第47話
「フッ!」
小鬼殺しのリーダーらしき奴が我先にと両手剣を持って飛び込んでくる。
前世では魔法以外に剣も使っていたとはいえ、今世ではこの前まで公爵令嬢。魔法で戦うことを考えるとあまり近づかれたくない。
とりあえず時間稼ぎに足元に土の山をいくつか作る。
小鬼殺しのメンバーがひっくり返った。
え? 時間稼ぎくらいにはなるかなと思ったんだけど……。え? 単純過ぎない?
相手がなんの武器も持ってない時点で魔法使いってわかるでしょ? なのに足元の警戒すらしてないの??
足元に障害をつくるって敵を近づけたくない魔法使いの基礎の基礎じゃないの?
「クソっ!」と言って起き上がると、何事もなかったかのようにまたこちらに向かって来る。
流石に殺しちゃまずいよね?
「【エアバレット】」
とりあえずエアバレットで1人目を吹き飛ばす。手加減したつもりが思ったより魔力が入ったのか壁まで吹き飛び気絶した。
観客からは「おおっ!」と声が上がり、小鬼殺しは私が魔法を使えると今更気が付いたのか、「魔法使い!?」「聞いてねぇぞ!!」と騒ぐ。
いやいや、武器持ってない時点で気付きなよ……。
「クソっ! 全員でかかるんだ!」
1対1じゃ厳しいとわかったのか今度は4人全員で向かって来る。
「【火球】」
観客もいることだしちょっと華やかにいこう! と周りの景色が歪むほど高音の青白い火球をいくつも作り4人に向かって飛ばす。
4人は避けたつもりになってるけど、これは追いかけられるんだよ。
火球をぴゅんぴゅん操り4人を追いかける。
4人は悲鳴を上げ走り回り、観客からは歓声の声が上がった。
見てるだけなら綺麗だもんね、これ。
しばらく4人を追いかけ回し、疲れで足がもつれ始めたところで火球を消す。
「つーぎーはー、これっ! えいっ!」
4人を魔法で空中に浮かべる。
はじめは逃れようともがいていたが、落とされるとでも思っているのか天井まで上がってからはやめてやめてとべそかいている。
でも降参はしてないからまだ続けていいのよね?
4人をぴゅんっと右へ。
「「「「ヒイィぃぃイィィー!!」」」」
今度は左へぴゅんっ!
「「「「ピギャぁぁァァァ!!!」」」」
あれ、ちょっと面白い。
ぐるぐる回したり天井と床を往復したりしているうちに小鬼殺しは大人しくなってしまった。
気絶したら勝ちでいいんだよね?
4人を床に下ろすと、全員気絶しているかどうかギルド長の確認が入る。 顔はどこから出たかわからない汁でぐしゃぐしゃ、ズボンも濡れているが何で濡れているのか考えたくない。
「小鬼殺し全員の気絶が確認できた。Aランク冒険者リアの勝利!」
「「「「うおおぉぉお!!」」」」
周りで観客となっていた冒険者達は、「すげえ! こんなに魔法使ってるの初めて見た!」と喜んでくれている。派手にやった甲斐があった。
「じゃ、こいつらの持ち物はお嬢ちゃんのもんだな。あっちに纏めてあるぜ」
端に纏めてあるバッグをアイテムボックスに入れ、使っていた武器も売れるからしまおうとぐるぐる空を飛んで倒れている4人に近づく。
服はばっちいからいいや。
あと1人は壁に吹っ飛んだんだっけ? そう思い振り返った瞬間、意識を取り戻した小鬼殺しのリーダーが両手剣を持ち突っ込んでくる。
「リア、危ない!!」
刺される! っと思った瞬間、小鬼殺しのリーダーが横に吹っ飛んでいった。
「ノア! ネージュ!!」
どうやらノアがエアバレットで吹き飛ばしてくれたようだ。
「リアさん、大丈夫ですか? 魔法が使えることはアイテムボックスで知っていたけれど、リアさんがこんなに強いとは思っていませんでした」
演習場に来てからナディアさんが見当たらないと思ったら、いざという時のために2匹を探しに外に行ってくれていたらしい。
「こいつら! リアを狙うなんて許せん! それに私たちを寄越せだと!? ふざけるのもいい加減にしろ!」
「そうだそうだ!! 俺たちはリア以外の言うことなんて聞かないぜ! 喉笛噛み切ってやる!!」
ノア、ネージュ、その人たち気絶しちゃってるから!
もう私が十分やった後だから脚でつつくのやめてあげてください。
「な、なんだその魔物は……!」
ギルド長がこちらを唖然とした顔で見ている。
「この子達がリアさんの従魔のノアさんとネージュさんです。」
「いや、そうじゃなくて……。それはグリフォンとフェンリルなのか??」
頷くと、ギルド長は首を振りながら頭に手を当て何かブツブツ言っている。
「いやいやいや、おかしいだろう。グリフォンとフェンリルが従魔だと? しかもスラスラと人語を話している……。俺は夢でも見ているのか??」
さっきまでキリッとクールだったギルド長さんがおかしくなってしまった。
元に戻るまでは時間がかかりそうだ。
「あの、それじゃあ私はもう帰りますので。
ギルド長さん、ナディアさん、ありがとうございました」
「はぁ、やっと森に帰れるぜ!」
「あぁ、これでゆっくり寝られるな!」
やっぱり小さくなって宿の厩舎は無理があったみたい。
次来る時はこの町に家を買うつもりで来よう。
来た時に騒ぎになったのでドキドキしながら町の門に並び手続きをするが、今回はこの町に来た時のような事態にはならなかった。
最初の時に門兵さん達には覚えられているし、ここ数日町を歩き回ったおかげで町の人にもだいぶ覚えてもらえたからね。
でも前回の手続きをしてくれた1番立派な鎧を着た人が今日はいないみたい。
散々問題を起こすなとか事件をおこすなとかいろいろ言われたので、「ほら、問題なかったでしょ! うちの子達はいい子なんだから!」と一言言ってやりたかったのに。
リアとノアとネージュについて一晩で調査と資料作りを終わらせクタクタになって休んでいるドナートさんや急ぎ帝都に報告に向かうこととなった領主様がこれを聞いたら「ふざけるなー!」と言いそうだが、領主の屋敷で何が起こっているのか知らないのでしょうがない。
「さ、家に帰りましょう。」
もうノアとネージュの存在は知られているのだから気にしない。
門を出たところで小さくなったネージュを抱え、身体を低くして待っているノアの背に跨る。
「行くぞ!」
ノアは身体を起こして走り出し、翼を広げ風魔法で風を纏わせると大空へ飛び立った。
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