第112話
空からは私とノアが魔法の雨を降らし、陸ではネージュが破竹の勢いで魔法を奮う。
「ノア、そろそろ休憩しようか」
あれからいったいどれほどの魔物を倒したのだろうか。
クレンセシアに来て数日。始めの頃なんて、思いっきり暴れられるぜ! と言わんばかりにノアは嘴と爪で魔物を引き千切り、風魔法で切り裂く。ネージュは魔物たちの間を駆け巡りながら牙や爪で魔物を薙ぎ倒し、雷魔法で稲妻を走られていた。
いまだに大森林から溢れ出る魔物の勢いは収まらないが、主に私とノアとネージュが魔物を撃ち倒し、撃ち漏れたものを兵士や冒険者たちが倒すという流れができて安定している。
戦っているたちも怪我の手当てや、順々に軽い食事を取れるような余裕も出てきたようだ。
……が、ここにきてそうは言ってられないような嫌な感じがしてきている。
段々と、出てくる魔物が強くなってきているのだ。まあおかしいことではない。大森林の奥地でなにかあったとして、奥地から魔物が押し出されてきているとしたら、徐々に強くなるのは当たり前と言える。
しかし問題はこちらだ。ただでさえ限界だったのだ。これ以上強い魔物が増えたら、正直持ち堪えられない。いくら私とノアとネージュが魔法を使ったって、数の暴力には勝てない。
「……こんなことを考えていても仕方がないわ。ノア、ネージュ、行きましょ!」
今はやれることをやるだけだ。
「あーあー!! 本当にやばいっ!!」
狩って狩って狩り続けて、それでも魔物は途絶えなくて。
「リアッ! とうとうキマイラまで出てきやがった!」
「ノアッ、オルトロスもだっ!」
ここまでくると、私がアデライトだった頃まで遡ってもそうそうないほどの大氾濫ね。
帝国で起こって運が悪かったというべきか、今このアデライトの記憶が蘇った私のいる帝国で起こって運が良かったというべきか……。
ノアとネージュも流石に一撃とはいかなくなってきたようで、徐々に擦り傷や打ち身もできてきていて、回復魔法を使ってもキリがない。
「結構魔力もキツくなってきたわね……」
魔力量が桁違いに多い私の魔力がここまで減るなんて初めてかもしれない。
「どうか保ってちょうだい」
キマイラやオルトロスまで出てきて、魔物の強さ的に氾濫も終盤に思える。
あとは私の魔力が尽きるのが先か、氾濫が終わるのが先かだ。
出てくる魔物は強くなったが町を守る人たちもなんとか持ち堪えている。私たちが討ち漏らした魔物を大人数で囲んで叩いているようだ。出てくる魔物が強くなってからは一体に当てる人を増やして対応しているようで、魔物を囲む輪が大きくなっている。
それも私たちが倒れたら確実に町が終わる。
「……っよし! ノア、ネージュ! もう一踏ん張りいくよっ!」
そう言ったところで、兵士達や冒険者達の雰囲気が変わる。
皆上を見上げ唖然とした表情をしている。
「ま、まじか……」
「もう終わりだ……」
視線の先には大型の魔物。
「おいおいおいおい! 竜まで出てきやがった!!」
そう叫ぶ冒険者達の視線を辿ると、そこには大森林から今にも出ようとしているカラフルな竜たちがそこにいた。
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