見つけた恋
中学三年生の夏休みの前の日、突然、
体が目当てだって、すぐにわかった。
私は、もう体だけの関係はいらなかった。
「ごめん、やっぱり佐伯をそんな目では見れないから」
「そっか、わかった」
全然、悲しそうにしないんだね。
結局、やりたかっただけじゃん。
ドンッ…
「いたっ」
「紺野さん、ごめんね。怪我しなかった?俺、大きいから。怪我しなかった?」
「大丈夫」
亡くなった従兄弟がくれたクマのぬいぐるみに似ていた。
「クマさん?」
「えっ?」
「あっ、ごめん。笹部。大丈夫だから」
「よかった。じゃあ、俺行くね」
「うん、じゃあね」
笹部からの愛情を感じてから、私は急速に何もかもが楽しく感じなかった。
それでも、叔父との事を考えると私は他の人と縁を切りたくはなかった。
「なぁ?愛梨、最近不感症?」
「萩、そんな事ないよ。」
「そうなら、いいんだけど」
本当は、楽しくなかった。
「愛梨らしくなくないか?」
「そんな事ないよ」
「俺の事、嫌い?」
「充の事、好きだよ」
いつだって、嘘がつける。
やっぱり、楽しくない。
全然、楽しくない。
私は、家に帰ってクマのぬいぐるみを見ていた。
「また、それ見てんのか?」
「叔父さん」
「
「わかってます。」
「わかってるなら、いいけどな」
「許さないから、私にこんな事してるんですよね?」
「違うって言っても、愛梨は信じないだろ?鈴音だけが子供じゃないから…。愛梨、可愛いよ。ビクッってしちゃって。嬉しいよ」
こんな体いらない。
目を瞑って、セフレを思い浮かべる。
「愛梨、高校は女子高にしろよ。男遊びは、やめろよ」
「んんっ…」
「可愛いな。本当に、可愛いな。」
頬を撫でられる。
「だから、私の部屋で煙草をすわな……っっ、んんっ、ケホッケホッ」
「フッ、愛梨は俺だけ見とけ。俺は、こんなに愛してるんだ。わかるよな?愛梨」
「んんっ、んんっ、ケホッ、ゴホッ」
「可愛いな?愛梨みたいなのは最高だよ」
気持ち悪い、吐き気がする。
「また、明日な」
叔父さんは、出て行った。
私は、体を起こした。
ペッ…
ゴミ箱に吐いた。
「クマさん」
私の頭の中に、笹部が浮かんだ。
紺野さんごめんね。怪我しなかった?あの日の、笹部が浮かんだ。
「クマさん、私をこの場所から連れ出して」
私は、鈴音君がとってくれた大きなクマのぬいぐるみを抱き締める。
「クマさん、私に愛をちょうだい。」
笹部を思い出して、クマのぬいぐるみをギュッーと抱き締める。
笹部は、どんな風に人を抱き締めるの?
クマさんが、愛情をもらってるのが
クマさんは、原口さんが好きなのかな?
私にしてよ。
お願いだから、私にしてよ。
涙が流れて、止まらなかった。
クマさんに、愛されたい。
「愛梨、とれたよ」
8歳だった私に、7歳年上の鈴音君が、このぬいぐるみを取ってくれた。
「ありがとう」
「愛梨、お父さんにされてる事話して」
鈴音君に泣きながら話した。
それから、三日後。
鈴音君は、死んだ。
「愛梨が、鈴音を殺したんだ。わかるか?」
「わからない」
「愛梨が、鈴音に話すからだぞ」
「んんっ、ぅんんっ」
「可愛いなぁー」
思い出して、吐き気が襲ってきた。
「ぅっ、ォェー」
助けて、助けて、助けて。
助けて。助けて。助けて。助けて
私のクマさん、お願いだから…。
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