閑話 アド視点2 せっかく会いに行ったのに、婚約者に張り倒されたり土下座したりで本当にもう大変でした

俺は一目散にフランのところへ向かった。


しかし、ルートンは遠い。


馬車で4日のところを馬で3日で駆けて、側近たちはもうバテバテみたいだった。


そのまま海軍の船に乗る。


フランの時は護衛艦は1隻も付かないのに、今回は5隻で出るとのこと。


そもそも俺の乗った船からして軍艦だった。


護衛も魔術師団から2個中隊もつくし、騎士なんて百騎も来ているんだけど。


「多すぎないか?」

と俺の護衛のアルマンの父に聞いたら、


「殿下は王太子殿下ですから。これでも少ないくらいです」

と返された。


「いつもはもっと少ないと思ったんだが」

「いつもはフラン様と一緒じゃないですか! 今回はいらっしゃいませんので」 

「何を言うんだ。フランが一個大隊と同じなわけ無いだろう!」

俺はムッとして言うと


「そのとおりです。フラン様は一個師団以上かと。だから今回は皆危機感を持っております」

おいおい、いくらなんでもそんな訳ないだろう、と俺は思ったが、


「フラン様が1人いれば、例えクラーケンに襲われようが、一個艦隊に襲われようが、問題ありませんが、今回はいらっしゃいませんので」

ルールは平然と言い切るんだけど。


たしかにフランは強いけれど、そこまでではないだろう。


そう言ったら


「何を仰るんですか? 今、王都では騎士も兵士も予備役まで招集されて警戒にあたっているのですぞ」

「はっ?」

俺はルールが何を言い出したのか判らなかった。


「フラン様がいなくなったのを知って、これを奇貨として、ならず者共が動きだしたのです。王都からいなくなっていた大物が次々に王都に舞い戻ってきて、ならず者同士の抗争も多発しております。軽犯罪を含めて犯罪が多発しているんです」

「本当か?」

「報告が上がっていると思いますが」

「そうだったか?」

そう言えば治安維持はフランの役割だった。諜報部門はヴァンが取りまとめていたはずだし。


「フラン様がおられなくなって諜報部門の2トップも一緒にルートンに行かれていルデはありませんか。情報はいい加減な物しか無いわ、犯罪はふえるわで、騎士団長も困っておられました。お陰で私達も休みほとんどない状態でして、出来たらフラン様には一刻も早くお帰りいただきたいんですが……」


ルールが言っていることがよく判らないのだけれど、騎士団の基本は王都の治安維持だろうが。それがフラン1人いなくなって治安が悪化するようだと、騎士団の意味がないのではないか。


「それはその通りです。騎士団一同、改めてフラン様の偉大さを痛感した次第です」


騎士団としては一刻も早くフランには帰ってきてもらいたいらしい。

今回も俺がフランを迎えに行ったと大々的にならず者たちに情報を流しているらしい。

でも、今回途中でフランを連れて帰れる訳はないのだ。フランが言うことを聞くわけはない。


「まあ、ならず者共を牽制できれば良いのではないですか。騎士達の実戦訓練にもなりますし。我々は最近フラン様に頼りすぎたきらいがありますから」

苦笑いしてルールは言ってくれたのだが、騎士団はもう一度鍛え直す必要があるだろう。

フランに頼り過ぎだ。




久しぶりに会ったフランはまた可愛くなっていた。


俺はそんなフランに思いっきり抱きついて顰蹙を買っていた。

ローランド夫人らにすぐに剥がされてしまったけれど。


こんなフランを1人でルートンなんかに置いておけない。女たらしの王太子も何か暗躍しているそうだし。まあ、言っても絶対にフランは聞かないから連れて帰るのは無理だけど。


俺はそのままフランを王宮にあいさつに連れて行ったのだ。まあ、留学生の皆も一緒だが、俺の目的はルートンの王家並びに貴族どもに俺のフランに対する溺愛ぶりを見せびらかすことにあったのだ。


ルートン王家にフランを取られるわけにはいかない。

なんでも、女たらしの王太子が触手を伸ばしてきたとか。


「まあ、フランは可愛いからな」

俺が言うとルールは呆れたように俺を見てきたが、

「ルートン王家はフラン様が可愛いかどうかはさておき、フラン様を対アルメリアの戦力として見ているようです」

「はああああ? なんだそれは」

俺はプッツンキレた。


ツンツンしているフランは可愛いのだ。それを兵器として見るなどなんていう国だ。不満を持つ遊牧民にでもヴァンに言って反乱を起こさせるか?

いやいや、今フランのいる間はまずい。フランは自ら進んで討伐に出るとか言いかねないし。


フランを襲った海賊共の親方のアルメリアには既に不平分子に渡りをつけてある。絶対にただではおかないのだ。

そうだ。その点について、ヴァンとジェドと打ち合わせをしておかないと。


でも、王宮では王妃がフランがルートンを征服に来たんではないかととんでもないことを言っているんだが。

フランがそんな面倒なことはしないし、もしやるなら今でも出来るのだ。


しかし、これは王国側が仕掛けた罠みたいだった。


次の瞬間にはフランの大活躍の映像がまた始まったのだ。海賊退治に対してルートン側はフランに感謝一色だ。国王も王太子もベタ褒めだった。いくら褒めてもフランは渡さないが。


フランは真っ赤になって恥ずかしがっているが、この映像を見て、ルートン側はフランを取り込もうとしているのか?



歓迎の式典で、公式の場で初めてフランと踊って俺はご満悦だったが、その後王太子が出てきて胡散臭い雰囲気になってきた。

これはやばいと、俺は本気で気になりだしたのだ。


そうこうするうちにフランが見えなくなって俺は慌てて探そうとした。


そこに同じくフランを探しているジェドに会ってついて行くと、なんと、ヴアンと二人でなにやらしているではないか。


「何をしているんだ!」

怒って叫んかだ俺は悪くないだろう。

慌てたフランがヴァンの上に乗って倒れ込んだのだ。何故抱き合っている。俺はもう完全に切れていた。


慌ててフランを引き剥がそうとして枝に絡まったフランの髪の毛を少し抜いてしまったらしい。

「痛いわね」

フランの一撃で茂みの中に突っ込まされたのだ。


何故かフランが怒っているんだが、ヴァンと二人だけで何かしていたフランが悪いだろう!


「えっ、フラン、なんでお前が怒っている?」

俺が切れて言うと

「あんたが良いところで邪魔したからでしょ」

その言葉に俺は完全に切れてしまったのだ。


よく考えたらフランがするわけないのに、

「何だと。ヴァンとキス・・・・」

そう言った俺の頬をフランの張り手が直撃したのだった。



怒りのフランに許してもらうのは本当に大変だった。

皆の前で土下座して、許さざるを得ないようにして、やっと許してもらったのだ。


ルートンの王太子は暗躍しているし、俺としては心配でいても立ってもいられなかったのに、側近共が煩くて帰らざるを得なかった。


やむを得ず、フランには通信用の魔道具を置いておくことにしたのだ。

これで毎日フランと連絡できると思ったのに、これがフランの怒りの一撃でほとんど使わないうちに壊されてしまうとは思ってもいなかったのだった。


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ここまで読んで頂いて有難うございます。

続編現在考案中です。

しばしお待ち下さい!


その間に私の小説の紹介

『ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語』


https://kakuyomu.jp/works/16817139559045809176


公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。その瞬間前世の記憶を取り戻するのだ。そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも、隣国に追放させられてしまう。

「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。

冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も実はいわくつきで…

ハッピーエンドはお約束。

是非ともお読みください

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