっとしたお戯れのおつもり、ですわよね?』
『この無才無能が!
お前などが私の婚約者を名乗るな!』
『お義姉様!
ロブール公爵家の恥を曝すお義姉様がシュア様の婚約者を名乗るなど……』
『黙りなさい』
『『……っ』』
流石に醜態も過ぎていたの。
仕方ないから軽く威圧を込めて黙らせる。
淑女の微笑みを消して能面風にしただけ、なのだけれど。
『生徒会の編成する学園内の予算に生徒の生家の権力を学園が許したとは、どういう意味です?
そして何の権限もないはずの子女が、仮にも四公と呼ばれるロブール家の権力を傘に着る。
それを現当主や次期当主が許したとは、どういう意味です?
それをこの観衆の目の中で声高々に仰られるならば、その責任は誰が負うと?』
すっと目を細めればたじろぐお子ちゃま達。
孫に乗せられただろうお馬鹿ちゃん達も、顔色が青くなったから状況を理解したわね?
『ロベニア国第2王子殿下、ならびに四大公爵家の第2子以降の面々が揃ってロブール公爵家次子にして、第1公女たる
冷たく見据えた上で、淑女の顔に戻す。
あらあら、従妹で義妹のシエナってば、本来の自分の立ち位置を自覚したのか青いお顔が今度は赤くなって憤怒の形相ね。
まあ今は誰もあなたのお顔は見ていないから良いけれど。
『ふふふ、まさか立場のあるあなた方が学園や我がロブール公爵家を貶めているとは思いませんわ。
だとすれば、婚約者としてのお戯れでしょう?
ね、ジョシュア=ロベニア第2王子殿下?』
『……そうだ。
そろそろ失礼する、婚約者殿』
ぐっと唇を噛みしめてその場を真っ先に後にする。
私を睨みつけていたシエナも含めた他のメンバーもそれに続いた。
なんて事が先々月の年度末にあったのよね。
それも含めて楽しめた1年生だったわ。
聖獣ちゃんと愉快な仲間達はぷりぷり怒ってたけれど。
この後で聖獣ちゃん達がもう四公達の誰にも守護は与えないって言い出して困っちゃったのも良い思い出よ。
彼らはその後、帰宅先のお庭やお部屋で落とし穴や局所的雷雨なんかのピンポイント災害に見舞われたとか、いないとか。
どこぞの従妹で義妹は帰宅して馬車から下りたところで小鳥達の糞がたまたま何羽分か頭に直撃して大絶叫したとか、しないとか。
どちらにしてもちびっ子王女の一件は予想外だけれど、私は全てにおいて陰に隠れて影を潜め続けるわ。
矢面に立つなんて真っ平よ。
能力なんて見せてたらそれこそ生徒会に入ったり、王子妃教育だったりしなきゃだもの。
最初から期待されていなければ、そもそも私に何かしらをさせようなんてしないわ。
そうする方が手間だものね。
むふふふ、無才無能万歳!
「それよりも明日よ、キャスちゃん!」
「2年生と4年生の魔獣討伐合同練習?」
「そう!
キャンプだよ!
キャンプだほいほいほい♪」
「うん、何その歌?」
テンションが上がって何となく口ずさんだ歌にキャスちゃんが反応する。
「さあ?
あっちの世界で聞いた事があるような、無いような歌ね」
「キャンプじゃなくて合同練習でしょ」
「私、魔力が少ない設定だから調理要員だもの。
捌いた魔獣肉でバーベキューよ!
キャンプ飯よ!
楽しみ!」
「そうだね。
明日は早いから、もう寝よう」
「そうね、そうよね。
さあ、いつも通り一緒に寝ましょう!」
「……はぁ、変態は嫌だからね」
「もちろん!」
良かったわ。
家庭内別居は回避できたみたいね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます