テキル星(12)エイムの神殿

 その日は部屋で風呂に入った後に、みんなで集まって2階の酒場で夕食にし、街で何をすればいいのかについて話し合った。


 その結果、先ずは「この街の文化レベルを確認する必要がある」って事になって、人々の暮らし、技術レベル、通信網、ファッション事情、食糧事情など、それらを知る為に「みんなで街を散策しよう」って事になった訳だ。


 特に、この国や街の地図が無いのは不便だ。

 目的地を作ろうにも、どこに何があるのかが解らないと目指しようが無い。


 俺達の他にも旅の商人が居る訳だから、地図の様なものは存在している筈なのだが、その地図を入手するまでの間に、「どこに何があるのか」を記した俺達独自の地図を作っておきたいところだ。


 そこで、手分けしてデバイスに情報を記録して回り、その情報を持ち寄って一つの地図にしていこうという事になった。


 街を散策するのはいつもの3つのチームで行動する事にし、それぞれが得意とする情報を収集していく事にした。


 イクスは食糧事情を担当する事もあり、

「じゃ、今夜はこの店の料理を堪能しましょう」

 となり、肉と野菜が中心の料理と、やたらと種類の多い酒を注文した。


 で、後はみんなで食事をして酒を飲んだ。


 ・・・・・・そう、酒を飲んでしまった。


 酒の飲み方を知らないティアやシーナ達も含め、全員が・・・


 まさか皆が揃いも揃ってあんなに酒グセが悪いとは思わなかった。


 アルコールの強い酒はジュースで割って飲むのがこの国の飲み方らしいのだが、ティアやシーナはそんな事お構いなしに飲んでいて、シーナなどは強い酒に咳込んでいるにも関わらず、ティアに対する対抗心からかそのまま飲んで、もうベロベロだ。


 ライドとメルスもおかしくなっていて、二人は肩を組んで「男の友情」とやらを語りだし、イクスとミリカは店の中でチュッチュペロペロを始めだして、それを見た他の客が俺達を見て騒ぎ出してしまって、大変だったのだ。


 いくら一夫多妻制が浸透しているとはいえ、こんな公然猥褻こうぜんわいせつみたいな事は許されないのは当然だろう。


 何とか酒場で会計を済ませてみんなを部屋に戻したけど、部屋に戻ったティアとシーナはまだおかしな酔っ払い方をしていて、足取りもおぼつかないままに全裸になって

「一緒にお風呂に入るのです!」

 と言い出すシーナや

「私も入る~」

 と服を脱ぎだすティアに

「いやいや、さっきも入ったし、そもそも風呂が狭いから無理だって!」

 と言ってベッドに寝かしつけたりと、ちょっとおかしな事になっていた。


 ま、結局はシーナは電池が切れた様にコテンと眠ってしまって、ティアも先にベッドでスヤスヤ寝息を立ててたから、別にそれ以上の事は何も無かったんだけどな。


 で、全裸のシーナをベッドに運んで寝かせ、ティアとシーナの白い肢体が並ぶ光景に「眼福だな」と俺もつい声を漏らしたりはしたものの、「いやいや、俺もどうかしてるな」と俺は頭を振って煩悩を振り払い、パジャマに着替えて夜中には何とか眠りにつく事が出来た。


 翌朝、俺が目覚めると、ティアとシーナもちょうど目覚めたところの様で、案の定というべきか、ティアとシーナは何故自分が裸なのかを覚えていなかった。


「ちゃんと水を飲んでおけよ~」

 と俺は、二人が二日酔いにならない様に言いながら

「どこの世界であれ、やっぱ酒は二十歳からってのが妥当なのかもな・・・」

 とつい呟いていたのだった。


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「昨日はごめんなさいなのです」

 とシーナが申し訳無さそうに俺の左腕に顔を埋めている。


「私も、本当にごめんなさい。昨夜の事、全然覚えてなくて」

 とティアも申し訳無さそうにしている。


「ハハッ、気にしちゃいねーよ」

 と俺は言いながら「でも、これからは酒はほどほどに、だぞ?」

 と軽くたしなめておいた。


 身支度を整えた俺達は、予定通り今日はエイムの街を散策しようと思っている。


「まずは地図を作る為に情報収集をして、今夜はみんなの得た情報と俺達の情報を統合する作業だ」

 と俺は二人の顔を見て言った。

「情報の統合作業はシーナに頼みたいがいいか?」

「もちろんなのです」

「集めた情報からこの国でやるべき行動リストを作りたい。その作業はティアに頼もう」

「ええ、任せて」

 と二人はやはり頼もしい。


「さて、まだ朝は早いが…」

 とデバイスで時刻を見ると、朝の7時を少し過ぎたところだ。

 俺は部屋の窓のカーテンをずらし、ガラス越しに外を見た。


 どうやら部屋の窓は西向きについている様で、入り込む日差しは無いが、正面に見える神殿の壁が日光を浴びて、白い壁に跳ね返った光が少し眩しく感じるくらいだ。


 眼下を見下ろすと、チラホラと人の往来があるのが見える。


 野菜を積んだ荷馬車も走っていて、おそらく昨日通った農場の人達が野菜を問屋まで運んでいるのだろう。


 俺はそっとカーテンを閉めて振り返り、

「よし、行くか!」

 と元気に言って、ティアとシーナの手を引いた。


 俺達の部屋は5階の一番端の部屋で、階段からは一番近い扉を入った部屋だ。


 俺達が部屋を出ると、廊下を挟んですぐ斜め向かいに階段がある。


 廊下の奥を見てみると、他の宿泊客はまだ寝ているのか、扉は全て閉まったままだった。


 階段を降りた俺達は、1階のカウンターで部屋の鍵を預け、そのままエントランスから外に出た。


 建物を出ると正面には巨大な神殿があり、宿と同じく5階建てくらいの建物なのだが、屋根の勾配がきついせいで神殿の方が宿屋よりも大きな建物に見える。


 神殿は石造りの建物で、前世でよく見た西洋の教会の様にも見える。

 ガラスの技術は発達している様で、神殿の窓は全て透明なガラスがはめ込まれていた。


 そういえば宿屋の窓もガラスは透明だし、酒場でもガラス製のコップがあったな。


 ガラスの技術が発達してるって事は、もしかしたら薬品なんかの技術も発達しているのかも知れない。


 前世でもガラスは色々な使われ方をしていたが、熱や酸に強い「ホウケイ酸ガラス」ってのが一般的に化学実験などに使われていて、溶剤や薬品との化学反応を起こしにくい特性を利用してた訳だ。


 ホウ素とケイ素が酸素によって結合されたものが「ホウケイ酸ガラス」な訳だが、そうしたガラスの技術が発達してるって事は、もしかしたらここでは「元素」についての知識を常識として持ってる者が多く居るって事かも知れない。


 テキル星でも主要学科である「化学」で、元素や分子等の概念についてはいつも試験で試されて来た。そもそもプレデス星の初等学校の頃から学ぶ事なので、元素の知識は惑星開拓団なら誰でも持っている知識だ。

 俺も頑張って覚えたんだぜ?

 記号は前世の地球で習ったものとは違うものの、内容は概ね同じだったってのもあって助かったのもあるけどな。


 前世の地球では、元素は118個あったはずだが、この世界には93個しかない。


 元素の重さの順に並べるなら、1番の「水素」よりも軽い元素が一つこの世界にあるだけで、前世の地球にあった118種類の元素のうち、「人工元素」と呼ばれる人の手で合成された26種類の元素が全て存在していないといった感じだ。


 なので、118から差し引きすれば93種類が残る訳だな。


 地球には存在しないその1種類の元素は「シエロ」と呼ばれていて、鉄と化学反応させる事で「熱に強く酸化しにくく衝撃にも強くて軽い金属」を生み出す事が解っていて、主に宇宙船のボディに使われている。


 ちなみに、メルスやライドが作った乗り物のボディやフレームもこの金属で出来ていて、石器で作った型に溶かした鉄を流し込んで、シエロを液状になるまで冷却したものを充填する事によって、鉄の温度が冷めるのに合わせて化学反応が起こり、一度冷めて化学反応が完了すれば、「シエロ合金」が完成するという訳だ。


 地球に来てたUFOも、このシエロ合金で出来てたんだろうな、きっと。


「まだ朝も早いから、人通りは少ないな」

 と俺が言うと、ティアも辺りを見回しながら

「そうね、昼前にはこの道に露店が並ぶらしいから、露店が並ぶ前に他のエリアを見ておかない?」

 と提案してきた。

 シーナも同意見らしく、何度も頷いている。


「そうだな」

 と俺は言って「まずはどこかでこの街の地図を手に入れたいぜ」

 と周囲を見回した。


「お、あそこってパン屋じゃないか?」

 と俺はロータリーが広い通りに繋がる角地の建物を見て言った。


 その建物は3階建ての建物で、1階の壁から微かに煙が出ていて、店の前に停まっている馬車から降りた女がそこでパンを買っている姿が見えた。


「本当なのです。お腹も空いたし、どんなパンを売っているか見てみたいのです」

 とシーナが言うので、

「じゃ、行って見るか」

 と俺も同意してパン屋に足を運ぶ事にした。


 パン屋の店先には看板が掲げられていて「色々なパン」と書かれている。


 どうにもこの世界の「表現力」の乏しさには残念感しか抱かないのだが、まあ、確かに分かりやすい看板ではある。


 俺達が店の前に立つと、ほんのりと香ばしいパンの匂いが漂っている。


 少し甘い香りもするあたり、ただのバゲットとかコッペパンを売っているだけでも無さそうだ。


 俺達が店に入ると

「いらっしゃい」

 と店員が声をかけて来る。

 店員は黒髪に口髭を生やした中年男と、同じく黒髪の若い女で、声を掛けて来たのは若い女の方だった。

 中年男は棚に焼き立てのパンを並べると、また店の奥に入って行った。


「初めて見るお客さんだね。変わった格好をしてるけど、どこかのお貴族様のお使いかい?」

 と女が訊いて来た。


「私達は昨日この街に着いたばかりの、旅の商人なんです」

 とティアが言った。「この街は始めてなので、これから色々見て回る予定なんですよ」

 と、現地人とのコミュニケーションも普通にこなせる様になっているティアを見て、俺は少し驚いた。


 おそらく、昨日の農業地帯で現地人と俺が会話しているのを見て、何かのコツを習得したのかも知れない。


 一度見ただけでコミュニケーションのコツを習得できるティアは、やっぱ優秀だよな。


「へえ、ここエイムの街は、メチル王国の農業と畜産の流通拠点になってるからね。この街でしか食べられない料理もあるから、楽しんで行っておくれよ」

 と女は言い、「で、この店でしか食べられないパンもあるから、ぜひ買ってっておくれな」

 と、棚のパンを指して言った。


 棚を見ると、バゲットやコッペパンを入れたカゴの他に、ハンバーガーのバンズの様に切り分けたパンの間に色々な具を挟んでいるものが並んでいた。


 おお、クレア星では俺達が発明したとされる総菜パンやハンバーガーは普通に売られているじゃねーか。


 と俺が思っていると、シーナもそう思ったらしく

「ショーエンが考えたハンバーガーとよく似てるのです」

 と言いながら、棚のパンをまじまじと見ていた。


「ああ、旨そうだよな」

 と俺は言いながら、メニューを見て、「ボアの薄切り肉とシャキシャキ野菜とバターを挟んだパン」と書かれたポップの前にある総菜パンを手に取り、


「おれはこれを貰おう」

 と持ち上げた。するとティアとシーナも

「じゃ、私はコレ」

「私はコレにするのです」

 とそれぞれが総菜パンを取り出し、店の女が少し目を丸くした。


「へえ、うちのオリジナルメニューばかりを選ぶなんて、きっとあんた達は、沢山の国を旅してきた商人なんだね」

 と女は言い「じゃ、これは銅貨12枚と、こっちは銅貨14枚。あとこれも銅貨14枚だね」

 と言った。

「俺がまとめて払うよ」

 と俺が言って「全部で銅貨40枚だな」

 と銅貨をジャラジャラと出すと、店の女は

「え?」

 と言いながら銅貨をカウンターの上で数えだした。

 俺が見ていると、女はカウンターの上で「12枚と、14枚と、14枚」と言いながら別々に分けて

「はい!確かにお代は貰ったよ!」

 と言って、パンを紙に包んで渡してくれた。


 俺達はパンを手に店を出て、パンを食べながら広い通りを南に向かって歩く事にした。


 総菜パンは旨かった。

 俺が食べたのはローストポークを甘辛いソースに漬けたものをレタスに挟み、それをバターを塗ったパンに挟んだものだった。


