転移していたことがバレて延々とお説教され、果ては1日絶食を言い渡されました
私は反省房から私がいなくなっているのを、知られたなんて思ってもいなかったのだ。
メラニーの所から、のほほんと転移してきた。
しかし、何故か転移してきた反省房の中には人がたくさんいたのだ。
「えっ?」
「「「ギャッ」」」
私は多くの者を下敷きにして無事に着地できた。
ちょっとちょっと、お母さま、天井井付近に転移させるってまずいんじゃない! 下手したら落ちた時に怪我していたかもしれないじゃない!
私は下に人がいて助かったと思ってしまったのだ。
私はクッションにした人が誰かよく知りもしなかった。
「おい、暴虐女。さっさと上からどけ」
その声は、公国の息子だ。
今回の黒幕の一人か。よくやった私と自分を褒めていた。まだ、事の重大さを理解していなかった。
私は降りる時に
「いて!」
その息子の頭を軽く蹴とばしてやった。
ふ、ふん
ザマアみろ!
余計なことを色々とするからだ。
しかし、私は判っていないというか、私がその上で踏みつけていたのが誰だかしらなかったのだ……
「フランソワーズさん」
私は地獄の閻魔大王もかくやというほどの地獄のそこから響くような低い声を聞いた。
「えっ?」
不吉な予感がして私は今迄下敷きにしていた者を見た。
あれれ、この人はドレスを着ている。まあ、学園内だから簡易な物だけど、でもこの色は見たことがある。
や、ヤバい!
いや、絶対に間違いであってほしい……
私は期待したのだ。でも、女性教員はそんなにたくさんいない。
その女の人はゆっくりと顔をあげてくれた。
私は最悪な事が起こったことを悟ったのだ。
これは最悪だ。
そこには怒り狂ったフェリシー先生がいたのだ。
これなら、大公達を下敷きにした方が余程ましだった。
アルメリアの国王の前に飛び出した時も、海賊退治に行く時も、怒り狂ったフェンリルを前にした時もこんな恐怖は感じなかった。
何故こうなる?
それも怒り狂ったフェリシー先生を下敷きにして、立ち上がるときに踏み台にしてしまった。私の足跡がフェリシー先生の服にはっきりと残っていた。
や、ヤバい!
私の横にはニヤニヤ笑っているカミーユが立っていた。馬鹿めと顔が言っていた。
こいつ、他人事だと思ってくれて!
私は瞬時にグイっとカミーユを掴むとフェリシー先生の前に突き出したのだ。
「えっ」
カミーユが慌てた。しかし、遅いのだ。
『フランソワーズさん!』
反省房の中にフェリシー先生の凄まじい怒声が響いた。房内に衝撃が走る。房内が確かに揺れたのだ……
衝撃を伴った凄まじい声だ。
まともに受けたカミーユは両手を耳に当てて、蒼白となっている。
良かった、直撃は避けられた。
私はほっとした。
昔、同じように、怒り狂った人はフェリシー先生の怒声の直撃を受けた時は一時間程完全に動けなくなった。
私は私の盾となったカミーユを離すと、カミーユはバタリとそのまま、倒れ込んでしまった。
ふふふ、人のことを笑うからだ。そのまま倒れていればよい。
しかし、盾がなくなった途端に、フェリシー先生との間を遮るものが無くなったのも事実だ。
もう少し持っていれば良かった。
眼の前には怒り狂ったフェリシー先生がいたのだ。
「フランソワーズさん、これはどう言うことですか? 私はこの反省房でじっくり反省するようにと指示したと思うのですが。それをあろうことか魔術を使って抜け出すなんてどういうことなんです。あなたはやって良いことと悪いことの区別もつかないのですか……」
そこから怒涛のフェリシー先生のお説教が始まったのだ。
こうなったら止まらない。
私は延々と怒られ続けたのだ。
何故か一緒にいた騎士たちも大公の息子も直立不動で聞いていた。おそらく、先生の怒涛の勢いにのまれてしまったのだ。
ふふん、ざまあみろと思ったのは秘密だ。
まあ、私にとってフェリシー先生に怒られるのは小さい時からのお約束で慣れているが、騎士らにとっては大変だったろうと思う。カミーユは何故か気絶したまま、起きなかったけれど。
「フランソワーズさん。その手に持っているのは何ですか」
数時間怒られて夜も更けてきた頃、やっとお小言も終わろうとした時だ。
フェリシー先生が、目ざとくメラニーがくれた乾パンを目にしてくれたのだ。無視してくれたら良かったのに。隠さなかった私も悪い。でも、隠す暇なんて何処にもなかったのだ……
「えっ、先生これは……」
「どう見てもお菓子ですよね」
「いえ、違います。災害の時に使うもので」
私はなんとか言い逃れようとした。
「どう見ても食べ物に見えますが。」
「いえ、先生、非常食で」
私は精一杯抵抗した。
「非常食であろうが、お菓子であろうが、食べ物の反省房に持ち込み禁止です」
その一言でフェリシー先生は私の命綱のお菓子を取り上げてくれたのだ。
「先生、そんな! あんな、不味いご飯食べられないです」
私は泣きそうになって言った。だってパンは絶対に腐リかけだし、スープは腐っている。
しかし、私は言葉を間違えてしまったのだ。
「な、なんてすって!」
フェリシー先生は私の言葉に、激昂したのだ。
「ここの食事は確かに今までの行いを反省するように量は少なめですが、栄養バランスも考えられた食事を食堂のみなさんが作っていただいているのです。
決して酷い食事ではないはずです。
なのになんですか? せっかく作って頂いた食事が不味くて食べられないなんてどういうことです! あなたは公爵令嬢なので、日頃の食事が豪華すぎるのではありませんか? 世の中には満足に食事できていない方も多くいるのに、なんてことを言うんですか……」
私は不味いなんて事実を言ってはいけなかったのだ。
完全に失敗だった。
それからまた、延々と世の中の人がいかに貧しい食事を食べているか説教されたのだ。
「ここの食事を不味いなど言えるなんて、なんて贅沢なんですか。
良いでしょう。そこまで言うなら、貴女には現実を知ってもらう必要があるでしょう」
そう言うとフェリシー先生はニコリと微笑んでくれたのだ。
これは絶対に不味いやつだ。私は蒼白になった。
今度はおかゆだけとかになるんだろうか?
しかし、フェリシー先生は更に鬼畜だった。
「明日のあなたの食事はなしです」
私はフェリシー先生の言葉に絶句してしまった。
「ええええ! そんな、死んでしまいます!」
私は必死に叫んでいた。
「何を大げさに言っているのです。1日位絶食しても人は死にません。世の中の貧しい人が日々どんな思いをして過ごしているか少しは判るでしょう」
そう言い切るや、フェリシー先生は皆を引き連れて反省房を出ていったのだった。
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断食はフランにとって一番の罰かも……
皆様のおかげて書籍化された本物語、本日には本屋さんの店頭に並ぶはずです。
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