ダンジョン調査2
「しかしなんとも幻想的ですね」
不思議な木の中。
光るキノコ。
なんとなく張り詰めたような空気感。
これがダンジョンの中なのかとニノサンも不思議そうに周りを見回している。
ジもドールハウスダンジョンよりもガチのダンジョンは重ためな雰囲気があるなと思っていた。
入ってきたところは広めの部屋になっていてそこから2本の道が伸びている。
リアーネは荷物から紙とペンを取り出す。
ざっくりと四角く部屋を書いて何となく実際と同じように道を繋いで描く。
ダンジョンは中の構造があまり変わらないものも多い。
特にダンジョンを攻略する数日ならまず変化しない。
帰り道を見失わないように、あるいは次来た時のために地図を描いておくのは必須である。
最終的に攻略できてギルドなりに情報を売る時にも地図は高値で買ってくれる。
「どうしますか?」
「今日はとりあえず右に進んでいこう。
いくつか道があっても全部一番右を進んでいくことにしよう」
その都度進む道を選んでいては混乱する。
地図も描きやすいだろうし覚えてもいやすい。
一定のルールに従って決めておけばさっさと進めて早い。
ということで右の道を進む。
気温は暑くもなく涼しくもない。
カラッとしているわけでもなくジメッともしていない。
良いとも悪いとも言えない空気感の中を進んでいく。
「何だあれ?」
広い場所だったところを部屋と表現するならここは通路とでも言ったらいいのか。
少し進んだところで通路の真ん中に木が生えていた。
正確には生えているわけではない。
よく木の根元を見てみると床に根を張っているのではない。
木が床の上に立って乗っている。
葉っぱも生えていない細い木でジでも簡単に切り倒せてしまいそう。
「魔物だな」
先頭を歩くリアーネが剣を抜いて構える。
リアーネの武器はやや大振りなものであるが通路も広さとしては十分でジやニノサンのどちらかなら一緒にも戦える。
ただ今回はリアーネに任せてジたちは後ろで警戒しておく。
ジリジリとリアーネが木と距離を詰めていく。
本当に動くのかと思うほどに木は動かない。
リアーネの剣も枝の先も届きそうとジが思った瞬間だった。
木が動いた。
細い幹が二股に分かれて足のようになった更に細い幹を踏み出して木がリアーネに襲いかかった。
枝をしならせて叩きつけるように振り下ろす。
リアーネはあえて反撃を繰り出さずに一歩引いてただ枝をかわした。
「あれは、トレント?」
「いいえ、あれはトレントではないでしょう。
同じ植物系の魔物ではあるでしょうけれどトレントよりも格下の魔物ですね。
ドライウッドでしょうか?」
「そうだな、多分そこらへんの魔物だ」
トレントはウッド系と呼ばれる木の魔物の中でも強い方の魔物になる。
ウッド系の魔物は基本的に森などの場所で周りの植物に溶け込んで奇襲することを得意とする。
植物であるためか動きとしては鈍くてその場から素早く動くことは少ない。
距離を取ったリアーネを追いかけようとドライウッドは足を踏み出すけれど遅い。
「やっぱり植物系の魔物が出るのかな」
「倒しちゃってもいいか?」
「ああ、頼むよ」
すぐに倒さずどんな感じか観察したけれど脅威度としては高くない。
しなやかに振られる枝は当たると痛そうだ。
鞭で叩かれたみたいに皮膚が腫れたり裂けたりしてしまいそうではある。
防いでもしなって回り込んでくることもありそうなので回避できるならその方がいいかもしれない。
リアーネは一気にドライウッドに近づく。
振り下ろされた枝を切り裂くとすぐさまドライウッドの幹を真っ二つに一刀両断する。
危なげもないので安心して見ていられる。
倒れたドライウッドはスーッと姿が透けていって消えてしまった。
これもまたダンジョンの1つの特徴である。
ダンジョンで生まれた魔物は普通の魔物と違う。
ダンジョンで生まれた魔物は倒されるとダンジョンに還って消えてしまうのである。
ドライウッドが倒れたところには魔石と枝が1本転がっていた。
倒された魔物は消えてしまうのだけどその魔物の魔石や素材が落ちていることがあるのだ。
これがドロップやドロップ品と言ってダンジョンに入る目的でもある。
なのでこの枝はドライウッドのドロップ品で、おそらくドライウッドの一部であるものなのだろう。
「まあこれぐらいなら苦労はなさそうだな」
切った感じ思っていたよりも硬めであったが問題はない。
魔石と枝を拾ってリアーネがジのところに戻ってくる。
「楽なら全然いいんだけどね」
枝を受け取ったジはちょっと力を加えてみたりする。
ジのひじから指先ほどまでの長さがある枝は弾力があって結構しなる。
棒を振り回すような年頃でもないのでこんなものどこに使うのか疑問だ。
「こうしたものは魔道具に加工するんだよ。
魔物の枝なら魔法の補助をする杖とかの魔道具とかになるのかな?
細かい使い道までは知らないけどな」
「へぇ……」
不思議そうな顔をしているジにリアーネが疑問に答えてくれる。
一応魔物の素材である枝なので魔力の伝導率などがいい。
そうしたことを活かして魔道具に加工したりするのである。
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