第13話 召喚魔法?


 地球産の品物が召喚購入できる、なかなかチートなスキルだと思っていたが、まさかレベルアップ制だったとは。


「今の俺のレベルは3か……」


 倒した魔獣がスライム、グラスマウス、ホーンラビットの三種類だけなので納得の結果ではある。


「まだ初日だしな。レベルが幾つになったら、他の店舗の品物が召喚出来るようになるんだろうな?」


 購入先店舗の欄をタップしてみる。

 利用できるショップは黒字で、他の店舗名は薄い灰色の文字で表示されていた。

 某100円ショップの店舗名の下には300円ショップの名前が続いている。

 順当に考えるなら、次に解放されるショップはこの300円ショップなのだろう。


「100均商品よりは品質が上がって、品物の種類が増えるんだろうな」


 100円ショップにはたまに買い物に行っていたが、300円ショップには行ったことがないので良く分からない。

 なにせ、ファンシーな雑貨中心の店だったのだ。キラキラ系の可愛らしい雑貨や北欧風のデザインの日用品など、女子が好きそうな品揃えだったように思う。


「ナツは喜びそうかな。クールぶっているけど、可愛い雑貨に目が無かったし」


 十代の少女が親元から離されて、異世界に拉致されたのだ。

 荒んだ気分が少しでも緩和されるようにレベル上げを頑張って、可愛い雑貨を送ってやろうと思う。

 

「で、肝心の100均商品は…っと。おお、ちゃんと食品も充実しているな。ありがたい」


 100円ショップも幾つか知っているが、中でも一番規模が大きな店舗が召喚魔法ネット通販では使えるようだった。

 日用品や雑貨のみの店舗もある中で、食品をそれなりの種類で取り扱っている店舗が使えるのは、素直に創造神と日本の神々に感謝しようと思う。


「手持ちの食料が無くなっても、100Pで召喚購入出来るのは助かるな。缶詰やパン、カップ麺にパスタ、素麺まであるのか!」


 様々な調味料はもちろん、サラダ油にパックご飯まであった。

 ペットボトル飲料に菓子類も充実している。


「昔の100均はマイナーなブランドの食品ばっかりだったけど、最近はメジャーブランドの品もあるんだな……」


 一番人気のインスタント麺が小さめのサイズながら、しっかりと扱っていて驚いた。

 菓子も人気メーカーの物が普通に販売されている。100円ショップ、侮れない。


「日用品、雑貨類も大量にあるな。靴下や下着まであるのか。キャンプ道具? テントにハンモックまで!」


 驚いた。あいにく100Pでは購入出来ないため、品名は反転していたが。

 

「へぇ、面白いな。買えるようになったら、試しに召喚してみよう。ハンモックは持って来ていなかったから、ちょっと欲しいな……」


 叔父から借りたワゴンは収納力が抜群でルーフラック付き。テントや寝袋などの嵩張る荷物はルーフラックに括り付けたので、それなりに荷物を詰め込めることは出来た。

 が、流石に四人が四泊五日を過ごすための荷物は大量で、ハンモックは泣く泣く持参を諦めたのだ。


「生鮮食品だけでもクーラーボックス二個分あったからなぁ……」


 ちなみに野菜や果物類は、山小屋から車で三十分ほど走らせた先の道の駅で購入するつもりだったので、あまり持ってきてはいない。


「さすがに100円ショップに野菜は売っていないから、森で何か採取出来ると良いけど」


 最近の100円ショップには実はサプリが売っている。最悪ビタミン不足はそれで補うことにすれば良いが、出来れば新鮮な野菜や果物は食べたい。


「ん? 野菜の種が売ってる! 万一、野菜類が見つからなければ栽培する手もあるな」


 家庭菜園には全く興味がなかったから、販売品目を見るまで、気付けなかった。

 野菜の種の種類は意外と豊富だ。

 プチトマト、きゅうり、ナス、にんじん、ハツカ大根、オクラまである。葉物野菜も豊富で、レタスにほうれん草、白菜に小松菜、チンゲンサイ、ベビーリーフにサンチュまで!


「豆類も植えよう。お、スナップえんどうだ。コレは美味いから絶対に植えるぞ。しそとネギ、ブロッコリーもいいな」


 うきうきと欲しいものリストに追加していく。100Pとお手軽な品だが、一気に召喚するとポイントもすぐに無くなりそうだ。

 野菜の種や園芸用品は大森林に到着して、拠点を構えてから考えよう。


「意外と楽しいな、100均商品を眺めるの。知らない驚きがたくさんある」


 普段、ショップに寄っても買うのは消耗品の文房具や日用品くらいだったので、この品揃えは想像以上だ。

 まさか100円ショップにクッションやブランケット、化粧品まであるとは思わなかった。

 コンテナケースはキャンプにも役立ちそうだし、かなりお得かもしれない。


「あと、皿やコップなんかも多いな。美濃焼き? ブランドの食器まであるのか……」


 こういう品は異世界で転売するのも有りだろうか、とふと思う。

 よく考えれば、こちらの世界の金がない。

 しばらくは森で暮らすにしても、たまにはこっそり人里にお邪魔してみたい気もするので、考えておこう。


「さて、キリがないから、このくらいにしておこうか。ああ、アイツらに調味料だけは先に送っておいてやろうかな」


 迷ったが、塩胡椒と醤油、マヨネーズの三点を召喚購入して、従弟たちに送っておいた。

 ちゃんと仲良く分けて大事に使えよ。


『調味料を送るので食事はしばらく、これで乗り切れ。一日に一つずつ、色々と送ってやる。ちなみに今、俺が購入できるのは100円ショップの商品だけなので、あまり期待はしないように』


 上記のメールも送る。悲喜こもごもの返信が速攻で返ってきた。向こうも苦労しているらしい。

 少しでも快適に暮らせるように、しばらくは100均商品をこつこつと送ってやろう。


 ステータスボードを閉じて、アイテムボックスから創造神に貰った魔法書を取り出した。

 生活魔法の灯りライトが消えるのは、あと三十分ほどか。

 それまでは、この魔法書で知識を得よう。

 動物の皮で作られたらしき、豪奢な装飾が施された古書を開き、魔法取得のためのページを開く。

 興味深く読んではいたが、疲れが溜まっていたのだろう。そのまま寝落ちてしまった。

 それが、異世界生活初日の終わり。

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