第5話〜純白の桃源郷〜
ソアラという名前の、新たな仲間が加わった。
『ソアラくんは、地底国ニャガルタ出身のネコ武闘家よ。抜群の攻撃力と素早さを買われ、
「お、おい! オレはトレーニング中だったのに! 急すぎるぜ!」
ソアラはミランダに文句をぶつけたが、既にミランダは光の中へと姿を消していた。
ネコだけが暮らす地底国ニャガルタ——そこに住むネコたちはボクらと違って、服を着て二足歩行で暮らしてやがるんだ。ニンゲンのように、手先も器用に動く。
ソアラって奴もニャガルタ出身だから、空手着姿で現れたって訳だ。
「しゃあねえなあ、いきなり実戦か。じゃあ行くか……聖なる星の……」
ソアラは早速、転身の口上を口にする。チャンスだ。よく聞いて、思い出せばボクも転身出来るはず……だったが、あまりに早口で、ちゃんと聞き取れなかった!
「熱血武闘家、ソアラ!」
ライトブルーの光の中から、転身したソアラが姿を見せた。ソアラの頭にはハチマキが巻かれ、白の空手着は空色に染まっている。
「いっちょ、やってやっか‼︎」
ソアラはそう言って窓をガラリと開け、ロボットのカエル軍団の方へ飛び出して行った。
……クソッタレ! 思い出すチャンスだったのに!
フツーのネコであるボクも、転身さえすれば同じように二足歩行になれるんだ。そして身体能力が強化され、20メートルの屋根の上でさえ飛び乗れるくらいのジャンプ力、コンクリートの壁を一発でブチ破れるほどのパンチ力が身につくんだ。
そしたらあんな変なロボットどもなんざ、一網打尽にしてやれるのに。そしてシャロールに「ゴマくん、すごーい!」とでも言わせてやれるのにィィッ!
「はぁッ! てやあッッ‼︎」
ソアラは縦横無尽に駆け回り、自分の何倍ものデカさもあるカエルロボットの数々を、正拳突きや飛び蹴り、回し蹴りなどの格闘技で次々とブチ壊していってやがる。
「ソアラくん、すごーい!」
窓から外を見ていたシャロールは、頬に両手を当てて顔を赤らめ、そう口にした。
スライムたちが、ソアラを応援するかのようにピョンピョンと跳ねている。次々と倒されるカエルロボットを見ていた敵の大将クリスの顔からは、笑みが消えていた。
ただジッと見ているしか出来なかったボクは、歯を食いしばり、地団駄を踏んだ。
——その時だった。
シャロールの穿いていた紺色のスカートが窓から吹き込んできた風を受け、ふわりと舞い上がる。
この瞬間、「スカートの中へ視線を向けよ!」との、聖なる導きが聞こえてきた気がしたんだ。
この導きには、従わなければ!
直感的にそう思ったボクはすぐさま視線を、舞い上がった紺色のスカートの中へと向けた。
そこにあったのは——文字通り、桃源郷だったんだ——!
「白だ」
「え?」
何も分かってねえシャロールがこっちを向き、頭上にハテナマークを出した。
——その次の瞬間。
ボクのニューロンとシナプスは突如活性化し、脳内からはモルヒネ様の物質がドピュドピュと分泌され、頭の隅々までが冴え渡ってゆく。同時に全身に、真っ黒な夜空を焦がすキャンプファイヤーの如き爆発的なエネルギーが溢れ、ボクのテンションは最高潮に達した!
「そうか! 白だったのか!」
「え、何ゴマくん、いきなりどうしたの……?」
白き桃源郷への
その当時、悪に染まっていたニャンバラ軍が平和なネズミの国に攻め寄せた時、仲間たちと力を合わせ必死に戦い、守り抜いたこと。地底国全体が大災害に見舞われた時、ボクらの守護機神〝スター・マジンガ〟と共に、災害をもたらした3体の
かつての勇者としての記憶がひとつながりになり、それは走馬燈の如く蘇ってゆく……!
「きたあァァーーーー! きたきたきたきたきたきたきたきたきたァァァァーーーーッ‼︎」
ボクは冴えに冴え渡ったアタマの中に浮かんだ——転身の口上を口にした。
「聖なる星の光よ! 我に愛の力を!」
——完璧だ。
全身が紫色の光に包まれていく。右手に魔剣ニャインライヴ! 左手に魔力の盾! そして体には勇者の鎧が現れ、装備されていく——!
かつての戦いの時の感覚が、蘇る。
転身を完了し2足で立ち上がったボクは、無意識に叫んでいた。
「
純白なる
暁闇の勇者ゴマ、ここに復活だ!
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