5. 山狩りをします

5. 山狩りをします





 私はレイダーさんと共に農村ピースフルよりももう少し上の方に山を登っている。行く場所は昨日私が水魔法の大玉を作ったあの場所だ。今日の目的は山狩りらしいけど、一体何のために?こんなところに危険な魔物などいるのか?と思わなくもないが、今更なので黙ってついて行こう。


 そうしてしばらく歩いていると私はずっと気になっていた事をレイダーさんに聞いてみる。


「あのレイダーさん、聞いてもいいですか?昨日エイミーに言われたんですけど…パプリカみたいなことして!って。なんですかね?分かりますか?」


「あー……うん。まぁ、それはな……おそらくだが、あいつの中で『ひどい』『嫌いな』『騙す』みたいなことだと思うぞ?あまり気にしない方がいい。あいつは昔からそうだから。」


 うぅむ……。私が考えたことは当たっていたみたいね。やはりそういう事か。私は弱いからクビになったんじゃないと最初に言ったんだけど……。あの野菜娘は人の話を聞いていないのね……。


 まぁ……それでも私にはさっぱり分からなかったし、これからもわからないと思うんだけど。まぁいいか。それより今は山狩りに集中しよう。


 それから少し歩いていくとレイダーさんが立ち止まる。どうやら目的の場所についたようだ。


「さて、山狩りを始めるか!アイリーンお前さんはどんな魔法が使えるんだ?」


「なんでも使えますよ。昨日見たと思うんですけど、魔法には自信があります。」


「そりゃ頼もしい。とりあえず行こうか。あっ炎の魔法以外で頼むな。山火事とかになったら大変だしな?」


 レイダーさんはそう言って私の方を見てニヤリと笑う。これは単純に炎属性以外の魔法で倒せと言っているんだろうか。まぁならここは他の属性魔法で倒すとしよう。風魔法が使いやすいかな?そして私たちは山に入っていった。


 数時間後、私たちの前には30体ほどのゴブリンの死体があった。ほとんどレイダーさんの剣によって仕留められたものだ。正直レイダーさん強すぎではなかろうか……。本当に私が何もしていない間にもう終わってしまった。


 それに比べて私はというと、倒したゴブリンの数は10匹ほど。ただ1つ言えることは、レイダーさんは本当に強いということだ。その後もどんどん奥へ進んでいくと、今度はオークが数匹現れた。しかしレイダーさんはそれをあっさり斬り伏せていく。


 なんなんだこの人!?私いりますか?と思ったけど口には出さないでおこう。そんなことを思いながら後ろをついていった。


 さらにそこから数分歩くと、突然開けた場所にたどり着いた。そこには木で作られた家のようなものが建っている。


「あそこで一旦休憩にしよう。だいぶ歩いたしな。」


 レイダーさんの提案により一度そこで休憩することになった。それにしてもすごい数の魔物だった。一体どこから来たんだろ。


「ところでアイリーン。今更だが、お前さんは魔物討伐したことあるのか?」


「いえ、初めてです。今までは王宮にほとんどいましたし。魔物討伐とかの訓練などないですしね。」


「やっぱりな。動きが鈍いからそうだと思ったよ。でも凄いな。初めてでちゃんと魔物討伐できてるしな。そう簡単にできるもんじゃない」


 褒められると嬉しいな。これで、少しでも役に立てたなら良かった。休憩を終え再び山の中へと入る。するとまた魔物が現れた。あれは確かフォレストウルフってやつかしら?狼系のモンスターよね。数は4匹いるみたいだけど。


「よし。アイリーン、あの狼を今日の晩飯に村へ持って帰ろう。みんな喜ぶぞ。フォレストウルフの肉は絶品だからな。」


「本当ですか!?食べたい……」


 思わず本音が漏れてしまった。だって美味しそうなんだもん。


 それから私たちはその狼を倒しに行くことにした。まずはレイダーさんが切り込みを入れて、その後、私が風魔法ウインドカッターで首を落とす。それを何度か繰り返して何とか倒すことができた。


 その後は解体して袋に入れていく。その間にレイダーさんが血抜きもしてくれるようで、とても助かる。私は料理できないから。レイダーさんは手慣れているのか、テキパキと進めていってくれたのですぐに終わった。


 そうして来た道を戻る。帰る頃にはすっかり夕方になっていた。


「少し遅くなっちゃいましたね?」


「ああ。今日はありがとなアイリーン。お前さんのおかげでずいぶん楽だったよ。」


「いえ。お役に立てたなら良かったです。」


 そのあとは村につき、レイダーさんと店の前まで戻ってきた。中を覗くとカウンターでルーシーが寝ている。ちゃんと店番してほしいんだけどね。まぁいいや。するとレイダーさんが私に話してくる。


「アイリーン。お前さんに言っておこうと思う。『なんでも屋』はエイミーの小さい頃からの夢だったんだ。オレたちはお前さんのように、昔エイミーに助けられた。だから恩返しのために一緒にいる。お前さんもこれから力を貸してやってくれ。」


「まぁ私が出来ることならやろうとは思ってますよ。レイダーさん、もしかして私の事を疑ってました?」


「……まぁな。気を悪くしないでくれ。この歳になると少しは疑り深くなるもんさ。だが、今日のお前さんを見て大丈夫だと分かったさ。これからよろしく頼むぜ?」


「はい。こちらこそよろしくお願いします。」


 そう言ってレイダーさんは家に戻って行った。そして私もそのまま家に帰り、ベッドに飛び込んだ。今日一日で色々あったけど、悪い日ではなかったかな?みんなエイミーに助けられた…か。私みたいに事情がみんなもあるのね。


 こうして、私は私のできることでこの『なんでも屋』を盛り上げていこう。そんなことを考えながら思いながら眠りについたのだった。

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