王宮の裁きの場に引き出されました

「はああああ! お腹減った」

減り過ぎて私のお腹はなりもしなかった。


元々牢獄は最初から食事は少なかった。

腐りかけたパンとか、半分腐ったシチューとか……


それが大使館の事務官を張り飛ばしてからは更に少なくなったのだ。


でも、あれは私は悪くない。あんなふうに言った事務官が悪いのだ。アドやヴァンの前であれ言ってたら絶対にあの大使館員は処刑されていた。殴ったくらい大目に見て欲しい。


なのに、食事が朝夜の二回だけになってしまったのだ。



そんな時だ。あのガマガエル商人が現れたのは。


「お前は」

私はブールセマを見て驚いた。


「何故お前が捕まっていないのよ。私達を襲わせた犯人なのに」

私は切れて言った。やはりこの国はどこかおかしい。


「ふんっ、愚か者よな。この世で金で解決できないものは無いのだよ」

ブールセマは笑って言ってくれたのだ。


この国はわいろで汚染されているのか。こんな奴をのさばらせておく訳にはいかない。私は余計な正義感に駆られてしまったのだ。もう少し自重すべきだった。


「そんな俺様に楯突くなんて本当に貴様は愚か者よな」

笑おうとしたガマガエルの顔を格子の隙間から蹴倒してやったのだ。


本当にすっきりした。悪は滅ぶべきなのだ。



でも、それからだ。


食事が更に少なくなったのだ。


一日一食、それも腐ったパンだけ。


まあ、私は魔の森で散々小さい時から特訓されているから、腐ったパンくらいでお腹が下痢になったりしないけれど。


そう後でメラニーに言ったら、本当にあなたの胃腸って鋼鉄の胃腸だったんだって感心されたけれど。

絶対に違うんだから。


でも、メラニーは遅い。連絡したのに!

やっぱりちゃんと伝わらなかったんだろうか?

あの御者に頼んだのが間違いだったかもしれない。


このままだと本当に飢え死にしてしまう。



こんな檻、魔術が使えたら一瞬で壊せるのに。

それに魔術が使えれば、メラニーに連絡するのもこの場でもすぐに出来たはずだ。


本当にあのくそ婆はムカつく。

私は腕輪を嵌めてくれた母に対する恨み言を呟いた。


それに怪我していたアドは大丈夫なんだろうか?


本当にアドはジェドと一緒で普通の人なのに、絶対にアドのあのボロボロの格好は母が酷いことをした結果に違いないのだ。


エルグランの未来の国王になんてことするんだ!


でも、それ考えたら私もエルグランの未来の王妃なんだけど……


まあ、帝国の皇帝の頭を燃やすくらいなのだ。母が気を使うわけ無いと思うけど。


この国の奴ら私をこんなひもじい思いをさせて絶対に許さない!

私は心に誓ったのだ。



「この国の奴らも本当に馬鹿よね。フランなんて、ちょっと豪勢な食べ物さえ与えておいたら、たとえ牢に閉じ込めておいても恩に着て、この国が危機に瀕したら、勝手に守ってくれたのに!」

後でメラニーが言ってくれたけど。牢に閉じ込められたら、いくら私でも恩に着ないわよ!


今は絶賛空腹中なのだ。


牢に草でも生えていたらそれ食べるのに……真っ暗な牢は何も生えていなかったのだ。


こんなんだったら娼館でもなんでも送ってくれて、そこでたらふく食べてから、その娼館を破壊して脱走すればいいかとも思ったが、食べさせてくれた娼館壊すのも悪いかもとも思ってしまった。

メラニーが聞けばやはり食い意地だけじゃないって言われそうだ。


なんかもう、食べられればどうでも良くなってきたんだけど……


そんな時だ。


「外に出ろ」

あの生意気な騎士がまたやってきたのだ。


「ほう、さすがの牢獄生活はつかれたのか」

私が素直に手錠をかけられるのを見て、男は喜んでいってくれた。


「お腹が減っただけよ。ここの牢って本当に食事が出ないのね」

「お前が大食漢なだけだろうが」

「そんなわ無いでしょう」

私がぐたっとして言うと、


「少し待て、今から裁きがあるんだ」

「もう裁きならば受けているわよ。食料を与えられない刑よ。本当にこの国は酷い国よね」

私はげんなりして言ってやったのだ。


「いや、だからそれは違うって。裁きが終わったら少し食べさせてやるからそれまで我慢しろ」

「本当に食べさせてくれるの?」

「お前がちゃんと裁きを受けたらだ」

男はそう言ってくれるんだけど。


それってしてもいない罪を認めて裁きを受けろってこと?

私はあんまり回らない頭で考えた。


「頼むから暴れないでくれよ」

「私を怒らせなかったらね」

私は投げやりに答えていた。


もうこの空腹には耐えられない。

認めたら食べさせてくれるんなら認めようかしら?

ぼんやりした頭で少しはそう考えるくらい空腹だったのだ。


広い場所に案内された。


前に裁判官らしきものが座っていた。


うーん、お腹が減って二重に見えるんだけど……

これは本当にまずい。


その上には貴賓席みたいなものが見える。


沢山の人がいるみたいだ。私はお腹を減らしてフラフラしていた。


なんか、観客席みたいなのもあってそこにはずらりと貴族たちが揃っているみたいだ。

皆ニヤニヤ笑って見ているみたいだった。


私はそんな中に見せ物宜しく、引き出されたのだった。


こんな姿を王妃様が見たら切れるかもしれない。散々嫌味言われて……騎士団にこの国に対して攻撃命令出しそう……

陛下が見ても。


いや、それよりもお父様が知ったら、こんな国、王宮諸共滅ぼしてしまいそうだし、アドとヴァンが知っても大変そうだ。


なんか私を見てみんな笑っているんだけど……


私はお腹の減って死にそうなのを、余計な事を考えて逸らしていたのだ。

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さて、そろそろ本番です。

果たしてフランは空腹に負けてしまうのか?

この続きは今夜更新予定です。

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