第2話 予想以上の力

 ダンジョンに潜ると決めた次の日。

 ギルドに来ていた。


「こんにちは! 樋口さん」


「あらぁ! 翔真くんじゃない! なに? 今日も雑用手伝ってくれるの? 丁度、鉱石の振り分けが────」


「今日は違うんです! 蘇芳おいで!」


 ズンズンと入口から歩いて来た巨人の蘇芳。


「えっ!? 魔物!?」


 樋口さんはのけぞって驚いている。

 そりゃあ、こんな魔物見たら驚くよな。


「俺のテイムした魔物なんです」


「ええぇぇ!? あんなにテイムできないって言ってたのに、こんな魔物テイムしたの?」


「はい……偶然懐いてくれまして」


「めちゃめちゃ強そうじゃない! よかったわね! ってことは、もしかして?」


「はい! ダンジョンに潜る申請をしに来ました!」


「ダンジョン申請に来たのね! ギルドカードの使い方は覚えてる? 最初に説明したけど」


「実は……ちょっと忘れちゃって……」


「ふふっ。そうよね? 最初に登録してからは、ずっとこっち側で手伝ってくれてたものね? じゃあ、説明するわね。」


「すみません! お願いします!」


「まず、ギルドカードは、カードを握りながらステータスという言霊で自身のステータスが浮かび上がる。これは覚えてる?」


「はい! この前使ったので」


「ならいいわね。次に、マップという言霊で現在いる所から半径10キロの地図が浮かび上がり、ダンジョンのある所には赤い点が付くわ。青い点は最寄りのギルドよ。ここまではいい?」


「あぁ! 思い出しました!」


「もう1つ、これはギルド員を示すための昨日でプルーフという言霊でギルド員の証明書が浮かび上がるわ。やってみて?」


「はい! プルーフ!」


ブンッ


 と浮かび上がったのはギルドの証明書


――――――――――

NAME:真仲 翔真

RANK:F

――――――――――


 名前とギルドランクが表示される。

 その上にはギルドの太陽のようなマークが浮かんでいる。

 ダンジョンから出てきた時の開放的な眩しい感じをイメージしているそうだ。


「出ました!」


「うん! オッケー! あとは、ギルドランクはFからE、D、C、B、Aと上がっていって最後の1番上はRよ。解放、リリースね。貴方達はこの世界を、ダンジョンから解放する解放者(リリーサー)なのよ」


