週末
週末は怜君と過ごしている。彼は夜更かしするタイプだ。俺は眠くて仕方がないが、同じ部屋で電気をつけているから寝られない。さっきおススメの曲を教えられたから、それを聞きながらこれを書いている。洋楽だけど全く知らない曲ばかりだ。病み系というらしい。暗い曲を聞いて一緒に落ち込むのが今の若い子のトレンドらしい。
俺は音楽はほとんどわからないが、病み系と聞くとなんとなくイメージが湧いて来る。
メジャーになる前のビリー・アイリッシュなんかが代表的な病み系ミュージシャンだったらしい。この人はグラミー賞を複数受賞しているだけでなく、音楽賞でオスカー、エミー賞、ゴールデングローブ賞も取っている。年齢はまだ21歳。才能があって羨ましいとしか言いようがない。
この人は色々な精神障害に悩まされているのだが、13歳の頃に腰に怪我をしてから、精神的に病んでしまったようだ。Wikipediaによると、顔面が痙攣するトゥレット障害、夜驚症や抑うつ、共感覚、聴覚情報処理障害があるそうだ。最近ネットニュースで読んだが十代の頃ポルノ依存症だったことも告白していた。
身近にいたらかなり危なっかしい人だが、今の若者の指向にぴったりはまっているようだ。こういう人がカッコいいという認識に変わりつつあるのではないかと思う。
話は変わって、YouTubeでよく聞かれている曲に「Overdose」というタイトルがある。この曲で歌われている薬が処方薬なのか、市販薬なのかはわからないが、ODが一部の若者にとってはファッションのようなものになっているようだ。この曲は薬物のように依存性のある愛を歌っているそうだが、曲を聴いただけでは何を言っているかよくわからなかった。てっきり、彼女と二人でODする歌だと思っていた。
しかし、今回、初めて歌詞を読んだらちょっと違った印象だった。ほんとうはダメだとわかりながらODをすることで現実逃避するカップルのことを歌っているようだ。曲に共感できないのは、多分俺にOD経験がないからなんだろう。
シンガーソングライター、なとり氏がその曲を書いた時はまだ十九歳くらいだったとか。ビリー・アイリッシュといい、この人といい、曲を書くのに年齢は関係ないようだ。
だが、才能があって、曲がヒットしていても本人が幸せとは限らない。ボカロPやボカロ曲を歌っている人たちは、病み系の人が多いらしく、すでに亡くなってしまった人もいる。現実でのやり場のない思いや苛立ちが彼らを作品に向かわせているのかもしれない。
ここ数日、目黒区の小学校で女の子二人がODをしたとニュースになっているが、怜君曰く「みんなやっている」そうだ。みんなということは決してないだろうし、彼がネットで会う人たちが病み系だからだと思うけど、小学生も珍しくない。今回は学校でやったからニュースになっているだけである。
それにしても、毎日楽しく学校に通っているような子がODなんかするんだろうか。若者の間で広がっているのは、単にファッションだからということより、彼らが学校や家庭にストレスを感じているのだと思う。暇だからやってみようという人はそんなにいない気がする。
じゃあ、周囲の人間はどうすればいいかというと、なかなか正解はないと思う。親世代の感覚でこうした方がいいとか、うち子どもはこんな風に思っていると想像しても、実際は噛み合っていないのだろうし、元々そうした関係を築けていないのだろう。
怜君も過去には一歩間違ったら、あの世に行ってしまっていたようなことがあった。最近、〇にたいと言わなくなったのは、周囲が彼を腫物を触るように扱って極力ストレスのない生活ができているからに他ならない。しかし、普通の子どもが現状から逃げるとしたら、家出するしかないわけで、外野が「逃げろ」とは言えない現実がある。
俺たちが子どもの頃は不登校の子はほとんどいなかったが、今は学年に1人はいるようだ。そのくらい子どもを取り巻く環境や、子ども自身の考え方も変わっているのだが、親世代がそれについていけていないのかもしれない。
眠くてまとまりがなくなって来たので、今日はこの辺で。
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