デートで街に出てきたら嬉し恥ずかし映像が見えの前に流れていて真っ赤になって固まってしまいました

「何なのよ。アド。最悪だったじゃない。これならアドがいないほうが余程良かったわ」

補講が終わった後、食堂で私はアドに散々文句を言っていた。

今日の食事もちりめんじゃこをご飯に載せたシラス丼だったし、日毎にドンドン酷くなっているんだけど。


「ごめんね。フランちゃん。ノエルちゃんらがお腹が空いたって言うからちょっと多めに入れちゃったら、あなたの分がなくなってしまって」

「良いんです。おばさん」

私は笑顔で答えつつ、おのれノエルめと心の中でノエルに怒っていた。


「まあ、フラン、そう怒るなよ。お詫びに今度奢るから」

「えっ、本当に」

私はすぐにアドの意見に食いついた。


「ハッピ堂が市内にカフェをオープンしたんだ。その招待券があってさ」

「うそー。行くわ。絶対に行く」

オープンした話は私もノエルから聞いていた。なかなか予約も取れないそうだ。そこに連れて行ってくれるなんてアドはとても親切だ。

食い意地の張った私はあっさりとアドに篭絡されていた。


「じゃあ今度の土曜日はどうだ」

「判った。約束よ」

私の頭の中は嫌なフェリシー先生の補講の事は忘れて、ハッピ堂の新しいカフェのことでいっぱいになった。

どんなの食べさせてくれるんだろう。

土曜日が私はとても待ちきれなくなったのだ。



そして、その土曜日が来た。

私はメラニーとノエルに質素な服で良いと言ったのに結構着飾らせられた。

春なので、モスグリーンのワンピースに髪には青い髪飾りをつけたのだ。


まあ、靴は歩きやすい靴だったので、まだ良かったが、これがハイヒールなら大変だった。


学園の寮の入り口までアドが呼びに来てくれて、私は二人で連れ立って歩き出した。


「ねえ、見てみて」

「えっ、あれは王太子殿下よ」

女子寮にいた新入生と思しき者たちの声が聞こえた。


「本当だ。横の気の強そうな人は」

「何言っているのよ。フラン様よ。この前ターザンやって海賊退治した」

私はその言葉に思わず躓きそうになった。

もう、ルートンの王太子は殺す!

あんな画像を世界に発信してくれて。


「ああ、あのアルメリア国王を張り倒した人ね」

横の女も何を言うのよ!


横でアドが笑っているし、


「アド」

私がむっとして言うと


「ごめんごめん」

アドが謝るとその場に跪いてくれたんだけど。

そして、手を差し出してきた。

「えっ、何するのよ」

私は慌てた。


「私の姫君、お手を」

私は戸惑いつつその手を取ると


アドがその手を引いて歩き出してくれた。


「きゃ」

「熱々ね」

私たちを見ていた新入生らが噂しているのが聞こえた。

私は赤くなった。


「なんかデートしているみたいね」

「何言っているんだ。婚約者と手を繋いでいるんだから完全にデートだろ」

ムッとしてアドが言ってくれた。


「まあねそうだけど。でも、昔からよく二人で街にも降りているから」

「昔からデートだ。俺はそのつもりだった」

アドがはっきりと怒って言ってくれるんだけど。


「えっ、でも、帝国の王女とかともよく一緒にいたじゃない。ビンク頭とも教会にいたし」

「何言っているんだよ。その時は他の奴もいただろう。聖女とはそもそも仕事だったんだぞ。俺は、女と二人で歩くことなんてフランとしかしてないからな」

アドがはっきりと言ってくるんだけど。

「えっ、そうなの?」

私は驚いてアドを見た。

「そうだ」

「でも、いつも私と歩く時は視察だって言っていたじゃない」

私が文句を言うと。

「それは、ちょっと恥ずかしかったんだ」

ボソリとアドが下を見ていってくれるんだけど。

えっ、そうなんだ。昔は仕事だから私と歩いていると思っていた。


なんか赤くなっているアドが少し可愛い。


考えたら二人でデートするのも久しぶりだ。


私はこのデートを堪能することにした。


手始めに、アドと繋いでいる手の指を絡めたのだ。

「えっ」

「デートだって言うから、恋人つなぎ」

私はそう言うと少し赤くなってアドを引っ張って歩き出した。


ハッピ堂のカフェは、学園から20分くらいのところにあった。


まだ10時前なのに、既に列が出来ていた。


さすがハッピ堂だ。人気は凄い。


私達は最後部に並んだ。


「えっ、ねえ、あれって王太子殿下じゃない」

「ほ、本当だ。本物よ」

「隣の美女は誰なの?」

なんとその横の女は私を美女って言ってくれた!

私が喜んでいると


「判らないけれと、どこかのご令嬢じゃない」

「えっ、酷い、フランソワーズ様がいるのに」

「本当よね。殿下も婚約者がいるのに他の子を連れ歩くなんて」

なんか噂がドンドン話が違う方に行っているんだけど。

私はここにいるのに。なんで別人だと思われるんだろう?

そもそも、フランの顔写真とかそんなに出回っていないはずで。


「ねえ、あの女の人、この画面のフランソワーズ様と似ていない」

なんかただならぬ声が聞こえたんだけど。

ちょっと、待った。


私はそちらを見ると大画面で散々見せられたアドとの画像がデカデカと入り口に置かれているんだけど。


「ちょっ、ちよっとアド、あの画像」

私はそれを指さして完全に固まった。


それは私とアドが食べさせ合いをしている所だ。

だ、誰だ。このエルグランまで、この映像を流しているのは!

「あっ、本当だ目元とかそっくりだ」

「やっぱりフランソワーズ様だったんだ」

真っ赤になった私は皆の声もよく聞こえなかった。

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