確認

「浩美、何か食べたいものあればお母さん、頑張って作るけど?リクエストはない?」

「んー…なんだろ?何がいいかな?」

「スィーツでもいいよ!」

「うん、思いついたらお願いする…と思う」


溝口君から誠君の話を聞いてから、なにもする気が起きない。

依頼されてるイラストをやっとなんとか描いてるだけの毎日。


_____お母さんも心配している、お父さんも気遣ってくれるのがわかる


このままでは何もできないのはわかってる。

やっぱり、確かめに行こう。

溝口君に電話をして、次の休みに一緒に行ってくれるようにお願いした。


『大丈夫か?俺だけで確認してきてもいいけど?』

「ううん、自分の目で確認したいし、ちゃんと話も聞かないといけないと思うから。もしもまた倒れそうになったら、ごめんね」

『俺はいいけどさ…』

「せっかくのお休みに、彼女とデートもできないね」

『あー、そんなわがまま言う子じゃないから心配するな』

「それならよかった…」


4日後の日曜日。

お昼過ぎに溝口君が迎えにきてくれた。


「さて、行くぞ!もしも誠が逃げようとしたら、俺が捕まえるから」

「うん、ありがとう」


車で1時間ほど走ったその街は、初めて訪れた街だった。

ナビを頼りに、溝口君が確認してきた住所を探す。


「あ、あれかも?」


通りの向こうに、二階建ての少し古いアパートが見えた。

【木下ハイツ】と書かれた看板もある。


「あれだな。一階だとは聞いてるけど部屋番号まではわからないんだ。車をとめて見に行こうか」

「うん」


近くの公園の駐車場に車をとめて、溝口君と2人でアパートに向かって歩き出した。


_____あそこに誠君がいるらしい…女の人と赤ちゃんと…


想像しただけで、足元がぐにゃぐにゃしてくるようだ。

溝口君は、フラつく私の手を引いてくれた。


「しっかりしろよ!誠を見つけたら、言いたいことを全部ぶちまけてやれよ」

「ん…」


何をどう言えばいいのかわからない。

その前に話を聞く方が先なのだろうけど、最後までちゃんと聞ける自信もない。


_____でも、このままでは何も解決しないのだから


私は自分で自分の頬をパチンと叩いた。


「よし、気合い、いれた!」

「その調子だ!」


アパートの前に来た。

一階の部屋を端から見ていく。


「マコ!!オカサン、ミテ」


二つ目の部屋の中から、日本語ではないニュアンスの言葉が聞こえた。


「わかってるよ、でも、仕事は休めないから」


返事をする男の声に、私と溝口君は目を見合わせた。


「いまの…?」

「うん」


誠君の声だ、間違いない。

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