霧島ツーリング

「フェリーは何時なの」

「十七時発やから十六時やな」


 今日はお待ちかねの霧島ツーリング。まずは湧水町に出て、そこから国道二六八号を北上して、みやま霧島ロードに入るはずだけど、


「本当にこんなところを曲がるの」


 これって裏道?


「そこのとこ右に入るで」


 えっと思ったけど二車線か。なんか蛇行してるような、


「合ってるの」

「ほら見てみい、宮崎道が見えるやろ」


 なるほど側道みたいなものか。


「これ右や」


 右側に見えてるのが霧島のはずだから正解か。これがみやま霧島ロードって事だろうな。


「このまま道なりに走っていけば小林に着くわ。途中で県道四〇九号に入れたら、県道一号にぶつかるで」

「その県道四〇九号ってわかるの」

「行ってみなわからん」


 まあそうか。でも道は快調、広域農道は走り安いのよね。ずんずん走って行ったんだけど、


「ちょっとストップ」


 間違えたか。


「いや、そろそろのはずやから確認や」


 ナビ上ではそろそろだけど、そうだね次に右に曲がる道のはず。


「たぶんあれやろ」

「なんにも案内ないけど」

「曲がってみる」


 なんとなくヤバそうな道だけど、あっ、県道四〇九号ってなってるじゃない。コトリ、偉いぞ。


「ユッキーに褒められても嬉しないわ」

「じゃあ貶そうか」

「喧嘩売っとるんか!」


 またなんか狭いとこに入ったけどだいじょうぶかな。一応霧島に向かってるから方角は間違いじゃなさそうだけど、なんか二車線の道に出たけど、


「県道一号、えびのスカイラインのはずや」


 スカイラインと言うには畑の間の道だな。あっ、あった、霧島国立公園って書いてあるから大当たりだ。突然それっぽい道になったじゃない。ここを上がればえびの高原になる道だ。十四キロって出て来たよ。


 今回のロング・ツーリングで一番ツーリングっぽいじゃない。ここがえびの高原か。なんとなく高原って聞くだけでテンションが上がるじゃない。


「ユッキーはなんでもテンション上がるんやな」

「コトリは上がらないの」


 あそこの駐車場に入るみたいだけど、


「えびの高原の見どころ言うたら池巡りや」


 そうなんだ。これが不動池か。火山湖だろうけど水の色がコバルトだ。さて次は、えびのエコミュージアムセンターにバイクを置いて、


「白紫池と六観音御池に行くで」


 カケルの顔色が変わってるよ。


「歩きですか」

「ここからじゃ見えん。心配せんでも片道四十分もあったら着く」


 コトリが目指したのは二湖パノラマ展望台。この二つの池をまともに巡ったら二時間はかかるそうだから、ダイジェスト版にしたみたい。でもこれは見ておかないと絶対に損ね。戻ってきて県道一号を快走。


「ここや」


 大浪池登山口か。


「また歩きですか」

「ああ、さっきと同じぐらいや」


 なるほど! さっきの池をダイジェスト版にしたのはこっちを回るためか。こっちの道もなかなかね。溶岩石で作った歩道か。結構登るけど、へぇ、ちゃんと御手洗付きの休憩所まであるじゃない。この辺から開けてきて、登り詰めると、こ、これって、まさに、


「これを見んと、えびの高原に来た意味がない」


 その気持ちはわかる。韓国岳をバックに大浪池が見事にマッチしている。これは歩いたものに与えられるまさに御褒美。このままえびの高原を下り、霧島バードラインに。


「ツーリング動画でよくあるバードラインは、県道三十号でえびの市に行くやつやけど、さすがに全部は走られへん」


 ここでお昼。適当に見つけた蕎麦屋にしてた。そこから霧島東神社に。まず龍神伝説が残る御池を見て神社に。参道を登り詰めると小ぶりだけど立派な神社がある。お参りを済ませて、


「後は高原町に出て、都城を抜けて志布志や」


 ナビ上でだけど六十キロで一時間半ぐらいみたい。四時までに乗船だから、


「遅うなっても三時半ぐらいに着くやろ」


 無事乗船できて。


「おもしろかったね」

「ほいでもお土産はイマイチやったな」


 とりあえず薩摩黒豚と薩摩地鶏も送っといたけど、あんまり名産品って感じのものが目に付かなかったな。薩摩揚げを送るのは無理あるしな。それとえびの高原は素晴らしかったけど、


「そやな。さすが阿蘇はライダーの西の聖地やと思たわ」


 優劣を付けるものじゃないけど、どっちをもう一度走ってみたいと言われるとね。


「そやけど、こっちの方が良かったとこもあったで」

「それは間違いない」


 だってカケルを拾えたもの。


「拾いもんや」

「そうなってくれないと困るけどね」


 それは帰ってからのお楽しみ。明日からのお仕事頑張るぞ。


「いっつも思うんやが、フェリーが着いた日ぐらい休みにしようや」

「文句は言わない。休みは休み、仕事は仕事」

「へぇ~い」

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