私は怒りのあまり、王太子を張り倒しました

そして、一位を代表して、3年生のクラス委員長の王太子が挨拶に立ってくれた。それで素直に終わると思ったのだ。


「皆さんの応援のお陰で、3年A組が一位を取ることが出来ました。有難うございます」

王太子は頭を下げた。


「さて、近年、アルメリア王国の傍若無人ぶりは目を覆うものがあります。

アルメリアの意を得た海賊が跋扈して、我が者顔で商船を襲っています。

そして、この王都でも人攫いに始まり、なんと演劇の場においても、アルメリア王国の襲撃があったのは皆さんも御存知のとおりです。このような横暴を許していて良いのかとお怒りの方々も多いでしょう。

このままだと、私達A組の演劇の通り、気がついたら王都がアルメリア王国の攻撃で炎上していたということになりかねません。

そういった中で、海賊の襲撃を撃破されたフランソワーズ・ルブラン公爵令嬢の働きは素晴らしいものがあります。学園の誘拐事件も、今回の演劇の最中の襲撃事件も全て撃退されました。

有難う。フランソワーズ嬢。国を挙げて私はお礼が言いたい」

王太子の声に皆が一斉に拍手してくれた。


みんな私に拍手してくれている。私は少し恥ずかしかった。


「彼女には出来たら今後も我らのために、一緒にアルメリア王国と対処していってほしいと切に願う次第です」

「そうだ」

「フラン様、よろしくお願いします」

皆一斉に拍手してくる。


私はただ、照れて笑っているしか無かった。


「フランソワーズ嬢。出来たらみんなと一緒にこれからもやっていってもらえるだろうか?」

いきなり、王太子がマイクを向けてきた。


「まあ、出来る限りはご協力はしていきたいとは思います」

私は答えたが、本来はヴァンに聞いて欲しい。彼が今は外務担当なのだ。


「有難う。良かった、皆さん、フランソワーズ嬢は今後も私達と一緒に戦ってくれると宣言してくれました」

王太子が勝手に話していくんだけど。


まあ、いる間は少しは手伝ってもいいけれど……


何かこちらを見ているメラニーとか、ヴァンとかの目が怖いんだけど。

まだ、私は何も確約していないよね?



「私はそんなフランソワーズ嬢にどうしたら、一緒にやっていって頂けるだろうかとここしばらく真剣に悩みました。両親も高位の貴族の方々もです。でも、1人だけ、この動きに反する者がいます」

王太子は残念そうに言った。何だ、また、アルメリアの残党を見つけたんだろうか?


私は臨戦態勢に入った。


「それは、ソニア・トルトサ君だ」

王太子はいきなり自分の婚約者のソニアを指さしたのだ。


「えっ」

ソニアは驚いた顔をした。


「君はフランソワーズ嬢が何回か話しかけているにも関わらず、彼女を無視して、あろうことか何回か君の部屋に足を運んで頂いたにも関わらず、居留守を使ったね。何故だ?」

「えっ、それはその……」

王太子がソニアにきつく言うんだけど、私が魔術で酷いことをしたからだし、こんなところで言うべきではないだろう。


「殿下、それは私が魔術を暴発させて、彼女を骨折させてしまったからで、彼女は決して悪くないかと」

私が言うと、

「有難う。フランソワーズ嬢。あなたは本当に天使のような方だ」

王太子が言ってくれた。天使なんて初めて言われた。今度アドに自慢しようと私は思ったのだ。


「でも、ソニア、君がフランソワーズ嬢を邪険にしているのはそんな理由ではないよね。というか、我が国の恩人であるフランソワーズ嬢に、そんな事で失礼な態度を取ることは許されないだろう」

王太子が言い切るんだけど。ここでソニアにそれを言うことか?

私はちょっとムカっときた。


「す、すみません、色々なことがあって考えが足りませんでした」

ソニアが、私に頭を下げてきたんだけど。


「いや、大量の水を制御を失敗してかけた私が悪いのであって、ソニアさんは悪くはないわ」

「フランソワーズ嬢。彼女があなたを避けていたのはそんな理由じゃない」

王太子は言い切ったのだ。


何なのだ。彼女が黒幕だとでも言うのか?

私にはよく判らなかった。

「えっ、フェル」

ソニアは少し慌てていた。


「ソニアがフランソワーズ嬢を避けていたのは、海賊退治の時にソニアがフランソワーズ嬢に助けられたからだ」

王太子が言うんだけど、


「えっ、あなたあの時の女の子だったの?」

私は驚いて聞いた。何故かソニアが目を見開いて唖然としているんだけど、なんでだ?


「君は恩人であるフランソワーズ嬢にお礼も言わなくて恥ずかしくないのか?」

王太子がソニア嬢を指さしてきゅうだんしているんだけど。


「あの、殿下、まあ、それは本人からお礼を言われなかったと言われれば、少しくるものもありますが、言えなかった何らかの理由があるのでしょう。別に私は気にしませんが」

私は言った。ソニアが真っ青だし、なにも皆の前で聞くことでは無いだろう。


「そうフランソワーズ嬢に言ってもらえると嬉しいが、王太子妃になろうと思えば、礼も言えない妃など、妃失格ではないのか」

きつい言葉で王太子は言うんだけど。

ソニアは下を向いた。


「今はルートン王国は国始まって以来の国難に面している。そんな時に救国の英雄であるフランソワーズ嬢に対してのその態度、王太子としては看過できない。よってここに婚約を破棄する」

えっ?

王太子が宣言したんだけど、こんなところでやる。それも私の目の前で。

せっかく二人の悲恋の演劇見て感動したのに、私の感動を返せと私は言いたい。


「で、殿下!」

冷酷に宣言する王太子に対して、ソニアは真っ青になっているし。


そして、あろうことか次の王太子の言葉に私は完全に切れてしまったのだ。

「できれば将来的にはその位置にフランソワーズ嬢を迎え入れたい」


ピキッ

何かが完全に切れた。


パシンッ

私は張り手を王太子にお見舞いしていたのだ。


**********************************************************


公衆の面前で婚約破棄する王太子も王太子ならそれを張り倒すフランもフランでした。


ここから怒涛のクライマックスまで、全力で走り切ります!

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