第9話 結婚って難しい……

 この日、呂琳のところへ相談人がやってきた。

 実家で暮らしている呂蓮だった。


「姉上に助けてほしいことがあるのですが……」

「うん! 何でも私に聞きたまえ!」

「どうやって結婚相手を決めたらよろしいでしょうか⁉︎」


 隣で聞いていた呂青は激しくむせた。


 う〜ん……。

 呂琳に結婚相談するのは危ないような……。


「簡単だよ! 何度かお話しして気の合う人に決めたらいいんだよ!」

「ですが私、殿方とお話しするのは苦手なのです。姉上みたいにスラスラと話せません。言葉が出てこないのです」

「どうして話せないの?」

「無理なものは無理なのです!」


 呂蓮は箱入り娘なのだ。

 知っている男性といえば呂布の部下や蔡邕の門下生くらい。


「張遼と結婚したら? 老人や女性に優しいよ」

「あの人はダメですよ! 籍は入れていませんが、心に決めた女性がいるのです! 私が正妻の座を奪うみたいじゃないですか⁉︎」

「蓮は父上の娘だからな〜。引く手数多あまたなんだけどな〜」

「私はですね……」


 呂蓮は恥ずかしそうに髪をいじる。


「気の合う殿方と結婚したいのです。兄上や姉上みたいに」

「じゃあ、周瑜殿にしたら。美男子でしょ。笛が上手いし。蓮とは釣り合いが取れているんじゃないかな」

「話を聞いていましたか、姉上! 周瑜殿は確かに風流男子です! ですが南方の出身なのです! 私と気が合うとは思えません!」

「ふ〜ん……難しいね、結婚って」

「姉上だって途中まで諦めていたじゃないですか⁉︎ 縁談が来ない来ないって!」


 呂蓮は違う。

 縁談の話が山ほど来ている。

 長安一の美少女と噂されているから当然だろう。


「縁談の話は受けたくないんだ?」

「少し抵抗があります。呂布の娘として見られます。私の内面を見てほしいのです」

「あはは! 蓮って意外と子供っぽいよね!」

「姉上に言われたくありません!」


 でも呂蓮は美人だからな……。

 内面を見てもらうのは難しいぞ、と腕組みする呂青であった。

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