閑話 アド視点4 帰りの船でフランとお菓子を食べさせ合いました
散々フェリシーに怒られて、無理やり連れて帰らされる船の中では、フランはとても不満そうだった。
しかし、早々に船酔いでダウンしたフェリシーやお付きの護衛達を放っておいて、フランは自由に船の中を飛び周り出したのだ。
フランの乗っていた高速船はとても速かった。海軍の5隻はヴァンにつけてアルメリアの復興のためにしばしおいてきたのだが、連れてきても到底この船に追いついてくることは出来なかっただろう。
船員のレベルも高い。
この船の船員は皆良い奴らで、コイツラも海軍にスカウトすればいいだろう。そうすれば船での外交も便利になるはずだ。南の大陸は国も多く、その交易の利益をルートンに独り占めにさせておく必要もなかろう。
帰ったらヴァンやジェドと協力しながら早速外務卿を派遣する準備を始めようと俺は思った。
ヴァンは造船工房とも知り合いを作ったみたいで、船舶を増やすのはなんとかなりそうだ。
アルメリアやルートンから海軍の船員は貸してもらえるそうだから、エルグランの海軍を増強する目処は少しは立ったのだが、後は財務をどう説得するかだ。
まあ、それはおいおいやっていくしかあるまい。
まあ、今までは貿易はルートン王国の一人勝ちだったが、今後は我々もその中に入っていく必要があるだろう。
俺に怒っているフランは中々許してくれなかった。これも全ては捕まったアルメリア国王が有る事無い事をフランに吹き込んでくれたからだ。
俺はフランの事が心配で情報を収集のために会っていただけなのに、フランのことをゴリラ女だと言っていたなど、どう転んだらそう言う事になるんだ?
俺にとってフランは可愛い婚約者なのに!
俺はフランに許してもらうために、今回もハッピ堂の特注プリンを持ってきたのだ。
いや、決して、前もって怒られるのが判っていた訳ではない……悪い予感がしていたのだ!
フランは俺には見向きもせずに船内を闊歩していたが、見張り台に1人で、登って行った。
俺は親しくなったベニートに合図した。
彼には、トゥーロンについたら看護婦らとの合コンをセッティングすると約束したのだ。
トゥーロンの病院長に頼んだらセッティングはしてくれるだろう。
ベニートがさっと見張り台から降りてきてくれた。
俺が代わりにマストによじ登りだしたのだ。
マスト登りとかは王宮の壁をフランと一緒によじ登ったりして培ってきたのでお手の物だ。まあ、王宮と違って大きく揺れるのが、ネックだが。
そこは若さでカバーした。
あっという間に、てっぺん近くの見張り台に近づく。
「あっ、ベニート有難う」
フランはこちらを遠くを見張っていて俺の方を見ずに手を差し出したので、手の甲に冷たいプリンをくっつけてやった。
「つ、冷たい!」
慌ててフランはこちらを見た。
「アド、一体何をしてくれるのよ」
相手が俺だと知れて、ムッとしてフランが言ってきた。
「フランのために、ハッピ堂特製プリンを持ってきたんだけど。お気に召さないのなら、持って降りるよ」
「えっ、ちょっと待ちなさいよ。アドは気に入らないけれど、プリンは気にするわよ」
俺のその一言にフランは慌てて食い付いてきたのだ。
「そうだろう。これは社長に頼んで、フランのために甘さ控えめに作ってもらってきたんだ」
「えっ、そうなの?」
フランは俺に怒っていたことも忘れて目をランランと輝かせてプリンを見ているんだけど。
「じゃあ、あああん」
俺はフランの口元にプリンをスプーンですくって持っていった。
「えっ、自分で食べられるわよ」
「じゃあ、いらない?」
俺はそう居うとフランの口元からこちらにプリンを持ってきて、食べようとする。
「頂き」
そう言うとフランは俺のスプーンに食い付いてきたのだ。
「嘘ーーーー、これ美味しい!」
フランはとてもご満悦になってくれたのだ。
やはりフランは食べ物で釣るに限る。
「そうだろう。そう言って喜んでくれるとわざわざ持ってきたかいがあったよ」
俺はそう言って笑うと
「はい、フラン」
フランの口先にプリンをすくって差し出す。
パクッとフランは食い付いてきた。
そして、もう次からは逆らわずに俺の手から食べさせられていたのだ。
「はい、フラン」
俺はもう一カップのプリンをフランに渡した。
「えっ、まだくれるの」
フランは嬉々として俺を見た。
「今度は俺にも少し欲しいんだけど」
「えっ、少しだけよ」
フランはそう言いながら大きな塊をすくって俺の口元に持ってきてくれた。
俺達は360度水平線しか見えない特等席でお互いに食べさせ合いながら、過ごしたのだ。
下からは、俺の側近や船長らが生暖かい視線でこちらを見ていたが、フランは気付きもしていなかった。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
現在第四部鋭意練っているところです。
しばしお待ち下さい。
その間にまだお読みでない方は下記の小説お勧めします。
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