 解放者とは、このダンジョンに蝕まれていく世界を救うために設立されたダンジョン攻略部隊なのだ。


「ランクと無縁の生活してたんで忘れてました。ありがとうございます!」


「うん! 思い出してくれてよかったわ。では、このダンジョン申請に署名を。でも、これを書いて、もう一度来るまでの間に1ヶ月が経過したら死亡したとみなすわよ?」


「はい! わかりました! 気をつけます!」


「よろしい! 無理はしないのよ? また無事に会えることを祈っているわ」


「はい! 無理はしませんよ! また戻ってきます!」


「うん! 行ってらっしゃい!」


「行ってきます!」


 受付を後にし、ギルドを出る翔真。



 ギルドを出た後、内部では騒ぎになっていた。

 周りにいた解放者達は翔真の引き連れていた魔物の威圧感に圧倒されていた。


「なぁ、あんな魔物見たことあるか!?」


「いや、見たことがねぇ」


「そもそもあんな魔物どうやって連れてきたんだ?」


「魔物を連れてるってことは、テイマーなんだろうな」


「テイマーって弱い魔物しかテイム出来なかったんじゃないのか?」


「いや、ただ成功しないというだけで、テイム自体は可能なのかもしれない……」


「あんな強そうな魔物がテイムできるとなると、職業の認識がかわってくるよな?」


「あぁ。これから荒れるぞ?」


「でも、さっきのやつがどうなるかは楽しみだよな?」


「確かにな。ギルドで見かけたやつはどうなるか見守って教えてくれよ」


「「「「おう」」」」


ギルド内は翔真の話で持ち切りになっていた。



 ギルドを出た翔真はそんな事は知らずにダンジョンへと向かうとしていた。


「あっ! そういえば、回復薬買ったり傷薬買っておかなきゃ!」


『魔力回復薬も必要じゃない?』


「魔力使うか? あっ! 俺なんにも武器持ってないや」


『僕が魔力使うからだけど、武器って……翔真も戦うの?』


「訓練はしてたんだよ。でも武器買う余裕はないなぁ」


『あっ、大丈夫だよ。僕の骨のストックで武器を生成出来るから』


「そうなん? 小剣と盾がいいかなと思ってんだけど」


『うーん。翔真のステータスなら少し大きめの剣でも片手で大丈夫だと思うよ?』


「そんなもんか? ま、作って貰えるなら買わなくていいか。あっ! ピッケル買わないとな。鉱石とって稼がなきゃ!」


 薬屋で回復薬と魔力回復薬を買って、道具屋でピッケルを買ってダンジョンを目指す。

 稼げた未来を想像して町の外に出る。


「マップ!」


 ギルドカードを握りマップを表示する。


ブンッ


 周囲のマップが出る。

 赤い点のダンジョンを目指す。


「近いのは、南に7キロくらいか……よし! 走っていくぞ!」


『レッツゴー!』


 走る走る。

 あっという間にダンジョンについた。


「おぉ。ここか!」


 不自然に森の中に扉が現れている。


『はい。武器と防具』


 蘇芳の生成してくれた武器は少し大きめの太刀。

 防具は胸当てと肘当て、すね当て、腕につけるスモールシールドであった。


「おっ! すげぇ! サンキュー!」


 意気揚々とダンジョンへの扉を開ける。


ギィィィィィーーーー


 扉を開けると中にも森が広がっていた。


「おぉ! おれがダンジョンか!」


『翔真? 僕が先行して行こうか?』


「そ、そうだな。俺ダンジョン初めてだし、蘇芳が先頭の方がいいかもな」


『オッケー! じゃあ、付いてきて!』


「ありがたい!」


 蘇芳の後をついて行く。

 前には森の中に陽が差す光景が続く。


「シャーー!」


『あっ。ホワイトスネーク』


「うおっ! なんだ!?」


『翔真、戦ってみる? こいつデカいだけだから』


「そ、そうなのか!?」


 立ちはだかったのは全長5メートル程の白い大蛇の魔物であった。

 前に出てみるが。


「シャーッ!」


 大蛇の頭突きが来る。


「うおっ!」


 咄嗟に転がって避ける。


『翔真! ビビらずに行って大丈夫! そいつステータス低いから! 攻撃食らっても平気だって!』


「そ、そうか?」


「シャーッ!」


 咄嗟に左手のスモールシールドでガードする。


ガーンッ


 思ったほどの衝撃はない。

 大蛇の頭がすぐそこにある。

 太刀を振りかぶった。


「おりゃーーー!」


 力いっぱい振り下ろす。


ズパーーーーーンッ


 衝撃波でその先の木々も切断される。

 一瞬遅れて。


ドドドドドドドドドドッ


 木々が倒れる音がする。


『おぉっ! 翔真凄いじゃん!』


「えっ!? これって武器のせいじゃね?」


『そんな事ないって! やっぱ、ステータス高いからじゃない?』


「俺は人間の平均は分かんないんだよな! そういう話できる人とか居なくてさ……いや、居ないわけじゃないけど、そいつもステータス参考にならないから」


『ふーん。でもさ、人間ってステータス1番高くても1000未満じゃない?』


「えっ? そうなの? ………………まって、人間辞めたのか俺は……」


 両手を地面につけ、膝まづいて落ち込んでいる。


『ま、強いからいいんじゃない?』


「うーん。まぁ、そうだな。確かにそうだ!いい事にしよう!」


 開き直った翔真。

 ダンジョン探索はまだ始まったばかりだ。

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