(二)-10

 家に戻り、買ってきた物を冷蔵庫や戸棚などにしまうと、私は部屋を出て夫の仕事場に向かった。

 鉄製のドアの前に立つと、どこからともなく、声が聞こえた。夫の声にしては高い声だった。ドアの前で耳を澄ましていると、再び声が聞こえた。女性のあえぎ声だった。

 私は耳を澄ましながらドアノブに手をかけた。断続的に聞こえる声は、ドアの向こうから聞こえてくるのがわかった。だから私はドアノブを回した。そっと、音が出ないように。そしてそれを、ゆっくりと引いた。


(続く)

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