ドキドキ!?天真爛漫魔法少女リリカ登場!!
「なんか俺達の事、町の皆様見ておりませんか?」
「当たり前だろ。血塗れでオークの死体引きずってるんだぞ」
初クエストをクリアした次の日。あの後、返り血塗れで帰ってきた俺たちは、町の人達の冷ややかな視線に刺されながら酒場へと戻った。
「てんちょー!!」
と、シーニャさんはプチパニック。奥からはまたヒバチさんのマスターと呼べという声が聞こえた。そのやり取りはどうやらお約束のようだ。聞いた話だと、この世界では魔物の討伐に着替えか【洗浄玉】という体を綺麗にする
知らなかったのか?とステラに聞くと、弓矢が武器だし使ってはこなかったとの回答。そりゃそうか。
初クエストでオークを討伐した俺達は『オーク殺しのチヒロ』と話題になった。レベルもめちゃくちゃ上がっていたし注目の的だ。これでパーティメンバーも増えるだろうと思ったけれど、現実はそうもいかなかった。
「なあ、昨日の人達みんなどこ行ったんだ?」
「もうクエストに行ったんだろう。大体の人達はどこかのパーティに入っているしな」
コミュ障2人にはメンバーを増やすことは出来ませんでした。冒険者の方々距離を縮め方凄いですね。汚い返事しか2人とも出来ませんでしたよ。そしてオークフィーバーももう治まった。でも声をかけてくれる人が増えたのは良かったな。
ちなみに余計に倒したオークの討伐料と素材量は合わせて金貨4枚。4万円くらいと考えると安い気もする。
今はカウンターにもテーブルにも人もいない酒場で朝飯中。なんでこの世界にもあるんだよって感じだけど和食。セレナーデの塩焼き定食ってやつだけど、セレナーデって人魚とかじゃ無かったっけ?
オークを倒したかといって、受けられるクエストは変わらない。レベルも結構上がりはしたけど、そこまで近場のクエストは無い。
「小金を稼ぎつつ、強くなるのみだ」
冒険者の中には、上を目指さないで日銭稼ぎのみで終える人も相当多いらしい。ステラも前はそのつもりだったよう。
「まあそれしか無いか」
コップを返しに行こうと立ち上がると、カウンターの方から声がする。見てみると、金髪ロングでピンク色のセーラー服のような恰好をした小柄な少女が手続きをしている。中学生くらい?いや下手すると小学生かも知れない。そのレベルの見た目だ。詳細は聞こえてこないけど、何かをシーニャさんに訴えている
あ、目が合った。こっちに歩いてくる。通報されるのか?と思ったけど。
「ねえねえ!リリカをパーティに入れてくれない?」
開口一番、飛び出た言葉がこれ。いきなり何を言っているんだこの少女は。高そうなブローチを付けているけど世間知らずのお嬢様なのだろうか。机に手を置いて俺のことを見上げてくる、小動物のような眼には一転の曇りも無い。
「えーっと、リリカ、ちゃん?」
「リリカはリリカだよ!」
「そっかぁ。どうしてパーティを組みたいのかな?」
例の如くステラは知らんぷりをして窓の外を見ている。年齢はわからないけど、子供と話す時の口調ってこんなんで良いんでしょうか。
「さっきね、受付のお姉ちゃんにね、年齢的に登録出来ないって言われちゃったの。でもね、実績?があったら良いよって言ってくれたから。実績を作りたいなーって!」
「年齢的にって、いくつなのかな?」
レディって問題でも無いだろう。これは必要な質問。
「14歳!」
ギリギリ犯罪じゃないような、やばいような。中間の年齢といったところだな……
「登録は出来ないけどパーティは組めるの?」
「お姉ちゃんが確認してくれたよ!」
ヒバチさんの仕業だろう。規則は規則だけどチャンスをやろう!!みたいな。多分。こういう厄介な面もあるんだなヒバチさん……
「驚いたな。君、桃美族か」
「うん、そうだよ!」
窓の外を見ていたはずのステラが、リリカの方を向いている。
「桃美族?」
小声で聞く。
「海を渡った先にある国エイストに暮らしている民族だ。特徴は瞳が桃色で、魔力が高い」
中二病が考えたような設定だな。爆裂魔法の魔法使いも設定そんなんじゃなかったっけ?設定使いまわしてんじゃねえよ神様さんよ。
「しかもね、リリカ天才なの!実力はあると思うんだけどなー……」
自分で天才って言うような奴にロクな奴はいない、と思うんだけど、なぜかこの子の言うことは信用したくなってくる。年下の愛嬌だからだろうか?
「わかった。じゃあ特別に入れてあげよう。カウンターに行くぞ」
「やったー!」
「チヒロ君!?」
飛び上がって喜ぶリリカとは逆に、立ち上がった俺の腕を掴み静止してくる。ガタンと音を立て机が揺れる。
「良いじゃん別に。パーティメンバーが欲しかったんだし」
「いやそれもそうなんだが、厄介ごと背負い込むのもなんだし、それに……」
「それに?」
言いづらそうに俯き、細い声で言う。
「子供の扱い方がわからない」
……んなもん俺もわからねえわ。
「へーお姉ちゃん、リリカに実力で負けるの怖いの?」
その様子を見ていたリリカが挑発的にステラに言う。
「そうだよねー、リリカ天才だもん。桃美の天才になんて勝てっこないもんね」
ステラの様子を見る。俯いたままではあるけど、顔が赤くなって震えているのがわかる。
あれ、めっちゃ怒ってない?
「ス、ステラさーん……?」
「……怖くなんて無い」
「え?」
「こわkなんtない!」
日頃大声なんて出さないもんだから変換されてないような噛みっ噛みの口調。
俺の中のステラがどんどんキャラ崩壊していく。ふふふ、私が君のような子供を怖がる訳無いじゃないか。それに、私の方が天才だ。とかてっきり言うかと思った。
ステラは勢いよく立ち上がり、リリカに指を突き付けて宣言する。
「次のクエストはゴブリンの討伐、どっちが多く倒せるかで勝負だ!」
「良いよー。リリカが勝つに決まってるけど」
なんか勝手に勝負が始まってしまった。二人の間に火花がバチバチいっているのが見える。カウンターからこちらに困惑した顔で見ているシーニャさんに笑いかけ、どこの世界でも女子は怖いなーとか思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます