36




side.Tamotsu




屋上の扉の前で佇むこと30分。

僕は息を潜め、項垂れていた。



流石に18時前。

新学期3日目とあってか、部活動も本腰を入れておらず…。校内は思ったよりも閑散としていた。





もう、いないかもしれない。

てか、いないよね…


もし僕が行かなかったら、



それがになるのかな…?







さっきまでの決心がここにきて、

ポキリと呆気なく折れていく。



(帰ろう…)


はぁ…と息を吐いて、回れ右をしたら────…






「遅ぇよ…」



突然ガタンと勢い良く扉が開かれて。





「あっ…─────わわっ…!?」



何も判らないまま、

グイッと手を引かれ屋上へと導かれ…




僕は今、キミの腕の中。







「ちょ…上原く─────」



名を呼ぼうとしたら。塞がれてしまった…唇。



荒っぽいのに、なんだかぎこちなくて。


キミらしくて、キミじゃないみたい…。







「はぁ…いつまで待たせんだよ、たく…。」


「なっ、だって────…」



僕が扉前まで来てた事はバレてたみたいで。

上原君は苦笑を浮かべ、くしゃりと僕の頭を撫でる。



やだ…ダメだよ、またそんな顔見せちゃ…







「泣いた、のか…?」


腫れぼったい目元に触れ、『俺の所為?』と問う上原君は。今度は切なげに微笑む。


いたたまれなくて目を逸らそうとしたら…

両手で頬を包まれ、阻止されてしまった。







「もッ、やめよ…こんな事っ…」



甘く大好きなその瞳に射抜かれるのが、あまりにも辛くて。



自ら切り出した僕。






「…友達を、か?」


ウンと頷いたら、キミはあっさりこう応えた。






「そうか…。じゃあ、やめようぜ。」



なのにまたキスをするのは、何故なんだろう?







「んッ…!や、だぁ……」


耐えきれず泣き出せば、唇は離れていったけれど。






「ど、して…こんなコトっ…!」



堰を切って問い詰めれば。

キミは僕に顔を寄せ、真顔で叫ぶんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る