「なあ・・・」

 と俺はパンを食べ終えてティアの顔を見た。

 ティアはまだパンをモグモグと食べながら「ん?」とこちらを見た。


「昨日の宿屋でも思った事なんだけどな」

 と俺が言うと、シーナが俺の袖を引っ張り

「ショーエン、もしかして、四則演算の事を考えているのですか?」

 と訊いて来た。


 俺は驚いてシーナの顔を見て、

「あ、そう。そうなんだ。よく分かったな」

 と俺が言うと、シーナは誇らしげな顔をして

「私はショーエンの考える事を出来るだけ知ろうと頑張っているのです」

 と言いながら、手に持ったパンをモグモグと食べている。

 ティアも頷きながら

「ああ、私も感じてたわ。さっきの店もそうだったよね」

 と言った。「この国の人達、もしかしたら四則演算が出来ないのかな」


 俺は頷き、

「昨日の宿屋もそうだったが、足し算は出来るけど、掛け算が出来ない感じだったよな」

 と俺は言い、「ならば恐らく、引き算は出来るけど、割り算は出来ないんだろうな」

 と言いながら空を見上げた。


 まるで前世の小学生低学年レベルの算術知識だ。


 バティカ王国ではそんな事は無かったはずだが、隣の国に移っただけでここまで知能が低下するのもおかしな話だ。


 これがクラオ団長の言ってた「遺伝子の欠陥」という事なのか、単なる教育制度の欠陥なのかは判らないが、どちらにしても、この現状は改善しておいた方が良さそうだ。


「ねえ、ショーエン。あそこの店も開いてるみたい」

 とティアが俺の袖を引っ張りながら通りの向かい側を指して言った。


 ティアが指した先には、少し豪華な造りの建物があり、店先には「薬」と書かれた看板が掲げられていた。


「ほう、薬屋か」

 と俺は言いながら「行って見よう」

 とティアとシーナの手を引いた。


 俺達が店の扉を潜ると、扉に取り付けられた鈴が「チリンチリン」と音をたてた。


「はいよ~」

 と鈴の音を聞いたのか、店の奥から男の声がし、なで肩に白いオーバーオールの様な服を着た初老の男が姿を現した。


「初めて見る顔だね。何の薬を探しているんだい?」

 と長い眉の下の垂れた目を上目使いで俺達を見ながら言った。

 男はマジマジと俺達の姿を見て、

「変わった格好だね。どこのお貴族様の使いだね?」

 と訊いて来た。するとここでもティアが

「いえ、私達は旅の商人です。エイムの街には初めて来たので、どんな薬があるのか見せてもらいたくて来ました」

 と言った。


 うんうん、正直でいいね。


 でも、こういう所で情報を集めるなら、嘘でもいいから「頭が痛くて・・・」とかの演出をしておいた方が色々聞き出せると思うぜ。


 ま、これも経験だ。ティアに任せてみよう。


 男はティアを見て、

「色んな薬があるからね、見ただけじゃ分からんだろうが、好きなだけ見てくれて構わないよ」

 と言った。


 ティアは棚に並んだ小瓶の中味をまじまじと見ながら、デバイスに記録をしている様だ。


 なるほど、確かティアのデバイスは「ギャラン」だったよな。俺のエクシズほど深く情報を掘り下げる機能は無いけど、幅広い情報を浅く分析する機能ならギャランの方が向いているかも知れない。


 もしかしたら、この薬を分析できるか試しているのかも知れないな。


 しばらく見ていると、ティアは俺を見て

「うーん、半分くらいは何の薬か分かったけど、残りはよく分からないわ」

 と言った。


「そうか、俺も見てみよう」

 と俺もティアの真似をしてデバイスの分析機能を試してみたが、俺のデバイスでは2割も分析できなかった。そこで俺は情報津波を試してみる事にした。


 すると、ひとつ一つの薬の成分や効能、そして製薬方法などが解る。


 ここの薬は全部が「生薬」だ。前世でも漢方薬や和漢薬の様に、化学的に精製した薬ではなく、古来より伝わる方法で薬を作る生薬が沢山あった。


 そして、ここにある薬の半分近くは「ちゃんとした薬」だったが、残りは全て「食物繊維が豊富」なだけの、ただの「植物の粉」だった。


「ふむ、なるほどな」

 と俺は言い、「なあご主人」

 と俺は店員の男の顔を見て続けた。

「俺達はこの街で1週間ほど商売をさせてもらおうと思っているんだが、その間、色々な食事を楽しもうと思っている。なので、消化を助ける胃薬などがあると助かるんだが、ご主人のお勧めの薬を教えてもらえるか?」

