痛み

「「浩美!」」


お父さんとお母さんが来てくれた。


「まだ見つからないのか?」

「うん、どこに行っちゃったんだろ?」


ちゃんと歩けるから、行こうと思えば遠くまででも歩いて行ってしまうかもしれない。


_____また、事故にあったりしませんように


祈りながら探す。


「あ、あれは!」


お母さんが指差した、反対車線の歩道。

角を曲がる誠君らしき姿が見えた。


「あっ、待って、誠君、そっちに行かないで!あっ!きゃっ!!」


見失ってはいけないと、急いで後を追った。

その拍子に、足元にあった縁石につまづいて転んでしまった。

脛のあたりを縁石ですりむいてしまった。


「浩美!!大丈夫か!」


お父さんが駆け寄ってきた。


「あいたたたたた、少しすりむいちゃったけと、大丈夫」

「そうか、お腹に障るから、ここで待ってなさい」


そう言うと誠君を見かけた方へ走っていくお父さん。


「浩美、ダメよ、走っちゃ」

「うん、うっかりしちゃった」


砂利を払って、立ち上がった。


「部屋でお父さんたちを待ってましょ、ね」

「うん…」


部屋で待っていたら、お父さんが誠君を連れて帰ってきた。

玄関先に立った誠君は、困ったようなおどおどしたような表情に見えて、それがまた私を苛立たせた。


「どこに行ってたのよ!どうしてここにいてくれないの!危ないでしょ?」


心配でしかたなかったから、無事だったことを確かめたらものすごく腹が立ってきた。


_____無事だったことを喜ばないといけないのにどうして?


頭の中がぐちゃぐちゃになって、涙が止まらなくなった。


「浩美、落ち着いて。お父さん、誠君の足を洗ってあげて」

「それくらい自分でやりなさいよ!できるでしょ!!」

「浩美、やめなさい」


クッションを投げつけようとした私の手を、お母さんが押さえて、そのまま私を抱きしめてくれた。


「うわぁーん、あーんっ!」


私はお母さんの胸で、声をあげて泣いてしまった。

私だけでは何もできなくて、悔しくて悲しくてたまらなかった。

涙が止まらない。


_____結婚して幸せなはずなのに、泣いてる方が多い気がする、こんなはずじゃなかったのに…



しばらくして、お父さんが誠君の着替えを探しているのがわかったから、パジャマを出そうと立ち上がった…ら。


「あ、痛いっ!」


刺すような下腹部の痛みに、思わずしゃがんでしまった。


「え、浩美、どうしたの?」


お母さんが心配して私を覗き込む。


「お腹…痛い…」


あまりの痛みに、私はそのまま意識をなくした。





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