ドミノ倒しの要領ですべての校舎を倒してしまいました

ピーピーピーピー

新たな警報が鳴りだした時、私は最悪のボタンを押してしまったのを理解したのだ。


「あんたもね。ちょっと考えてからボタンは押しなさいよね」

後でメラニーにも散々叱られたんだけど。


この時はそれどころではなかったのだ。


目の前に巨大な魔力の塊がいきなり現れた。


それは金髪碧眼、王立学園の制服を着ていた。


そう、見た目は私そっくりだったのだ。


「あんたも馬鹿ね。こんなところに入れられるなんて。本当にどうしようもない子孫よね」

呆れ果てて言ってくれるんだけど、このお方は……


「さ、三代目」

外からジェドの怯え切った声がした。


「誰が三代目よ」

その手から金色のボールが放たれて窓枠に当たってはじけた、いや違う爆発したのだ。


ドカーーーーン


凄まじい爆発が起こる。


私はとっさに伏せた。


「三代目なんてダサい名前で呼ばないで。私にはアデライドという名前があるのよ」


「は、はああああ」

何故か扉の向こうで平伏しているジェドが想像できた。


「破壊公爵!」

思い出した。三代目だという事は私のご先祖様で、元々この反省房を作らせる元凶になったアデライド様。


別名が破壊公爵だったと思う。


彼女の通った後には廃墟しか残らなかったと歴史書に載っていたような。


「姉上、そんなこと言ったらだめだよ」

「そうよ、フラン、すぐに謝りなさい」

扉の向こうから必死に叫ぶ二人の声が聞こえるが、


「ふんっ、破壊女のあんたに言われたくないわよ」

あっさりと三代目に言われてしまったんだけど。

破壊公爵に言われたくない。


何しろ実験と称して校庭に巨大クレーターを作ったとか、初代国王陛下の銅像を倒したとか、王宮を破壊したとか三代目の破壊の記述は枚挙にいとまがないのだ。

訓練場を壊した私なんか可愛いものだ。

でも、それを言ってはいけない。

私が口にしっかりとチャックをした時だ。



「なんか碌でもないことを考えたわね」

三代目がにこりとしてくれたのだ。


これは目が笑っていない。絶対に禄でもないことだ。失敗した……


「これあげるわ」

三代目は、見た目はきれいな金のボールを私に向けて投げてくれたのだ。


思わず受け取りそうになって、さっき爆発したことを思い出した。


私はとっさに避ける。それは扉の窓を突き抜けて行った。



ドカーーーーン


遠くで爆発音がした。

「ギゃ」

それと多くの悲鳴が。


敵の中で炸裂してくれたと思いたい。


私の下のうちの騎士の連中は剣戟はもう一つだったが、逃げ足だけは早いのだ。


「ああら。私のボールを受け取らないなんてどういう事なのかしら」

「受け取れるわけないでしょ」

「あなたなら受け取れるでしょ。逃げるからこんなことになったんじゃない」

三代目の指さす方をちらりと見ると廊下の先の壁が無くなっていた。

避けてよかった。私はホッとしたのだ。


「まあ、良いわ。あんたに構っている時間もないし」

三代目はニコリとほほ笑んでくれた。不吉な笑みだ。絶対に何か悪だくみした顔だ。


「今度はちゃんと受け取りなさいよ」

絶対に受け取るものか! 私は決心したのだ。


「じゃあ、行くわよ」

三代目は私に向かって金のボールを投げてくれた。

当然私は避ける。


そのボールは壁に当たって爆発しなかった。

いや、跳ね返されたのだ。


それも何故かボールが二個に増えているんだけど……


「嘘!」

その二個のボールを避けると今度は壁に当たって倍の四個に増えているんだけど。


「えっ、ちょっと」

「まあ、精々頑張りなさい。私はやる事があるから」

そう言うと三代目は消えたのだ。


「ちょっと、このボール消していきなさいよ」

私の声は完全に無視された。


ボールはたまに何かに当たって爆発するんだけど、爆発しない限りどんどん増えていくんだけど……


ドカーーーーン

ドカーーーーン


たまに窓から外に出ていくし。

天窓突き破って外に出て行くものもあった。


遠くから爆発音がするももうそんなのは気に出来なかった。


何回かの爆発音の後、ついに壁が爆発音に耐えられなくて、吹っ飛んでいた。


そして、金のボールが解放されて、外に飛び出して行ったのだ。


「えっ、これってさすがに不味い!」

私は青くなった。


金のボールは留めておく壁が無くなったので、勢い良く飛び出して行ったのだ。


自由になれて良かったね……違う! 絶対にヤバい


ドカーン、ドカーン


辺り構わず爆発を始め、遠くの校庭でも逃げ惑う生徒達が見えた。


爆発は校舎の中でも起こっている。


私は唖然とそれを見ているしか無かった。


これは絶対にまずい奴では。でもやったのは三代目だ。でも、それを誰か信じてくれるだろうか?

私は冷や汗しか出なかった。


でも、やっと、最後の爆発が終わったと思った時だ。


どこかに残っていたのか、ポヨーンと最後の小さな1個が部屋から飛び出したのだ。それはゆっくりと中庭にそびえ立っている初代国王陛下の銅像に飛んでいった。そして、あろうことか初代国王陛下の銅像の顔に激突爆発したのだ。


「げっ、これって完全に不敬なんじゃない」

メラニーの叫び声がそばでする。


「いや、これは私じゃないわよ」

私は必死に言い訳した。


国王陛下の銅像はその前にあった校舎にぶつかって、校舎が倒れていく。


将棋倒しの要領だ。


次は男性陣の寮が倒れる。


その先にはAクラスらの入っている校舎にぶつかる。それも巻き込んで、最後は職員室のある校舎に倒れ込んだ。


凄まじい、大音響と共に、ドミノ倒しが終わると、そこには辺り一面の廃墟が広がっていた。



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