私ら襲い掛かってきた神父を返り討ちにしました
「ギャッ」
次の瞬間、ヴァネッサの胸にはナイフが突き刺さっていた。
「ヴァネッサ!」
私は一瞬何が起こったか判らなかった。
喉が詰まって苦しんでいる時に、ヴァネッサが何かしようとしたのは感じたのだ。
でも、私に悪いことをするわけは無いと思っていたのだ。
ヴァネッサがまさかナイフで私に襲い掛かって来ようとするなんて思ってもいなかった。
私には基本的に護りの魔術をかけてあって、私に対する攻撃には自動で反射してしまうのだ。だから私にナイフを突き刺そうとしたヴァネッサにナイフがそのまま突き刺さってしまったのだ。
「化け物め!」
横に、何故かいた神父がそう叫ぶと私に短剣を振りかざして突き刺そうとした。
「あんたなの! ヴァネッサを繰っていたのは」
私はその神父の男をナイフごと張り倒していた。
男は壁に激突するやそのまま地面に叩きつけられていた。
「ちょっと、ヴァネッサ、しっかりして」
男はほっておいて、慌ててヴァネッサに駆け寄ると抱き寄せた。
ヴァネッサは血まみれになっていた。
「フラン様、す、すみません」
「ううん、あなた、くられていただけでしょう」
「つ、罪は私だけに……い、妹と母さんだけは助けて」
ヴァネッサが必死に頼んできた。
「何言っているのよ。そんなの当然よ。あんたも助けるから」
私は怒り狂っていた。
「お前ら何奴だ」
扉の外で騎士の誰何する声が聞こえた。
そして、外で鈍い音がして、人の倒れる音がした。
「姉上、大丈夫?」
止まった窓から、ジェドが顔を出してくれた。
「遅いわよ、ジェド!」
私は叫んでいた。
「遅いって、姉上、王子とハレンチな事をして反省房に入れられたのは姉上じゃあないか? 俺に相談もなしに、サマーパーティーの前に、メラニー先輩のところに転移してくる事になってたでしょ。でも、中々来ないからってメラニー先輩から連絡が来て、慌てて来たんじゃないか。これでも早い方だよ」
ジェドは文句を言ってきた。
「何言ってるのよ。今はそれどころじゃないわ。ヴァネッサが大怪我しているの。直ぐにピンク頭を連れてきて!」
「えっ、聖女を連れて来るの? でも、聖女を言うことを聞かせられるヴァンも、もう会場に入っているし、そこに連れて行った方が早いんじゃ無い?」
「それなら、早くこの扉を開けてよ」
私は閉じたままの扉を叩いた。
「いや、でも、開かないんだけど」
「何かロックがかかっているんじゃ無いですか?」
ジェドの後ろからもうちの騎士のモーリスが調べて言ってくれた。
「何とかできない?」
「姉上の魔術で何とかならないの?」
「うーん、やってやれないことはないけれど、下手したらこの建物壊してしまうけれど、それで良い?」
「それはさすがに不味いんじゃない」
ジェドが慌てて言う。
「参ったな、そろそろサマーパーティーも始まってしまうけれど」
「陛下らは大丈夫なの?」
「とりあえず、中央騎士団と近衛騎士団は待機しているけれど、明日王宮で決起するという情報もあって対処が別れているんだよね」
「私を殺そうとしたんだよ。絶対にこっちよ」
「えっ、姉上、殺されそうになったの?」
ジェドが慌てて聞いてきた。
「だからヴァネッサが怪我したのか」
「ちよっと、私がやったんじゃないわよ」
そう、反射なのだ。
後ろのモーリスは疑わしそうにしているんだけど。
でも、このままじゃ、ヴァネッサが死んでしまう。
「大変です。敵と思しき所属不明の騎士たちが下から大量に上がって来たみたいです」
外から一人の騎士が駆け込んできた。
「中央騎士団は学園の周りを固めて入れなくしたんじゃないのか? 何処から現れたんだ」
「わかりません」
ジェドと騎士たちが言い争っていた。
「やむを得ないわ。あんた達下がって」
私はジェドたちに指示した。
扉に魔術を流せば開けられるだろう。
私は取っ手を掴むと魔術を流したのだった。
ある程度流したと思う。
でも、扉はびくともしなかった。
そして、代わりに
ジリリリリリリリリ……
いきなり非常ベルが所構わず、耳をつんざく大音量で鳴り出したのだった。
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