 と訊いた。


 俺が情報津波で見た通りなら、一番上の棚の左から3番目が最も効果が高い胃腸薬だ。


 男は棚の裏から小さな引き出しを引いて、

「それなら、これとこれを一緒に飲むのが宜しいですな」

 と、俺が見ていた胃腸薬と、もう一つはただの植物の粉の瓶を出してきた。


 なるほど、抱き合わせ商法か。


「なるほど、念のため値段も聞いておこう」

 と俺が言うと、

「こっちの薬が銀貨5枚で、こっちの薬は銀貨2枚です」

 と、ちゃんとした胃腸薬の方が銀貨5枚という事だった。


「いいだろう、ならば銀貨5枚の薬の方だけを頂こう」

 と俺が言うと、男の眉がピクリと動いた。

 しかしそれは一瞬の事で、

「そうですか、こちらの薬と一緒に飲んだ方が効果が高いですよ?」

 とどうやらただの粉も売りたそうにしているあたり、こいつは本当の効能を分かっているに違い無い。


 俺は努めてにこやかに

「いいんだ。こっちの粉は既に持っているからな。銀貨5枚のこの薬だけをくれ」

 と言って、胃腸薬の小瓶をカウンターに乗せ、ついでに銀貨を5枚、カウンターに置いた。


 男は「仕方が無い」といった風にため息をつき、

「ほい、じゃあ確かに」

 と銀貨を数えて、胃腸薬の小瓶を俺に手渡した。


「まいどあり」

 と店員は言ったが、あまり嬉しそうでは無かった。


 俺達が店を出ると、日の光が随分と高くなってきた様で、大通りが随分と明るく見える様になっていた。


「だんだん人通りも多くなってきたな。ここからは少し急ぐか」

 と俺は言い、頷くティアとシーナの手を引いて歩調を早めた。


 俺達はその後も広い通りを南に向かって歩き続け、様々な情報をデバイスに記録していった。


 所々で脇道に入ってみたりしたが、裏通りは倉庫区画か居住区ばかりで、特に店舗などは無い様だった。


 かなり南に進んだ頃、通りに面した建物が宿屋の様な建物ばかりになってきた。


「何だ? この辺は宿屋街なのか?」

 と俺は呟いたが、その理由はすぐに分かった。


「あそこがこの街の行き止まりなのね」

 とティアが言う通り、宿屋らしき建物の向こうには高い塀が見えている。


 なるほど、けっこう大きな街ではあったが、塀で囲われた街って事は、何かの脅威から守られているという事でもあるし、あまり間口を広げるのは防衛の為には効率が悪いもんな。


