王宮で教皇から嫌味を言われました
「フラン、このお菓子、本当に美味しいわ」
ノエルが幸せいっぱい喜んでいる。昼時、何故かノエルは食事の前にお菓子を食べているのだ。
ドットケーキの新作ケーキだ。これもアドが手を回したらしく、第一王子と私の婚約10周年記念のケーキなのだ。これには私とアドの寄り添った姿がチョコレートになって載っているのだ。私も一口もらったけれど、本当に美味しかった。
アドは王都の人気の5つの菓子店と私との婚約10周年を契約したみたいで、本当によくやったと感心したくなる。
最も当事者の私としてはとても恥ずかしいんだけど・・・・
「本当に殿下とラブラブなのですね」
ジャッキーが横から言う。
「本当にここまでするなんて、フランも殿下に愛されているのね」
イヴォンヌまで言うんだけど。
なんか本当に、いいようにアドの手のひらで踊らされる気がするんだけど、食い物でつられる私ってどうなんだろう?
まあ、それは無視して、今日の食事を食べようと、私は私のトレイを見た。今日は1学期に食べられなかった幻のカレーなのだ。料理長のこだわりのカレー、手間隙かかって滅多にお目にかかれないから幻のカレーとも言われている一品なのだ。
私は一学期にアドに邪魔されて食べられなかったのだ。昨日からとても期待していた食事なのだ。
そして、まさにスプーンを突き刺して食べようとした時だ。
「フラン、父からの呼び出しだ」
そこへ慌ててアドが入ってきたのだ。
「ちょっとアド、あなた、今日は幻のカレーの日なのよ。この前もあんたが邪魔したのよ! 何で陛下は私が食べている時に限って呼び出すのよ。今日は絶対に食べてから行く」
私がムッとして言うと、
「帝国から教皇猊下が来たんだ」
「ええええ! 教会って我が領地に出入り禁止だから私は関係ないんだけど」
私が当然のように言う。
「そうは言っても未来の王妃がそれではいけないだろう」
「あんなエセ宗教、この前もノエルを傷つけてくれたのは、帝国の教会の枢機卿よ。人の生き血を吸っている教会なんてこの国から追放すべきよ」
「あのう、フラン様。私、教会の孤児院出身なんですけど。全てがあのような卑劣なやつばかりではありません」
珍しく、オリーブが口を出してきた。
「でも、教会は上に行くほど酷いんじゃないの?」
「まあ、フラン、食べたい気持ちもわかるけど、ここは我慢してくれ。今度は絶対に俺が食わせてやるから」
アドが頼み込んできた。
「この前もそう言ったわよね」
「判った。クラスの皆にまた、アラモードプリン持ってくるから」
「ありがとうございます。殿下」
その言葉を聞くと、さっとノエルが私のカレー皿を取り上げだのだ。
「えっ、ちょっと」
私は慌てたが、
「フラン、カレーは私が頂いておいてあげるから、後顧の憂いなしに行ってらっしゃい」
「フラン、負けちゃ駄目よ」
お菓子につられたノエルの嬉しそうな声とメラニーの訳の判らない言葉を受けて、私はアドに連れられて王宮への道についたのだ。
「遅かったではないか」
王宮に着くと食堂に私たちは案内されたのだ。陛下が少し怒っていらっしゃった。何故だ? すぐに来たのに?
「フェリシー先生の授業中だったのです。呼びに来た使者がそれを聞いた途端遠慮してしまって」
陛下に小声で話すアドの声に陛下も仕方ないように頷く。さすが鬼教官のフェリシー先生。陛下にまで一目置かれいるとは。
陛下夫妻は教皇とその連れと帝国の皇女と一緒に食事していた。そこにはラクロワ公爵もいる。
でも、どう見ても食事は、もう、終わりかけだ。
何しろデザートが出ていたのだから。私はがっかりした。食べられてデザートのみだろう。また食事抜きか。私はフェリシー先生を恨みたくなった。
「教皇猊下。我が息子アドルフとその婚約者ルブラン公爵家のフランソワーズです」
「これはこれは殿下。あまりにも遅いのでもう私にはお会いしていただけなのかと危惧しておりました」
早速教皇の嫌味が炸裂した。そう言えばこいつはサマーパーティーで聖女に高価な服を贈った元凶だったと思い出した。お陰でその衣装がビリビリに引き裂かれてサマーパーティーの中止の原因になった。碌なことをしない奴なのだ。
「連絡もなしに、いきなり来られてもすぐには対処できないのだが」
そっちのほうが礼儀知らずだろうとアドが言い返す。
「これは申し訳ありませんな。急に時間が空いたもので。帝国ではそのような時に陛下をお訪ねしても喜んで迎えていただきますので」
「帝国と我が国は違う」
教皇の嫌味にも、アドは一言で答えていた。教皇としては帝国の皇帝ですら聞くのだから他の国でも通用するだろうと言いたかったのだろうが、そんな訳はない。我が国の仮想敵国は帝国なのだ。それに、帝国の皇帝の威光も母に対する土下座映像で、既に地に落ちているんだけと・・・・。
「で、そちらの方は見たこともないお方ですな。高位貴族のお方はだいたいお会いしたことがあるのですが」
教皇が私を見下したように発言した。
「ルブラン公爵家は我が教会によって破門されていますがゆえに」
帝国の枢機卿が満を持したように言ってくれた。
「ほう、そのような者をこの場に呼ばれるとは少し教皇猊下に対して失礼ではありませんか」
こいつも協会関係者だろう。それも我が国の人間ではないか。
ええええ!わがルブラン公爵家に逆らうつもりなの?
私はピキッとした。昼食も碌に採れずに苛立っているのに、こいつは何を言うのだ。
私は後先考えずに胸を張った。
「わっはっはっはっはっ」
何も考えずに、悪役令嬢の高笑いでなくて、また魔王の高笑いをしてしまったのだった・・・・・
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