パムパムの問題1

 ぽよんぽよん。

 コケコケ。


 ぽよんぽよん。

 バサバサ。


 ピョーン。

 コケー!


「これは会話成立してるのか?」


「いや知らねえよ」


 グルゼイがいると面倒なので今度は商会の方にヒにお越しいただいた。

 今日の護衛はリアーネでユディットはお休み。


 パムパムを呼び出してもらったのだけど相変わらずパムパムが伝えたいことはジには理解できない。

 そこでフィオスと対面させてみる。


 モンスターパニックの時、最終的にはフィオスがパムパムを説得した感もあるので何かヒントにならないかと思ったのだ。

 早速パムパムはフィオスにしっかりお辞儀をする。


 結構紳士っぽく頭を下げてコケコケとフィオスに話し出して、それに応じるようにフィオスは跳ねたりしている。

 何となく会話というか、意思の疎通が取れているようには見えた。


 しかしフィオスが跳ねて、パムパムが翼を広げてもその意味内容をジたちが理解することは出来ない。

 フィオスを会わせるのは失敗ではないけど試みは成功しなかった。


「話せる魔物でもいりゃいいんだけどな。


 んなもん伝説にしかいないからな」


「うーん……難しいね」


 リアーネもフィオスとパムパムの対話みたいなものを眺めていたけど謎の戯れにしか見えなかった。


「話せる魔物ね……」


「あれはどうだ?


 あの……なんだっけ。

 アカデミーにいた変なの」


「変なの?」


「私にあのクソ重い剣を持たせた時に会った子供だよ。


 実は魔物だ、なんて言ってなかったか?」


「エスタル!」


「そうそう、そんな名前だったな」


「なかなか面白い考えかもしれないな」


 パムパムがフィオスを頭の上に乗せている謎の行動を見せている中で悩む人間たち。

 魔物の言葉を通訳できる何かがいればいいのにと思っていたらリアーネはふとアカデミーでのことを思い出した。


 エスタルというアカデミーの地下にある不思議なダンジョンのボスモンスターがいる。

 これは元々人の魔獣であった魔物で、契約者だった人の意志を継いだダンジョンを創造していた。


 元は魔物であるのだがダンジョンのボスになった影響か人の言葉を話すことができていた。

 リアーネがあった時は人型に変身していたエスタルであるがその正体は魔物であることはリアーネに伝えていた。


 失敗作という銘の剣を持つのにリアーネでも力が足りなかったので持つ時に魔道具を貸してもらった。

 それを返しにいった時は魔物の姿であったのでリアーネも驚いて印象が強かった。


 意外とエスタルに会わせてみるのも面白い考えかもしれない。


「暇だしちょっくら行ってみるか。


 ついでに飯でも食べてこよう」


 ーーーーー


「ジ君!


 お久しぶりです!


 ここで何しているんですか?」


「リンデランじゃないか。


 ちょっとエスタルに会いに来たんだ」


「ボクに?」


 一応ちゃんとオロネアの許可ももらってアカデミーにヒとリアーネを伴って入る。

 ドールハウスダンジョンに向かうと入り口前にリンデランとエスタルがいた。


 リンデランはジを見つけるとパッと笑顔になって駆け寄ってきた。


「エスタル師匠にご用ですか?」


「エスタル師匠?」


「はい、エスタル師匠に魔法を教えてもらっているんです」


 エスタルはカーバンクルという魔物である。

 そしてリンデランの魔獣もカーバンクル。


 それに加えてエスタルはリンデランの高い素質を見出して魔法を教えることにした。

 ダンジョンの中はある程度エスタルの自由にできるので魔法を実際に使って練習しても周りに被害は出ない。


 そうして教えてもらっているからエスタル師匠なのである。

 たまたま今もエスタル師匠の授業が終わったところだった。


「そうなのか。


 頑張ってるな」


「えへへ、もっと強くなってみせますからね!」


 それこそジの隣で一緒に戦っても恥ずかしくないほどにとリンデランは思っている。

 ジに褒められてリンデランは嬉しそう。


 元々高い魔力と魔法に関するセンスを持ち合わせているのできっとヘギウスを率いるのにも相応しい魔法使いになるだろう。

 しかも容姿も文句なしの美人になる。


「次の授業遅れちゃうよ?」


「ジ君の方が優先です」


 次に授業があるから終わりだったのだけどリンデランは行く気配もない。

 このままジの用事を見届けるつもりであった。


 リンデランの中では授業一回よりジの方が大事。

 ジが何がやるというなら一緒にいたいのである。


「そう。


 まあそっちの方が面白そうだもんね」


 エスタルも授業に出ろとは言わない。

 色々な経験をすることも人生には必要でジといることは結構色々な経験に繋がると思っている。


 つまんない授業に出るより友達といる方が何倍も良いよねって言う師匠がエスタル師匠である。


「それでエスタルにちょっと頼みたいことがあってな」


「頼みたいことね。


 何でも言ってごらん!」


 頼られるのは大好きだ。

 エスタルはジのことを友達だと思っているからもちろん頼みがあるというのなら聞いてあげる。


「何回見ても不思議だな」


 今現在はカーバンクルの姿のエスタルがさらりと人の言葉を話している。

 リアーネは知っているから不思議だなぐらいだけどヒはあごが外れそうなほど驚いている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る