 つまり、この辺りの建物は、宿屋もあるだろうが、兵士用の宿舎が多いという事なのだろう。


 念のため俺達は突き当りの塀に居る門番らしき兵士に声を掛けてみる事にした。


「やあ、こんにちは」

 と俺が兵士に声を掛けると、兵士達はこちらを見て姿勢を正す。


「あなた方は?」

 と門番の一人が訊いて来た。


「俺達は旅の商人だ。昨日西の門からこの街に来たところで、この街を散策してるんだが、この門の向こうはどこに繋がってるんだ?」

 と俺は訊いてみた。


「ああ、旅の商人か」

 と門番は言って姿勢を崩し、「この先はサウージの街に繋がる道が続いている。サウージはメチル王国最大の鉱石の流通都市だぞ」

 と教えてくれた。


 ほう、鉱石の流通か。

 ってことは、素材の発掘も出来そうだし、エネルギー資源の採掘が出来る可能性もあるな。


「そうですか、教えてくれてありがとうございます。いずれ訪れてみる事にします」

 と言って俺達は引き下がる事にした。


「一通り見て回れたし、一旦神殿まで戻るか」

 と俺は言い、ティアとシーナも頷いた。


 帰りはこれまでよりも速足で歩いた。

 この星の重力で俺達が早歩きをするのは、この星の人々には全力疾走しているように見える事だろう。


 すれ違う人々が俺達の姿を見て目を丸くしているのを見ると、やはり俺達は異質な存在なんだろうと感じる事が出来た。


 1時間近く歩いただろうか、午前11時半頃には神殿が見えるところまで戻って来れた。


「はあはあ、結構しんどかったのです」

 とシーナが肩で息をしながら汗をかいている。

 ティアもシーナほどでは無いが汗をかいて、少し息を荒げている。


 俺も息は荒げて汗ばんでいるが、やはり鍛え方が違うからかそれほど疲れてはいない。


「やっぱり、ショーエンの体力には敵わないね」

 とティアは俺を見て言った。

「当然なのです。ショーエンは特別なのです」

 とシーナは言いながら、「ショーエンなら私達を担いででもここまで走って来れるのです」

 と言うのを聞いて、確かにそうかも知れないと俺は思った。


「ハハッ、そうかも知れないけど、街をお前達と一緒に歩く方が俺は楽しいぞ」

 と俺が言うと、二人は途端に笑顔になって

「私も楽しい!」

 と声を合わせて言った。


「他の奴らはどんな調子だろうな?」

 と俺が言うと、シーナがデバイスで通信を試みていた。


「まだ、通信が届く範囲には居ないみたいなのです」

 とシーナが言った。


「そうか、じゃあ一旦宿屋に戻って、風呂で汗を流そうぜ」

 と俺が言うと、二人は俺の腕に抱き着いて

「そうしましょう!」

 と嬉しそうに言った。


 ハハッ、ほんと、この二人はブレないな。


 俺はどこか安心感を感じながら、神殿を囲むロータリーまで戻って来た。


 神殿の周囲には既に沢山の露店が並んでおり、色々な物が売られていた。


「お、既に露店が並んでいるな」

 と俺が言うと、

「後で見て回りましょ」

 とティアが言った。


「噂の商人とやらの店がどこかにあるかも知れないけど、先に汗を流したいもんな」

 と俺は言い、「とりあえず宿で風呂に入ってから、露店で何かを買って昼食にしようぜ」

 と言いながら、2人の手を引いて宿屋に向かって歩いた。


 宿屋の前も人通りが増えている。


 荷馬車が3台宿屋の前に停まっていて、露店で買ったものを積み込んでいる様だ。


 恐らくあれも旅の商人の荷馬車で、ここで仕入れたものをどこかの街に売りに行くのだろう。


 俺達はそんな風景を横目に宿屋のエントランスに入り、カウンターで鍵を貰って5階まで上がった。


 部屋に入ると、ベッドメイキングなどはされておらず、この国ではそういったサービスは無い様だった。


 まあ、バティカの王城みたいに、メイドが沢山いる訳でも無いしな。


 俺は簡易ライターで風呂の窯に火を点け、上着を脱いで右手で額の汗を拭った。


 ティアが部屋の窓のカーテンを開け、窓を開けて部屋の空気を入れ替える。


 街の喧噪が窓から聞こえ、この街の活気が俺にも伝わって来た。


 しばらくして風呂の湯を見ていたシーナが

「そろそろ良い湯加減なのです」

 と言って、俺の元まで来て、

「ショーエンが一番に入るのです」

 と言って俺の服を脱がそうとした。


「ああ、ありがとな」

 と俺は特に抵抗するでもなく、シーナがするままに服を脱がされていった。

 仁王立ちしている俺のトランクスを、俺の正面で膝をついて両手で下げたシーナの目は、俺の股間に照準を合わせたまま固定され、少し頬を染めた顔で

「どうぞなのです」

 と言った。


「ああ」

 と俺はそんなシーナの頭頂部を撫でながら言い、浴室に足を向けた。

 するとそこには既に全裸になったティアが居て、

「背中を流すわね」

 と言って控えていた。


「おいおい、そこまでしてくれなくても大丈夫だぞ?」

 と俺は言ったが、振り向いてシーナの方を見ると、シーナも服を脱いで、こちらに歩いて来た。


「どうしたんだ二人とも?」

 と俺が訊くと、

「バティカの王城では、メイド達にやられてしまったのです。なので、今日はそれを取り返すのです」

 とシーナは言い、ティアも頷きながら

「そんなところね」

 と言いながら「ショーエン、ほら、背中を流すからここに来て」

 と俺を浴室に促した。


 大して広くない浴室に、3人が一緒に入って身体を洗われるというのは変な感じがするが、俺はティアとシーナにされるがままに身を委ねる事にした。


 これはやばいな。

 ちょっと身体が反応しそうだ。


 と俺は自分の若い身体が恨めしいやら誇らしいやら、複雑な気持ちで目をつむってされるがままになっていた。


 二人は俺の背中どころか全身をゴシゴシと洗いだし、特にシーナは執拗なまでに俺の股間に触れている。


 ああ、もうダメだ。


 と俺は自分の下腹部に血液がたぎってくるのを止められず、エレクトしてしまうものをそのままさらしてしまう事になった。


 片目を開けてシーナの様子を伺うと、満足そうな顔をして股間やその周囲をゴシゴシと洗っている。


 ティアは狭い浴室で自分の身体も洗いながら、俺の身体に身体を密着させている。


「どうしたんだ二人とも?」

 と俺が言うと、ティアは

「何だか、変なスイッチがはいっちゃったみたい」

