教皇視点 生意気な公爵の娘をなぶり殺しすることにしました
お、おのれ、あの公爵の娘許さん。
俺は完全に切れていた。
ズンダーラ教第40代目教皇、ベルナール・ドワイヤン、それが俺の正式な名だ。
この全世界1000万人の信者を持つと言われる最大宗教の頂点に立つ。
ズンダーラ教は昔は世界中で迫害されていた。
まあ、どの宗教も基本的には世の施政者から嫌われるものなのだ。施政者の都合のいい事を言わないからだ。
ズンダーラ教も最初はそうだった。洞窟などで迫害から逃れて細々と布教を続けていたのだ。
それが大きくなったのは、初代教皇の時にズンド帝国と協力関係になり、一躍ズンド帝国の国教と成ってからだ。それからのズンダーラ教の発展は帝国の発展に繋がった。
まず、ズンダーラ教が布教を行い、その国の情報を掴み、帝国に流すのだ。そして、帝国のためにいろんな工作をして、その国を弱体化させて、帝国が乗っ取るということを繰り返してきた。
そして、ズンダーラ教は更に大きくなる。
帝国の後ろ盾ということで、各国から迫害されることは減って、更に布教がやりやすくなる、という好循環になったのだ。ズンダーラ教にとっても都合の良い関係だった。
帝国も他国に進出しやすくなって、お互いにウインウインの関係なのだ。
帝国の皇帝としてもズンダーラ教の権威を上げた方が良いので、帝国では皇帝と同格扱いにしてくれていた。他国では皇帝と同じ扱いにしてくれるので、他国に布教に行ったほうが待遇は更に良くなるのだ。
そう、崇め奉られるのが俺なのだ。
それが、たかだか辺境の国エルグランの一公爵の娘が俺の地位は男爵位より下だと言いやがったのだ。許せることではなかった。
「田舎者は困りますな」
枢機卿などのほほんと笑っているではないか。
何がおかしいのだ。
我がズンダーラ教が馬鹿にされたのだ。普通は即座に破門だ。
各国領主は破門と聞くと恐れおののいて必死に謝ってくるのだ。
なのにだ。なのにだ。この小娘が言うには
「破門? 勝手にすれば」
聞く所によるとこの辺境の公爵家は既に2代前に破門にされたというのだ。
普通はズンダーラ教に破門にされたら、その国では権威を失い、落ちぶれていくはずなのだ。
領地は半減になったと言うが、未だにその勢力は強く、この国の第一王子の婚約者だと言うではないか。
どういう事だ? この国にもズンダーラ教は根を下ろしているはずだ。
破門が全く堪えないとはどういう事なのだ!
「まあ、かの辺境の地は魔の森の傍ですからな。人間界ではないわけでございます。魔物の世界には流石に我がズンダーラ教も力及ばずということで」
苦笑いするこの国の枢機卿を俺は殴り倒していた。
「愚か者めが!」
俺の一喝で教会内の空気が一変した。
「聞く所によると、かの小癪な公爵領は我がズンダーラ教を受け入れていないというではないか。どういう事だ」
「はっ、2代前に出入り禁止になってから、教会関係者は見つかると投獄されているので、誰も入ったものはおりません」
頬を抑えた枢機卿が言う。
「なんだと。貴様、枢機卿としてこの国で我がズンダーラ教の未踏の地を作っておるのか」
「それはここ50年ほどずうーっとでございます」
「貴様は直ちに公爵領に赴き、布教に勤めるのじゃ」
「お、お許しください。魔物のエサにされてしまいます」
「そうなればそうなったで、それを理由に布教しやすくなろう」
「そのような訳がある訳はないでしょう。相手はあの破壊の魔女ですぞ」
恐れて枢機卿が言った。
帝国の皇帝と言い、他のやつといい破壊の魔女を恐れ過ぎじゃ。
「ふん、良かろう。その破壊の魔女の娘はあの生意気な小娘じゃの」
「はい、左様でございます」
「なんとかして我が嘆きの洞窟に招待するのじゃ」
「嘆きの洞窟にでございますか」
枢機卿は驚いた顔をした。
「転移門を何処かに繋げられればそれは可能でございますが」
「ちょうどもうじき洞窟探検がございます」
帝国の皇女が嬉々としていってきた。
「そうか、その洞窟と嘆きの洞窟をつなぐのじゃ。学園の協力者と協力して直ちに事に当たれ」
俺はそう命じた。
嘆きの洞窟は我がズンダーラ教が不遇時代に作られたもので、守るために幾重もの闇魔術がかけられているのだ。いくら魔力が強くても中に入れればそう簡単には抜け出せないのだ。力を使えなくなった魔術師の手や足などなど、赤子の手をひねるように簡単に折ることが出来る。
「ふふふふ、我に生意気な口をきいた小娘め。目にもの見せてくれるわ」
これであの生意気な小娘をなぶり殺しにしてくれる。俺はそう思って溜飲を下げたのだった。
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