次の日?

 ――――――――チュンチュンチュン


 次の日、俺が朝起きるとその日はなぜか真冬の寒い時期ではなくて、春の麗らかな陽気が訪れようとしているのを感じた。

 

 突然の事でなにがなんだか分からないが、スマフォを取り出して日時を確認すると。


「なんで、二年前の登校初日に戻ってんだよっ」


 訳が分からないが、どうやらタイムリープ? してしまったらしい。


 日付が間違いないか念のため親に聞いても

「お前、頭大丈夫か?」

 と言われてしまい。もう何がなんだか分からない。


 しかし、現実に2年前に戻ってしまっているんだ。もう学力的には学校なんて行かなくてもそのまま大学入学資格検定が取れてしまう。が、親をどうやって説得したらいいか分からない。


 仕方なく、学校に登校したらそこには前回と違う幼馴染が居た。


「おはよう。たっくん♪ 元気?」


「た、たっくん?」


「そう。達也(タツヤ)だからたっくん。前からそう呼んでたでしょ?」


「まぁ、それはそうだけど」


 俺が戸惑ってしまっている姿を見ながら、とても晴れやかなアカネ。


 でも、高校に入ってから、そんな風に呼んでくれてなかったよな? そう思ったし。彼女の雰囲気もどこか違う。こんなに好意的ではなかった気がする。


 戸惑いつつも、新しい高校生活が始まってしまった。俺にとってはもう二度目なので、勉強なんて楽勝だ。すぐに成績は学年トップになっていた。


 そうすると今回はクラスの皆んなから、勉強を教えて欲しいと言われたり、女子が話しかけて来ようとするが、それをいつもアカネが邪魔をする。


「たっくんは、騒がしいの嫌いだからみんな静かにしてね?」

「たっくん、カッコ良くなったよね」

「たっくん、ココ教えてくれない? よくわかんなくて」


 そんな俺たちを周囲はお似合いのカップルだと言うんだ。一体どうなってるんだ。そう思ってアカネに聞いても。


「たっくんが何言ってるのか分かんないよ。アタシはアタシだよ」


 としか言ってはくれない。そしてある日、どういう事なのかが知りたくて、一回目の時にアカネに貸してしまった後、帰ってこなかった本を持って来る事にしたんだ。


「また、それ持って来てるんだ」


「また? どういう事だ?」


「なんでもない」


「なんでもなくはないだろ。いい加減教えろよ」


「その本貸してくれたら、教えて、ア、ゲ、ル♡」


 アカネがそう言いつつ指を口に当ててささやいて来た。


 そんなアカネは、楽しそうに笑っているんだ。でも、なぜだかその笑顔は悪い物じゃない気がした。


「わかったよ。貸せばいいんだろ貸せば。ホラ」


「ありがとっ。嬉しいっ♪」


「じゃぁ、良い加減教えろよ」


「そしたら、アタシの家に来てくれない? そうしたら分かるから………ね?」


「えっ」


 ――――――アカネの家に行くなんて小学校の時以来だ。


 俺にはもう魅力的に育ってしまった幼馴染の家に何も期待しないで行く事なんて出来ない。前回はアカネと喧嘩してしまったけれど。今はまだ喧嘩してないんだ。


 それに本を貸して欲しい理由だって教えてくれる。って言ってる。今の時点で彼女を嫌いになろうとする俺の方がおかしいに違いない。


 今の俺は期待してしまっている。幼馴染の家に行く事と、そして彼女の気持ちを知れると言う二つの事で、胸が高鳴っていた。


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、アカネは俺の手を握ってきたんだ。なんで、そんなに男と手を握れるんだ。そう思ってアカネの顔を見てしまった。


「たっくん緊張しているの?」


「そりゃ緊張してるさ。同級生の女の娘の家に行くんだぞ。緊張しない男子高校生がいるわけがない」


「なにその早口。カワイイ♡」


「お前こそ緊張しないのかよ………」


「んーん。たっくんだし」


 そ、それって男として見られてないって事なのか?


