第97話
「な、何を言っているのですか。私はウィルフレッド様と婚約していて……」
「まだ婚約でしょう? そんなもの破棄すればいい。聖下も未だ結婚していないし歳周りもちょうど良さそうではないか。聖女となったことによる婚約破棄で聖下との婚姻が確定していればなんの問題もないだろう」
問題ありありでしょ!!
「彼女は私と婚約しているし、私は婚約破棄するつもりはない。それでもまだ言うのならば国を通して言ってもらおう」
ウィルフレッド様が私を庇うように前へと出る。
「ぬぅ……! いくら帝国皇太子とはいえ聖女を奪うなど許されんぞ!!」
奪うってなに!? この人どういう思考回路してんの!?
「ダルトン卿。そこまでだ。奪うと何も、彼らは最初から婚約を結んでいる。これ以上の口出しは無用だ」
だる男はダルトン卿と言うらしい。偉そうだと思っていたが、卿ということはこの人も枢機卿なのか。
とりあえずは聖下の一言で収まり場はお開きとなったが、ダルトン卿は最後まで私に気持ちの悪い視線を向けていた。
「お疲れ様。急な任命だったとはいえ大変だったね。……でもあのダルトン卿という男には気をつけた方がいい。この短期間じゃ何もできないとは思うが……。」
「そうですよね。あの何が考えているような視線が気になりました」
「帝国に帰るまではできるだけ1人きりにならないように気を付けよう」
「はい、気をつけます」
パレードまで3日。簡易的なパレードなため準備はほとんどない。服は任命式で着た二百年前の聖女の服を借りるし、当日また全身磨かれるくらいだ。
ということで、暇な私たちはまた街にでている。
あの後すぐに新たな聖女の誕生を発表したので街はものすごい賑わいだ。
商人たちはここぞとばかりに急なパレードに合わせて準備をしている。
「新しい聖女様の誕生だっ!」
「いや〜めでたい!」
「聖女オレリアと言っていたが、今までそんなは名前聞いたことないぞ」
聖女の誕生はめでたいけれど、聖女候補ですらなかったのが少し疑問のようだ。けど、この賑わいならすぐそれも問題ではなくなるだろう。
結局パレードまでの3日もノアとネージュの希望で街に出ては買い食いをして終わってしまった。
まぁ聖女が誕生したことによっていつもと違う街の様子を見れたのでよしとしよう。
パレードの日は朝からまたピカピカに磨かれたものの、宮殿から馬車に乗ってぐるっと聖都を回っておしまい。ずーっと笑いながら手を振るのは疲れたけど。
当日はノアとネージュも参加したいと騒ぎ大変だったけど、聖国的にはパレードにグリフォンとフェルリルがいるというのは格が上がって良いということで急遽参加することになった。
馬車の後ろを胸を張って歩いていた。
「ふふん。ほれ、あそこのなど私たちの毛艶の美しさに驚いているぞ」
「お!あそこのはいつもの屋台の店主ではないか? 腰を抜かしそうだ! よし、少し小突いてやるとするか」
小突くのはやめなさいっ!
教国にきてからはノアとネージュの希望によってほとんど毎日のように屋台巡りをしていたので、パレード中にはちらほらとよく行くお店の店員さんが驚いている姿が見えた。
パレードはあっという間に終わり、夜はパーティーが宮殿であった。
事前の発表の場にいなかった人たちは急な聖女の誕生き驚きはしたようだが、上が認めているから何も言わないという感じだ。
パーティーもなんの問題もなく無事に終わったが、ダルトン卿が大人しかったのが逆に気味が悪かった……。
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