 と顔を赤らめながら俺の身体を抱きしめた。

「私もなのです」

 とシーナは俺のジュニアを見上げながら俺の太ももを洗っている。


 こりゃ仕方が無いな。


 と俺は、

「とりあえず、二人もちゃんと身体を洗って、それからな」

 と言って、シーナの身体を抱き起し、身体を密着させて唇にキスをした。

「ん・・・」

 とシーナは声を漏らして唇を離し、少し潤んだ目で俺を見て頷いた。


 ティアも後ろから俺の肩越しに頬を寄せてきて、ちょっと無理な体勢だなとは思ったが、俺は顔をティアの方に向けてキスをした。


 そうして3人は何とか身体を洗い、お互いが身体を拭き合って、ベッドの上に寝転がった。


 俺は部屋の窓とカーテンを閉め、薄暗くなった部屋のベッドで、それから1時間ほどかけてティアとシーナと愛し合う事になったのだった・・・


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「はあ・・・」

 と俺は息を吐きながら服を着ていた。


 ベッドには、まだ余韻に浸っているティアとシーナが居て、二人はお互いに見つめ合いながら

「良かったね」

「幸せなのです」

 と手を繋いで確認し合っている。


 こうして時々は身体を合わせておかないと、不安になるものなのかな。


 そういえば前世でも聞いた事がある。


 バイト先で働いていたコンビニに、南米から来た留学生が働いていたのだが、彼が言うには「日本の女性は最高です」とよく言っていた。

 その理由を尋ねると

「私の国では、彼女と毎日セックスしないと、すぐに浮気を疑われてしまうデス」

 と言っていた。

「へぇ・・・、そりゃ大変だね」

 と俺が言うと、

「日本の女性は、そこまで求めて来ないから付き合いやすいデス」

 と言っていたな。


 日本人のセックスレスは当時も社会問題化していたが、情熱の国と呼ばれる南米の国では、毎日が熱いお国柄だったんだろうな。


 と当時の俺は思っていたものだ。


 ティアやシーナも、そういった感じなんだろうか。


 俺はベッドの二人を見ながら、そんな事を考えていたのだった。


 俺は窓のカーテンを少し開けて、窓から見える景色を眺める事にした。


 正面に見える神殿の周りには、沢山の露店が並んでいて、沢山の人が並べられた商品を見て買い物を楽しんでいる様だ。


 そんな中、少し豪華な装飾が施された馬車がやってきて、神殿の正面玄関の前に停まった。


 馬車からは派手な服を着た夫婦らしき男女が降りてきて、神殿の中へと入って行く。


「何だ?」

 と俺は神殿の正面玄関付近を見ていたが、その馬車が去って行ったかと思うと、次々と同じ様な馬車がやってきて、同じ様に高価そうな衣装を着た者達が神殿に入って行くのが見えた。


 そういえば、昨日の門番が言っていたな。


 確か、神殿には貴族が来るから、高価な服はそいつらしか買わないんじゃないかって話だった筈だ。


 という事は、あの派手な連中が、この国のお貴族様ってところか。


 俺はそんな事を思いながら神殿を見上げた。


 この星の神殿には龍神が祀られている筈だ。


 貴族達が神殿に来るって事は、彼らは龍神に祈りをささげる為に来ているのだろう。


 そして、この国の貴族達ってのはバティカの血を受け継いでいるはずだから、龍神に対する祈りってのが何を目的としているのかを知る必要はありそうだ。


 俺はベッドの方を見て、

「ティア、シーナ。落ち着いたか?」

 と俺が訊くと、

 ティアが起き上がって

「うん。もう大丈夫」

 と言った。

 シーナもゆっくりと起き上がり、

「ショーエンが大丈夫なら私も大丈夫なのです」

 とよく分からない事を言っている。


 ま、とにかく大丈夫って事でいいんだよな?


「そろそろ服を着てくれ。ちょっと神殿に行ってみたいんだ」

 と俺が言うと、

「うん、分かった」

 とティアはそそくさと起き上がって服を着だした。

 シーナも、むっくりと立ち上がり、テキパキと衣装を身に着ける。


「準備できたわ」

 とティアとシーナが立ち上がり、

「神殿に行くのです」

 とシーナも靴の紐を結んでいる。


「よし、行こう」

 と俺が部屋の扉に向かって歩き出すと、ティアとシーナが俺の腕に自分の腕を絡めて付いてくる。


 そうして俺達は階段を降りて宿屋を出て、神殿の方へと向かった。


 神殿の正面玄関には神官の様な服を着た男が二人立っていて、貴族達が通る度に案内をしている。


 俺達も正面玄関に向かい、神官風の男に声をかけた。


「俺達も中に入れるのか?」

 と訊くと、神官風の男が

「この神殿には、龍神の血筋の者しか入れません。お引き取りを」

 と言ってきた。


 なるほど、そういうルールがあるのか。


「俺達はバティカ王国から来た旅の商人だ。龍神の血筋の者だが?」

 と俺が言うと、神官風の男は

「おお! そうでありましたか!」

 と言って、「ささ、どうぞ中へ!」

 と俺達を招き入れた。


 神殿に入ると、3層吹き抜けになった広いホールになっていて、正面には通路があり、突き当りには龍神の像が祭壇に掲げられている。

 両側には祭壇を取り囲む様にベンチが並べられていて、貴族達が祭壇を向いてベンチに座っていた。


「あそこに座ろうか」

 と俺達も空いているベンチを見つけ、右側の後ろから3番目のベンチに3人並んで座る事にした。


 俺達の後にも30人くらいの貴族らしき男女が入って来た後、神殿の扉が閉ざされ、「バーン」という扉の閉まる音が神殿のホール内に響いた。


 すると、それまで各々で会話をしていた貴族達が口をつぐみ、辺りはシーンと静まり返った。


 祭壇には一人の神官らしき男が立っていて、静まり返ったホール内によく響く声で話しだした。


「本日も、メチル王国を支える貴族の皆様が集いし事に感謝を申し上げます」

 と言いながら振り返って龍神の像の方を向き、俺達に背中を見せている。


「おお! 龍神クラオ様の心が今日も安らかなる事に感謝を!」

 とその男が言うと、貴族達も声を合わせて

「龍神クラオ様の心が今日も安らかなる事に感謝を!」

 と言った。


 神官風の男はもう一度振り返って俺達の方を向き、

「皆さまのご尽力のおかげで、我々は4つの国との同盟を結ぶ事が出来ました」

 と言った。


 同盟?