 そう思って落ち込んだが、どうもアカネの様子がおかしい。手が段々と汗ばんで来てるんだ。そして改めて彼女の顔を見ると頬が紅潮していた。


 どうやら緊張していたのは俺だけじゃなかったらしい。そう思ったら、とても嬉しくなった。


 そして、ついに訪れたアカネの家。彼女の自室には、肌色の多い本が山の様に置かれて居た。


 一体どういう事なんだ。アカネがオタクだったなんて知らなかったぞ。


 そう思ってアカネの顔を見た。そうしたら彼女はとても晴れやかな顔で喋りだした。


「たっくんの趣味に合わせたんだよっ! こういうの好きでしょ?」


「えっ。好きとかじゃないよ」


「ウソだっ。この本だって、女の娘がいっぱい出てるじゃない!?」


 そう言って、俺から借りた本を取り出した。確かに肌色は多いが中身は健全なライトノベルだ。単にそういう本も読むってだけだ。


「それ、別に変な本じゃなかっただろ。それに読んだんだろお前?」


「確かに、そういうのはなかったけれど。でも、女の娘がいっぱい出てるじゃないっ」


「それは、そういうもんなんだよ。別にそれを求めてる訳じゃない。と言うかなんで、お前もう読んでるんだ? 今日貸したばかりだぞ?」


「あっっ」



 ――――――俺たちはベッドで横並びに座って落ち着いて話しをする事になった。


 話を聞くとどうやら、彼女は俺よりも前の時間にタイムリープしていたらしい。

 

 中学生3年の時に、すぐに俺に話しかけたらしいんだが俺の方が記憶がまだ戻ってなかったから話しが噛み合わなかったそうだ。


 だからもう一度、近くなるタイミングを高校生の時に隣の席になるのを待っていたんだとか。


 まぁ、途中で薄々そうじゃないかとは思ってたんだ。だってアカネは前回と違いすぎた。なんと言うか、より俺好みの女の娘になってたんだ。


「なぁ、前回のは、結局どういう事だったんだ?」


「アタシにも分かんないけれど。アタシたちが最後に喧嘩した日にね。あの後、過呼吸で気を失ってしまったのよ。そしたらタイムリープしてた」


「は? 過呼吸? なんでさ?」


「アンタに振られたからに決まってるじゃないっっ!! 本気の告白だったのにっ!!」


「いや、あんな言い方で分かるわけないだろ。ツンデレじゃあるまいし」


 (今、思い返しても全然分からないぜ…………)


「だって、この本の娘はそういう感じだったじゃないっ。だから練習したのにっ」


 そう言って、俺が貸した本を見せて来た。このライトノベルのヒロインは肌の露出が多くて、主人公に対してツンデレをするキャラクターなんだ。


 最後にこのヒロインと主人公は結ばれる。が、その途中でなんども喧嘩をするんだ。なにもそこまで再現しなくていいじゃないか………。


「いや、あれはフィクションだから良いんであってな。現実だと痛いだけだぞ?」


「ふぇぇっ。そ、そうなの!? アタシてっきりこう言うのが好きだと思って、なんども読んで練習したのにぃ」


 どうやらアカネはドジっ子だったらしい。真実を知った今なら前回の事がなんだか全て可愛く思えてくるけれど。知らなければ単に痛いだけだ。


「それで、どうして本を返してくれなかったんだ。返してくれたらあんなに怒らなかったのに」


「なんども読んでる時に、本を汚しちゃって………新品買った方が喜ばれるかなぁ。って思ってました。ごめんなさいぃ」


 それならそうと言ってくれっ。なんで、そこでツンデレをしようとするんだっ。ちょっと疲れて来たぜ……………。


「もう、わかったよ。いいよその事は………」


「許してくれるの? それなら、よかった♪」


 俺の言葉でアカネの表情がコロコロ変わっている。そんな彼女は、今とっても嬉しそうだ。



 ―――――そうやって、俺たちは約3年弱の時間を使ってやっと仲直りが出来た。


 今回の高校生活はとても幸せな日常になりそうだ。


「それじゃ、アタシと付き合って貰えませんか? たっくんの事がずっと、ずーと好きだったの」


「ありがとう。嬉しいよ。今は、君のちょっとドジっ娘な所もとても魅力的に思えるよ」


「何よっ。その言い方っ。イジワルっ」


 そう言って、そっぽを向いてしまった彼女。その横顔も今は愛おしい。


 俺たちは今度はきっと間違えない。そう思って、どちらかともなくお互いの温もりを感じるためにハグをした。


 初めて感じる彼女の感触はとても心地よく、そしてとても良い匂いがした。


おわり

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お知らせ


次話で、キャラ紹介とイメージ画像を投稿します


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あとがき


こちらの作品は『ホメテノバス』様のYoutube動画向けに書いた短編になります。

投稿については許可をいただいております。


構想的には続きがありますが、動画の再生数次第で動画作成するか

動画と関係なく続き書くかになります。


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