 と俺は思いながらその続きを聞いていた。


 その男の話はこうだ。


 このエイムの街を有するメチル王国は、バティカ王国がバティカの血を独占している事に不満を感じていた様だ。

 そして、それを何とかしようとバティカ王国に陳情ちんじょうに挙がろうと考え交渉団を組織したと。

 しかし、バティカ王国までの道は険しく、人を襲う獣たちから交渉団を守る為に、軍隊を組織して、バティカ王国まで行軍を行った訳だ。


 ところが、やっとの思いでバティカ王国に着いたものの、バティカの街の東門の門番兵に王城への取次ぎを依頼したところ、しばらく待たされた後に天から龍神が舞い降り、交渉団もろとも軍隊が壊滅させられたんだとか。


 そこでメチル王国に命からがら逃げかえった兵士の報告を受けたメチル国王は、兵達が何か無礼な事をしたのではと疑い、龍神の怒りを鎮める為に神殿を建てたという事だ。


 その後、バティカから純血の旅の商人が現れ、龍神への祈りが彼らを呼び寄せたものとして、貴族達の血筋が守られてきたが、貴族を名乗る怪しげな集団が現れ、事もあろうに、バティカの商人を殺して回ったのだという。


 その後、バティカの商人は現れなくなり、メチル国王は「我々も商業を豊にしてバティカの商人が来てもらえる様に努力をすべし」と国民に下知を行い、この数十年で国は大きく発展していったと。


 更に、北の「ノシア王国」、南の「オスト王国」、西の「イスラ王国」との同盟を結び、バティカ王国の商人を呼ぶに相応しいと思われるだけの産業革命を実施したようだ。


 で、現在はバティカに続く商業道路を作ろうと工事を進めているところで、現在も貴族達の寄付を受けて、その工事が進んでいるという報告を兼ねた集会がここで行われているという事みたいだった。


 なるほど、上空から見たあの工事中の道路はそういう事だったのか。


 しかも、バティカ王国の認識だと、外国がバティカを侵攻してきたかの様な認識でいたけど、こちら側は「交渉団」を送っただけで、龍神が暴れたのは「バティカ王国側の誤認」が原因って事か?


 だとすると、バティカ王国の報告しか受けていないクラオ団長も、事実の把握はできてないって事だな。


 って事は、認識の違いさえ正せば、この世界を平和にするのはそう難しい事では無いんじゃないか?


 俺がそんな事を考えていると、隣でティアが

「気になるわね・・・」

 と呟いた。「バティカの商人を殺した、貴族を名乗る怪しげな集団って何なんだろう・・・」


 確かにそうだ。

 どうやらそいつがこの星の歴史上の大悪党って事になるのかも知れないな。


「では皆様、これからの繁栄を願い、心ばかりのご寄付をお願い申し上げます」

 と神官風の男が頭を下げると、貴族達は一斉に立ち上がり、祭壇に置かれた賽銭箱の様な箱に、次々と金貨を投げ入れていった。


 俺達も立ち上がり、賽銭箱に続く列に並んで、皆と同じ様に金貨を5枚ほど入れておいた。


 賽銭箱にお金を入れた列はそのまま神殿の出口まで続き、俺達は流れのままに神殿の外まで出る事になった。


 思わぬ出費になったが、それに見合う情報の収集が出来たと思う。


 神殿を出た俺達はすぐに宿屋に戻り、5階の部屋の窓から、馬車に乗って次々と去って行く貴族達の姿を追っていた。


 バティカ王国の認識とメチル王国の認識の違いはあれど、メチル王国の連中が「遺伝子異常による野蛮な連中」ってのは、どうやら誤解だという事が解った気がするな。


 ただ、この国の「貴族を名乗る怪しげな集団」というのが問題の原因だという事は明らかな様だ。


「俺達のやるべき事、意外とあっさり見えて来た気がするな」

 と俺が言うと、ティアとシーナも頷き、


「でも、怪しげな集団って言っても、どうやってそれを判断すればいいのかしら」

 とティアは言い、シーナもうんうんと頷きながら、

「そんな事をする人は、レプト星に送還してやればいいのです」

 と言った。


 レプト星に送還か。


 それが出来るのは、この星ではデバイスを持ってるバティカ国王だけだがな。


 と、俺はそこまで考えてハッとした。


「レプト星から、この星に来た奴らが居る・・・とか?」

 と俺が言うと、ティアとシーナもハッとした様に俺を見た。


「その可能性はあるわね」

 とティアも頷く。シーナも

「さすがショーエンなのです」

 と頷いた。


 俺達は顔を見合わせ、

「やるべき事が見えて来たな」

 という俺の言葉に、ティアとシーナも頷いたのだった。

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